Errata

晶文社への送付用 Errataを書いた。明日にでも送る予定。このままシカトされるようだったら、徐々にネットに disclosure していくことにしよう。

山形氏にメールするも……

なしのつぶて。9年前に出した訳を今更どうのこうの言われてもアレなのかもしれないけれど。ちなみにamazon に書評として書いたものは以下の通り:

本書の存在は数年前から知っていた。私はカトリックの信者で、一カトリックとして、旧約聖書の「憤怒する神」の暴力的かつ理不尽な記述や、共観福音書の不一致に関しては知っているつもりだったが、微に入り細に入り挑発的なこの本の筆致を追いかければ追いかける程、一般の人があるいは「神聖にして侵すべからざる」ものだと思っているかもしれない聖書が、実は極めて人間臭い一面を持つものであることが露わになってくる。それは記者が各文書を書いたときから、そして何千年もの間、主に筆写というかたちで伝承されてきた過程において、聖書というものに携わった人達の文化・宗教観・倫理観が反映された結果に他ならない。本書をガイドブックにして聖書を辿れば、今まで近付き難かった聖書という書物を、ぐっと身近な、血沸き肉躍る(比喩ではなく)読み物として実感していただけると思うし、その合間に「そんなアホな!」とかツッコミを入れられる読み物でもあることも実感していただけるだろう。

ただし、本書には、私が数えただけでも21か所の間違いがある。その多くは、記述に対応する聖書の引用章節番号の写し間違いなのだが、非常に問題があると思われるのが、原著にあるのに訳本に反映されていない記述6か所、そして原著にないのに訳本に記述のある聖書の引用箇所(つまり、山形氏が勝手に記述を付け加えたのである……訳者追記の断り書きもないのだが)2か所の存在である。これはどうにもいただけない。訳者の山形氏は英語使いとしては非常に評価が高い人であるだけに、これは残念なことだと思う。時間のある方は、NY の Blast Books から刊行されている原著を入手・並読されることをお薦めする。

ちなみに僕が知っている山形氏のメールアドレスって MIT のなんですが、これって今生きてるのかしらん。

あの春、M1の終わり

思い出話などする歳でもないと思っているのだけど、ここ何日かのニュースを観ていて、ふと思い出すことがある。

あの阪神大震災が関西地域を襲った後のことだった。当時、僕の修士論文のための研究は進捗が捗々しくなくて、僕は M1 の終わる春の学会に発表できなかった。博士課程への進学を考えていた僕にとっては屈辱的なことだったけれど、技術蓄積のない困難なテーマの研究だったので、今考えれば仕方のないことだったのかもしれない。しかし、当時の僕は、知人が学会に行くという話を聞いただけでも胸が痛んだものだ。

そんなある日のこと。春学会に行っていた知人からメールが入ったのだった。朝、早めの地下鉄に乗って移動していたら、あの騒ぎに巻き込まれた、と。そう、地下鉄サリン事件である。

僕の知人は運がよかった。一本違いの電車に乗っていたら、あの霞が関で営団(当時)の職員が亡くなった、あの電車に乗ってしまっていたのだ、という。彼が実際に乗った電車は、霞が関を前にして止まり、彼は地上に出て、あの惨事を目のあたりにしたのだった。

理系出身者で道を誤った奴が、変な薬品の合成に手を出す、というのは、そう珍しい話ではない。アメリカ、特に西海岸では、LSD などの合成麻薬は大抵がそういう理系崩れの連中によって合成・供給されていた、という歴史的事実があるからだ。しかし、サリンや VX というものが(一応それがどういうものなのか知ってはいたけれど)自分と同じ、日本の大学で教育を受けた理系の若者によって合成された、なんて、最初は僕も信じられなかった。サリンや VX の薬理作用に関して知識があれば特にそうだ。余程の protection をしなければ、合成者自身の命が危ないのだから。実際、オウムでは合成に携わっていた若者、そしてそのガスを用いて殺人を行った、あるいは行なおうとした若者が、硫酸アトロピンのおかげでからくも一命をとりとめる、ということもあったという。

あれからもう15年が経つのだという。しかし、都市において毒ガスが用いられた事例というのは、それ以前も、そしてそれ以後現在までも、あの東京の地下鉄サリン事件以外世界に例がない。阪神大震災を含めて、あの春のことは、一生忘れられそうにないけれど、どうかこの記憶がこれだけに留まってほしいと思う。毒ガスで人が死ぬなんて話は、この先の人生で、二度とお目にかかりたくはない。

ちなみに……

``Ken's Guide to the Bible'' から、訳本に載っていない部分を抜粋。

恥かしくさせられる聖書の疑問

  • ノアが初子を生ませたときに五百歳だったって本当に信じられる? ―― 創世記 5:32
  • 罪深い町ソドムを滅ぼすのはオッケーだったのに、実の父親とセックスしちゃうロトの娘達を滅ぼすのがオッケーじゃないのはどうして? ―― 創世記 19:30-36
  • もし神さまが全能の力を持っているなら、ヤコブとのレスリング試合でどうして負けたんだろう? ―― 創世記 32:24-30
  • 宗教的な「安息の日」に働いた人は誰でも殺されるべきだ、なんて、本当に信じられる? ―― 出エジプト 31:15
  • 子供を殺すなんて信じられる?そして、どうして神さまはエフタが処女の娘をいけにえに献げることをよしとしたんだろう? ―― 申命記 11:30-39
  • 子供たちが親の罪のために死に追いやられるべきだ、なんて、信じられる?そして、どうして神さまはダビデとバト・シェバの子供を殺したのに、当のダビデとバト・シェバは生かしておいたんだろう? ―― 申命記 11:30-39
  • もし神さまが全能の力を持っているなら、どうして神さまの軍勢は、異教の神ケモシュに息子をいけにえに献げたモアブ王に打ち負かされちゃったんだろう? ―― 列王記下 3:18-19, 26-27
  • 聖性が衣服に移るって信じる?神さまは信じてるよ ―― エゼキエル 44:19
  • 君が自分の手や目のせいで罪を犯したら、その目や手を切り離すべきだって思う?キリストはそう思ってたよ ―― マタイ 5:29-30
  • どうして神さまはアブラハムやヨブに地上の富を与えたのに、イエスは富が地獄への片道切符だなんて言ったんだろう? ―― 創世記 24:34-35, ヨブ 42:10-12, マタイ 19:24
  • 君は奴隷制に疑いを持たない?どうして聖書に登場する誰も(イエスですら)が奴隷制を批判しないんだろう?どうして使徒パウロやペテロは従順な奴隷たることを奨励したんだろう? ―― エフェソ 6:5-7, ペテロ 2:18
  • イエスが実物の惑星である金星だったって信じる?彼は信じてたんだよ ―― 黙示録 22:16
  • 聖書の最後の章で、イエスは3回言う:「わたしはすぐに来る」って。これは、2000年も前に書かれたことだ。どうして彼はまだ来ないの? ―― 黙示録 22:12-13

聖書セックス索引

  • アダムとエバ ―― 創世記 4:1
  • ケインとその妻(氏名不詳) ―― 創世記 4:17
  • アダムとエバ(2回戦) ―― 創世記 4:25
  • 神の子らと人の娘たち ―― 創世記 6:2, 4
  • サライとファラオ ―― 創世記 12:14-19
  • アブラムとハガル ―― 創世記 16:4
  • 二人の御使いとソドムの男たち(未遂) ―― 創世記 19:4-5
  • ロトとその娘たち(むりやり) ―― 創世記 19:30-36
  • イサクとリベカ ―― 創世記 24:67
  • ヤコブとレア ―― 創世記 29:23
  • ヤコブとラケル ―― 創世記 29:30
  • ヤコブとビルハ ―― 創世記 30:4
  • ヤコブとジルパ ―― 創世記 30:9-10
  • ヤコブとレア(2回戦) ―― 創世記 30:16
  • シケムとディナ(むりやり) ―― 創世記 34:2
  • ルベンとビルハ ―― 創世記 35:22
  • オナンとタマル ―― 創世記 38:9
  • ユダとタマル ―― 創世記 38:18
  • ヨセフとポティファルの妻(未遂) ―― 創世記 39:7, 10-12
  • 神さまのセックスタブーざっくりリスト ―― レビ記 18:1-23
  • 追放もしくは死刑相当のセックスタブー ―― レビ記 20:10-21
  • 不貞の妻への試練による判定 ―― 民数記 5:11-31
  • イスラエルの男たちとモアブの女たち ―― 民数記 25:1
  • 更なるセックスタブー ―― 申命記 22:13-30
  • サムソンと名もなき遊女 ―― 士師記 16:1
  • ギベアの男たちと名もなき女(むりやり) ―― 士師記 19:25
  • ボアズとルツ ―― ルツ記 4:13
  • エルカナとハンナ ―― サムエル記上 1:19
  • エリの息子たちと召し使いの女たち ―― サムエル記上 1:19
  • ダビデとバト・シェバ ―― サムエル記下 11:4
  • ダビデとバト・シェバ(2回戦) ―― サムエル記下 12:24
  • アムノンとタマル(むりやり) ―― サムエル記下 13:11-14
  • オハシュロス王 / クセルクセス王とエステル ―― エステル記 2:16
  • 姦淫する女と意志の弱そうな若者 ―― 箴言 7:6-23
  • 花嫁と新郎 ―― 雅歌(どこを取っても)
  • メディア人の男たちとバビロンの妻たち(むりやり) ―― イザヤ 13:16
  • エルサレムの男たちとおびただしい数の遊女たち ―― エレミヤ 5:7-8
  • エルサレムと「傍らを通るすべての者」(寓意) ―― エゼキエル 16:25-34
  • エルサレムの男たち(色んな趣向で……父親、生理中の女、隣人の妻……等々) ―― エゼキエル 22:10-12
  • オホラとオホリバ、そして色んな国の男たち(これも寓意として) ―― エゼキエル 23:1-21
  • ユダの女たちとどこの誰だか分からない男たち(むりやり) ―― 哀歌 5:11
  • ホセアとゴメル ―― ホセア 1:2-3
  • イスラエルの人びと: 様々な乱行にふける ―― ホセア 1:2-3
  • エルサレムの女たちと「諸国」の男たち(むりやり) ―― ゼカリヤ 14:2
  • マリアと聖霊 ―― ルカ 1:35-38
  • イエス、バツイチ女性と結婚する男は姦通の罪を犯していると宣言 ―― ルカ 16:1
  • 神をも恐れぬ同性愛 ―― ロマ 1:26-27
  • コリント人の名もなき男とその(継?)母 ―― 1コリント 5:1
  • 使徒パウロ、性道徳の乱れを糾弾する ―― 1コリント 7:1-7
  • 使徒パウロ、結婚期間中のセックスにちょっと賛成 ―― 1コリント 7:1-7
  • 使徒ヨハネは、女性とのセックスの経験がある人は救済されないだろうと書いている ―― 黙示録 14:3-4

ボーナス中絶反対論者ホラー索引

切り裂かれた妊婦に言及している箇所

  • シリア人による ―― 列王記下 8:12
  • イスラエルの王メナヘムによる ―― 列王記下 15:16
  • 未確認の攻撃者による ―― ホセア 13:16
  • アンモン人による ―― アモス 1:13

殺された子供に言及している箇所

  • ミディアンの子供たち ―― 民数記 31:17 †
  • ヘシュボンの子供たち ―― 申命記 2:34 †
  • バシャンの子供たち ―― 申命記 3:6 †
  • イスラエルの子供たち ―― 列王記下 8:12
  • バビロンの子供たち ―― 詩篇 137:9 †
  • バビロンの子供たち ―― イザヤ 13:16 †
  • ベト・アルベルの子供たち ―― ホセア 10:14
  • イスラエルの子供たち ―― ホセア 13:16 †
  • テーベの子供たち ―― ナホム 3:10
  • ベツレヘムの子供たち ―― マタイ 2:16
† 神さまの承認による

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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