で、僕がカヴァーしようとしている曲なのだけど、これが録音されたのは1971年、この "So Far Away" が録音されたのと同じ年だ。この時代の日本に、こんなベースを弾ける人はそう何人もいないと思うのだが……うーん。明らかに細野晴臣ではない。「これ誰が弾いてるんだ?」……ということで調べてみると……あー。これぁ……そうか、この人がいたんだよな。ベースを弾いているのは山内テツだった。
昨日からごそごそやっている曲なのだけど、耳で取ったコードの経過音を弾くのに、一か所だけ非常に厄介なところがあった。無理すれば弾けないことはないのだけど、でも先日張り替えたライトゲージの弦で弾くのは少々厳しい(一応誤解なきように明記しておくけれど、いくら僕でも F とか B♭ とかを押さえられないということはない……最近は書かぬが花、と思って書かずにいると、アホな読み手が読む対象を平気で自分のレベルにまで引き下げて簡単に誤解してくれるものだから、こんな下らんことを書かなきゃならないんだけど)。うーん。
僕が悩むのには理由があった。というのも、この曲を演奏していた人々は CS & N とか CSN & Y とかのフォロワーだからだ。こう書いても最近の人にはピンとこないかもしれないけれど、「クロスビー、スティルス、アンド ナッシュ」とか「クロスビー、スティルス、ナッシュ、アンド ヤング」とか、ええい大まけだ、ヤングはニール・ヤングのことだ、とか書けば……やはりピンとこないか。詳しくはWikipedia の説明を読んでください。
このグループは、僕より下の世代にはおそらく馴染みがないだろうと思う。むしろ『名前のない馬』で有名な America の方が知られているのかもしれない。そういう人々のために書くけれど、このグループは言ってみれば「元祖ウエスト・コースト」とでも言えばいいのだろうか。CS & N の初期に聞かれるアコースティックサウンドと、男声のみの美しいコーラスが非常に特徴的で、たとえばイーグルスなんかは彼らの影響をもろに受けているに違いないのだ。
で、この CS & N とか CSN & Y とかを演奏しようとして、ギターをよくよく聴いてみると、ギター弾きはしばしば愕然とさせられることがある。彼らの押さえているはずのコードが、自分のギターで押さえられない!……なぜかというと、彼らはいわゆる変則チューニングというのを用いるからだ。ギターのチューニングというのは、神聖にして侵すべからざるものでは全然なくて、特にカントリーの影響を受けている人達は、この変則チューニングというのを使うことが多い。その多くはオープン・チューニング(ギターの指板を押さえていない状態で各弦の音が和音を構成するようなチューニング)なのだけど、他にもダウン・チューニング(全ての弦を、多くの場合半音下げにしてチューニングする)とかドロップ・チューニング(何本かの弦だけを下げたチューニング)とか呼ばれるものがある。彼らはこれを用いることがあるので、そういう曲をカヴァーするのには、コードだけではなくチューニングも読み取らなければならない。