ちょっとサボっていた referer のチェックをしたら、野原さんのブログからリンクしていただいていたことに気付く。
高田渡の歌というのは『値上げ』のことだと思う。これは有馬敲の詩に高田渡が曲をつけて歌っていたものだが、著作権覚悟で引用する:
値上げは ぜんぜん考えぬ
年内 値上げは考えぬ
当分 値上げはありえない
極力 値上げはおさえたい
今のところ
値上げはみおくりたい
すぐに 値上げを認めない
値上げがある
としても今ではない
なるべく値上げはさけたい
値上げせざるを得ないという
声もあるが
値上げするかどうかは
検討中である
値上げもさけられない
かもしれないが
まだまだ時期が早すぎる
値上げの時期は考えたい
値上げを認めたわけではない
すぐに値上げはしたくない
値上げには消極的であるが
年内 値上げもやむを得ぬ
近く 値上げもやむを得ぬ
値上げもやむを得ぬ
値上げにふみきろう
高田渡らしい、シニカルな歌である。こういうのを「なしくずし」と言うのだろうが、何事か責任を以て言わなければならない立場の人が、情報を小出しにして、確信犯的な「なしくずし」で民意を操作するということは、僕もあってはならないことだと思う。
原子力に関する話をするときに、僕はいつも「プロメーテウスの火」という言葉が頭に浮かぶ。神だけのものであった火を人にもたらしたプロメーテウスは、ゼウスによって山上のとりことされ、生きながら肝臓をハゲタカについばまれ続けるという責め苦に苛まれた。プロメーテウスは不死だったので、ついばまれた肝臓は夜のうちに再生し、翌日またついばまれる。そして死んで解放されることも能わない。まさに地獄の責め苦である。
プロメーテウスが火と共に人にもたらしたとされる知恵で、僕達はどうやって生きていけばいいのか。これはこれから僕等が皆各々の頭の中で考えなければならないことだろうと思うのだ。もはやプロメーテウスの火なしに日々を営むことが出来なくなっている、この日本で。
僕は、現役時代は京大志望だった(ただし、高校在学中は成績がさっぱりで、僕の学力はその大半が浪人時代に培われたものだったのだけど)ので、京大の入試過去問というのは、入手できる範囲内で全て解いた。当然、駿台などの模擬試験でもガシガシ解いていた。だから分かるのだけど、今回摘発された浪人生の不正が表向き発覚しなかったとしても、あの学生は京大には合格できなかった。これは推論ではなく、事実として断言できる。
彼の質問はまだ保存されている。以下にリンクを示す:
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1256314487
楽しいはずの海外旅行にもトラブルはつきものだ。たとえば、 悪天候や自然災害によって飛行機が欠航し、海外での滞在を延ばさなければならないことはさほど珍しいことではない。いかなる場合でも重要なのは、冷静に状況を判断し、当該地域についての知識や情報、さらに外国語運用能力を駆使しながら、目の前の問題を解決しようとする態度である。
これに対して、浪人生がベスト・アンサーを付けた解答がこうだ。
Problems should be fun to travel abroad is inseparable. For example, a canceled flight, weather and natural disasters that have extended stay abroad is not so uncommon. In any case important to calm the situation, knowledge and information about the area, while making full use of foreign language proficiency in addition, is the attitude of trying to solve the problem before him.
こんな感じでどうでしょうか?
直訳すぎたかな?
まあ、少しでも英語を読み書きしている人間なら、これを見て「あ〜」と声をあげて「イテーなぁ」という顔をするだろう。どういうことかは、この文章を google 翻訳にかけてみるとすぐに分かる。
Problems should be fun to travel abroad is inseparable. For example, bad weather and natural disasters, canceled flight, you have to stay abroad 延Basanakere it is not so uncommon. In any case important to calm the situation, knowledge and information about the area, while making full use of foreign language proficiency in addition, is the attitude of trying to solve the problem before him.
上記強調部が先の訳と全く同じであることがお分かりだろうか?google 翻訳では「延ばさなければ」という部分を翻訳できていないわけだが、そこを含めてちょろちょろっと直しただけで答えているのが明白である。しかし、だ。"Problems should be fun to travel abroad is inseparable." って何よ?こんな文章、英語を使う人間だったらまず書かないと思うんだけど。
「楽しいはずの海外旅行にもトラブルはつきものだ。」という文章を英語に直すとき、このままの構造で英語に無理矢理直してもニュアンスは伝わらない。まずこの文章を、英語の文法にフィットするかたちに書き換える必要がある。たとえば「海外旅行は楽しいものだけど、しばしば旅行中にトラブルが発生することがある」というように、だ。こうすると、たとえば "Overseas trip must be fun though we often meet with trouble during that." とか書くことになるんだろう。「つきもの」にどうしても拘るなら、inevitably とか使う、ということになるんだろうけど、海外旅行で何が何でもトラブるわけではないんだから、僕なら inevitably とか使うことはないだろう(あえて、と言われたら frequently かなあ)。
そもそも「機械翻訳」というものが、これ程までに過信されているのか、と考えると、実に恐ろしい。なぜこんなことを断定的に言えるか、というと、僕等の業界関連団体のひとつである科学技術振興事業団(JST)・情報事業本部(かつての JICST)では、以前から文献情報速報を機械翻訳で生成する試みをやっていて、ようやく最近は使いものになる出力を出せているのだけど、それだって「あーはいはい機械翻訳だからねえ」と呟きつつ読むような代物であることを、よーく知っているからだ。そもそも、コンピュータを使っている人々の間では、もともと翻訳ソフトというのは「パーティーグッズ」扱いだった。たまに見かけると、人工無脳みたいな出力を出す文章を探しては皆でネタにする、そういう代物である。
で、僕が今回許し難いと考えるのは、そんな訳を Yahoo!知恵袋で求めた浪人生ではない。その質問に答えたdestination_kly_everなる人物をはじめとする、このような無責任、かついい加減な回答をした人々である。テレビに出て「こちらがまじめに答えているのに」というようなことを、一体どの口が言えるのか。中一から英語をやり直していただきたい。他人にいい加減なことを教えて調子に乗るのもたいがいにしていただきたい。
米CBS女性記者、エジプトで暴行される
2011年2月17日6時53分
【ワシントン=望月洋嗣】米CBSテレビは15日、同局女性特派員のララ・ローガンさんがエジプトのタハリール広場で今月、一連の騒乱を取材中に暴徒に襲撃され、性的な暴行を受けたと報じた。
ローガンさんは、ムバラク前大統領の辞任が発表された11日、報道番組「60ミニッツ」の取材班とともに200人を超す人々に囲まれた後、1人だけ引き離されて暴行されたという。その後、女性の集団と約20人の兵士に救出され、12日朝の便で帰米した。現在も入院しているという。
(adsahi.com, 元記事リンク)
もし事実なら、許されざるべき蛮行である。騒ぎに乗じて何をしてもいい、と考える輩が出てくるのは、まあ愚かな人間のいる場では毎度のことなのかもしれないけれど、その度に胸が詰まりそうな心地がする。
何の気なしに新聞を見ていて、仰天した。以下に示すような広告が掲載されていたのだ。
オルゴン療法、と聞くと、いわゆる似非科学の歴史を知っている者として反射的に思い浮かぶのがヴィルヘルム・ライヒという名前である。
ライヒはフロイトの教えを受けた精神分析家で、1922年には医学博士の称号を得ている。彼は「神経植物療法」と呼ばれる治療法を創始した。もともとフロイト派は、患者との会話によって治療を行っていたわけだが、ライヒは、患者に対しもっと肉体的な働きかけをすることで治療成績を向上させられるのではないか、と考えていた。そのため、患者との言葉のやりとりをしなから、患者の身体の緊張をチェックし、情動の刺激による筋の緊張をマッサージのようなやり方で緩和させる、という治療法を編み出したのである。この療法自身は、戦後日本に心身医学が紹介されたときに「生体エネルギー療法」なる名称で紹介されたこともあるのだ、という。
しかし、ライヒと聞いて我々が連想するのは、やはりトンデモな人である彼の半生である。ユダヤ人であった上に、ナチズムを性的抑圧を受けたノイローゼによるサディスティックな性向であると解釈したものだから、ライヒは1934年にドイツを脱出し、ノルウェーに拠点を移した。このノルウェーで、彼のトンデモ形成の基となる二つのトピックに、彼は邁進することになる。ひとつは性科学、そしてもうひとつが「オルゴン」の発見である。
性科学については、ここで特に深く説明するまでもない。そもそもフロイティズム自体が、性的抑圧というものを重んずるわけだけど、ライヒはここに深く傾倒した。ノルウェーのオスロ大学で、ライヒは性科学の研究者として仕事をしていたのである。
そんなある日、彼は滅菌した肉汁を顕微鏡で観察していたときにある小胞を発見し、これをバイオンと命名した。このバイオンを日々彼が観察していたときのことである。彼は、肉汁の中に、バイオンと異なるものを見出した。それは青い光を放っており、視野内で激しく動いていたのだ、という。この光で目を痛めるだろう、ということで、ライヒはこの培地を金属で内張りした木の箱にしまったのそうだが、しばらくして箱を開けてみると、その中は青く光り輝き、培地を外に取り出しても箱の中に光る青い粒子が観察された、という。ライヒはこの青く光る粒子をオルゴンと名付け、金属で内張りした箱にはこのオルゴンを集積・放射する作用があるのだ、と考えて、この箱をオルゴン・アキュムレータを名付けた。このオルゴンの発見以来、ライヒはその新しい粒子の性質の研究に一生を献げることになる。
……とか書くと、さも大層なことのように思われそうだが、このオルゴンなるものがトンデモだということは最初っから指摘されていて、ライヒはオスロ大学を追い出されて、研究の拠点をアメリカに移すことになる。なにせライヒは、このオルゴンなるものが「性的エネルギー」なのだ、と主張していたからだ。今風に言うならば、オースティン・パワーズに登場する「モジョ」のような代物だ、とでも思ったのだろうか。とにかくライヒの主張によるとオルゴンは一種万能の代物であって、ラジウムと相互作用を起こして反放射性オルゴンなる新粒子に変換されるとか、空の黒雲はダーク・マターならぬデッドリー・オルゴンで、オルゴンを中和することで消滅させられるのだ、とか、宇宙人はこのデッドリー・オルゴンで地球侵略を企てているのだ、とか……まあ、彼の中でだけは壮大な話になっていたわけだ。
しかし、社会へのライヒの働きかけは決してそういう万能なものではなかった。彼は先のオルゴン・アキュムレータがあれば、オルゴンを以てがん細胞を死滅させることができるのだ、と主張して、オルゴンによるがん治療機を考案、販売した。これが FDA に見咎められて起訴され、判決時の指示に違反したかどで収監された。そして1957年の秋、ライヒは獄中で心臓発作で亡くなったのである。
このような経緯を知っている人間が上の広告を見たら「これはライヒのオルゴン・アキュムレータなんじゃないの?」と疑いたくもなるというものである。で、上の広告の URL を覗いてみると……
血液、リンパ液、ホルモンの流れがスムーズに行かなくなると、人間は必ず病気になります。そして、血液が詰まる場所は手足の末梢部分にほとんど多く見られます。オルゴンリング開発、製作者の越野稔がこの事実に着目し、長年研究した結果生まれたのが「オルゴン療法」です。
血液の流れが悪くなると滞った部分は冷たくなり、冷えることで神経も鈍くなり、やがては感覚さえも失っていきます。体温が下がるとリンパ液の流れが悪くなり、リンパ液そのものが固まると毛穴がふさがり、皮膚呼吸がうまくできなくなり、血液が心臓に戻る際にきれいな酸素を取り入れられなくなるために、血液に酸素欠乏が起き、二酸化炭素の多い血液(汚れた血液)になってしまうのです。
血液、リンパ管、神経は全身に巡らされているので、末梢部分(手足の指先部分)の詰まりを取ることによって血液、リンパ液の流れがよくなり、各症状が改善されていきます。これがオルゴン療法です。
というわけで、どうもライヒのオルゴン「ですら」ないらしい。まあこういうものはいつの世にもあるもののようだ。