今更ではあるのだが、この blog の関連エントリが TeX Wiki にリンクされているようなので、一読してインストール・使用ができるように、まとめを作成しておく。
当方が UNIX 系の環境をメインに使用しているので、ここでは Linux や Mac OS X 等の OS を前提として書く。Microsoft Windows を使用されている方は、北海道教育大学旭川校・物理学教室・阿部ゼミ半公式ページ で公開されている『Windows に LaTeX2HTML をインストールしよう』を参照されるといいだろう。
latex2html を使用するにあたっては、まず TeX / LaTeX が問題なく使用できる環境を整える必要がある。当方は Linux (Debian GNU/Linux sid) 上で TeX Live 2011 を使用しているが、tlptexlive を追加していても、MacTeX 等を使用されていても、おそらくあまり変わらないプロセスで使用できると思う。
これに加えて、latexhtml は、プレインテキストで記述できない数式などを画像として取扱うために netpbm を使用するので、事前にインストールする必要がある。最大前提として perl、そして日本語を扱うので nkf 等も必要になるのだが、これらに関してはほとんどの distro では最初から入っていると思う。
さて、まずはこれから何をどうするのか、だけど、
- latex2html 本体と、日本語化パッチのアーカイブ取得
- 上記2アーカイブの展開
- configure, make, make install
- 個人設定ファイルの設置・設定
という手順で作業を行っていく。以下、順に説明する。
まず本体および日本語化パッチのアーカイブだけど、日本語化パッチの開発者である、新潟工科大学の竹野茂治氏のページにアクセスする。index ページから TeX → LaTeX2HTML について ……と辿っていくと、
"LaTeX2HTML (Japanese)": http://takeno.iee.niit.ac.jp/~shige/TeX/latex2html/ltx2html.html
というページに行き着く。ここでは latex2html-2002 以降に関する網羅的な情報が書かれているのだけど、現時点での最新版を入れるために、このページ中『
LaTeX2HTML 日本語化パッチ開発版のページ (Japanese)』を見ることにする。
ここには、現時点で最新の latex2html-2008 に適用するための日本語化パッチが公開されていて、オリジナルの latex2html-2008 のアーカイブにもリンクが張られている。ここからまず、latex2html-2008.tar.gz と、現時点での最新のパッチである l2h-2K8-jp20110708.tar.gz を取得する。
上記2アーカイブを同じ path に配置して、本体 → パッチ の順(逆でもおそらく大丈夫だけど念の為)に展開すると、latex2html-2008 というディレクトリが生成されている。ここに入って ls すると、
- l2h-2K8-jp1.10b2.13.patch(以下 jp1 patch と称す)
- l2h-2K8-jp2.1b1.13.patch(以下 jp2 patch と称す)
と、2種類の patch が存在することがわかる。jp1 patch は、日本語を取扱う際に nkf を使用する仕様になっている。これに対して jp2 patch では、日本語のコード変換を行わない。この差は何か、という話だが、アーカイブと共に公開されている文書:
README.tech.jp-20110708 に詳細な記述があるので、そちらを御参照いただきたい。
ざっくりした話だけ書いておくと、jp1 patch は全ての文字コードに対して対応可能だが、いちいち nkf を介して処理が行われることになり、後で出てくる設定ファイルで適切な文字コードの設定をする必要がある。jp2 patch は、EUC-jp や UTF-8 で文書を扱う限りにおいて、あまり面倒な目にあうことはない。僕は現在 UTF-8 ベースの日本語環境を使用しているので、ここでは jp2 patch を適用することにする。
patch の適用は、単純に、
$ patch -p1 < ./l2h-2K8-jp2.1b1.13.patch
とすればよい。これでディレクトリ内のファイルに対してパッチが適用される。
次に configure だが、注意する点は:
- --prefix
- --with-texpath
- --with-kanji
の3オプションを適正に設定することである。prefix は latex2html の本体である perl スクリプトがインストールされる場所、texpath は latex2html に関わる TeX / LaTeX 関連ファイルがインストールされる場所、with-kanji は使用する文字コードを設定するわけだが、これらを明示的に指定しておく方がいいだろう。
まず prefix だが、default は /usr/local になっている。この場合、
- [prefix]/bin: 実行形式のファイル
- [prefix]/lib/latex2html: ライブラリ等
のようにインストール場所が決まる。ひとつ注意しておかなければならないのが、prefix で指定する path の文字列に "l2h" や "latex2html" が(大文字、小文字のいずれの場合でも)入っていると、
- [prefix]/bin: 実行形式のファイル
- [prefix]/: ライブラリ等
となってしまう。考えられるパターンとしては /usr/local/l2h や /home/foo/latex2html 等に入れようとする場合があるだろうけれど、この場合には注意すること。
texpath は TeX / LaTeX 関連のファイルが置かれる場所で、これは default は /usr/local/texlive/2011 内になってしまう。これに抵抗のない方も多いのかもしれないが、今回のようなユーティリティのファイルは /usr/local/texlive/texmf-local 以下にインストールされることをお薦めしておく。
kanji オプションは文字コードで、default は EUC-jp である。僕のように UTF-8 ベースの環境で使用する場合には、このオプションで明示的に UTF-8 を指定しなければならない。
以上から、僕の場合の configure のオプションは:
./configure --prefix=/usr/local --with-texpath=/usr/local/texlive/texmf-local/tex/latex/latex2html --with-kanji=utf8
となる。
configure が終われば、そのまま make → sudo make install でインストールが行われ、ls-R の更新等も自動的に行われる。これでインストールは終了である。
あとは、ソースのディレクトリにある dot.latex2html-init-jp を home にコピーすれば良いのだが、これも latex2html で使用する文字コードに合わせる必要があるので、
$ cat dot.latex2html-init-jp | nkf -w > ~/.latex2html-init
のようにコピーを行った後、適宜、設定ファイルを編集していただけばよろしい。ちなみに僕はほとんどそのままで使用している。