Golden Lady

僕はここに今まで Stevie Wonder の話を書いたことがないんじゃないか、と思う。というのも、あそこまで楽曲と歌の独自性が強い人の音楽に浸ってしまうと、そのフォロワーから脱せなくなりそうな気がして、聴くにしても結構距離を取ってきた、という経緯があるためである。

とは言っても、さすがに僕でも、"Talking Book" とか "Innervisions" 辺りはマストアイテムにしている。特に "Innervision" の "Golden Lady" は、ちょっと特別な思いのある曲である。この曲を YouTube で聞いていたら、その音源のコメントに「この曲のベースは誰が弾いているんだ」と書かれていて、Wikipedia で調べたらしき人が、これは Stevie のシンセベースだ、とフォローしていたけれど、このベース、ベーシストが聴くとニヤリとさせられる。導入部のフレージングなんか、明らかに James Jamerson の影響が見て取れるのだ……さすがは Little Stevie Wonder 時代からの Motown の秘蔵っ子である。そして J.J. はこんなところにまで、エレキベースの先駆者としての影を残しているのだ。

さて、そんな "Golden Lady" のライブテイクをあれこれ聴いてみたけれど、実のところ、出来のいいものはほとんどない。やはりこのちょっと難解なコード進行が、他のプレイヤーのフレージングを縛ってしまっているところがあるようだ(これは Stevie のこういう曲全般に言えることなのだが)。うーん……とあれこれ探していたところに、絶妙のカヴァーを発見した。いや、さすがに The Doors やジミヘンからストーンズまで、何でもプレイしてしまうだけのことはありますね、José Feliciano さん。

Next to You

昨日の日記にリンクしておいた曲は、珍しく「自分以外の人が歌うこと」を企図して書いたものだ。まあネタばらしをしてしまうと、ライトノベルの『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』という作品がこの秋にアニメ化されることが決定して、そのアニメの声優が歌うエンディング曲の公募がニコニコ動画で行われている。そこに応募した曲というわけだ。僕としては極めて珍しく、声域に考慮したりとか、サビ始まりにしたり、とかいうことをやっている。とは言っても、まあこういう曲調だと最近は採用してもらえないかもしれないけれどね。

さて、今夜はなんだか Police な気分なので、僕が一番気に入っている、彼らがThe Old Grey Whistle Testに出演したときの演奏から、 "Next to You" にリンクしておこう。今までこの曲に関しては様々なライブテイクを漁ったけれど、スタジオテイクも含めて文句なしにこれが No.1 だと(個人的には)思っている:


……などと言いつつ、なおも YouTube を徘徊していて、とんでもないものを発見:

……僕の記憶に間違いがなければ、この "Battery" ってメタリカの曲ですよね?メタルをアカペラでカバーって……すごいなこれ。

SO BAD

今日はどういうわけか、納戸の奥から取り出したるは中西圭三。えーそんなの聴くんだ、とか言われそうだけど、これはちょっと別扱いかもしれない。中西氏の 5th アルバム "graffiti" というのがあって、これのアレンジをやっているのが山弦でおなじみの佐橋佳幸氏だったりする。

まー佐橋氏に関しては、山弦オタクとかネルソンオタクとか(そう、僕はそういう人々が嫌いなのだ)色々書きたがりな方々が多いと思うので、そういう人に書いていただければいいのかもしれない。せっかくだからそういう人達があまり書かなさそうなことを書いておくと、1980年代の EPIC SONY 華やかなりし頃の中心に清水信之という人がいて、この人が佐橋氏の高校の二級上の先輩で、佐橋氏と清水氏の間にいたのが佐藤榮子氏(EPO)である。恐ろしい話だけど、某高校の一年に佐橋氏、二年に EPO、三年に清水信之氏がいた時期があって(ちなみに補足しておくけれど、佐橋氏の5年後輩には更に渡辺美里氏がいるのだった……デビューは当然 EPIC SONY)、しかもその二年後位に、佐橋氏は EPO のデビューアルバムでギターを弾いていて(まだ高校在学中のはずだ)、清水氏に至っては、竹内まりやの『不思議なピーチパイ』のアレンジでレコード大賞の編曲賞に入っていた(二十歳そこそこだ)のだ……こう、どういうシーンにも、溢れんばかりに若い才能が集まってブレークスルーをしてのける時期というのがあると思うのだけど、佐橋氏というのはそういう中で世に出た人なわけだ。表舞台のデビュー(ウグイスというバンドだった)はアルバム1枚で終わってしまったけれど、その後はあの怒涛のような EPIC 時代の音源を経て現在に至っている。

まあ能書きはどうでもいいんだけど、件の "SO BAD" という曲は、中西氏の "graffiti" の一曲目である。これが、今聞き返すと、アコギのガッツリしたカッティングとザラッとした Rhodes を中心に据えたアレンジで、実にいい。中西氏の歌があまりにスムース(いや悪い意味じゃないんだけど……やはり上手いよなあこの人)で、普通のオケと歌の関係とちょっと違うような気すらする。こういうのをやりたいんですよ。こういうのを……と呟きつつ(なんかアブナイなあ)、二度三度と聞き返しているのであった。

以下余談。上の文章を書いて、ふと思いついて EPO の DOWN TOWN を聞き返していたのだけど、そうかこれって、Isley Brothers の "If You Were There" を Wham! がカヴァーしたのとよく似てるよなあ。いや逆か。Wham! の "If You Were There" は 84年、EPO のデビューは 80年だからね。

Tighten Up

テキサス出身の Archie Bell & the Drells というグループがあって、そのあまりに有名なヒット曲がこの "Tighten Up" だ。なにせ James Brown Orchestra もカヴァーしているし、最近はおそらくレア・グルーヴ(グルーブ感じる度にレアだ何だって、ならそんな音楽やめちまえ、とか思うけど)とかで有名なのかな。

上のリンク先、実は左右のトラックがひっくり返っていて、本当はカッティングは右から聞こえてくるはずなんだけど、アナログからで、part 1 と 2 と両方入ってるので、何卒ご了承の程を。で……実は僕は不明にして、今日の今日まで、YMO がこの曲をカヴァーしていることを知らなかった。しかも、この曲であの Soul Train に出演していたのである!

もうアッコちゃんノリノリである。そして謎のイトウさん……うーん。しかし、これはおそらく細野氏のアイディアなんだろうなあ。坂本龍一の抽斗に入っているとは思えないし。ちなみにこれは勿論ですが rip sync です。ちゃんと聞きたい方はこちら。

それにしても、細野=高橋のボトムは素晴らしい(あー勿論ギターも……これ大村憲司かな)。こういうワンフレーズものこそ、本来の groove の王道なんだよな。"Tighten up, Takahashi! SAKE NOME Sakamoto! Hurry up with the bass, Papa-San!"

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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