着メロにはご注意を

皆さんは、ケータイの着メロというのをどのようにされているのだろうか。僕の場合は、自分の曲や他人の曲で気に入っているものを、自分でフォーマット変換して使うことが多いのだけど、今回は、それも善し悪しですよ、という話。

もともと、僕はずっと山下達郎の "SPARKLE" という曲を着メロに使っていた。どういう感じかというと……:

山下達郎 "SPARKLE" 着メロ(イメージ)

……こんな感じである。実際にはモノラルで、しかももう少しキツい圧縮がかかるので、それを前提としたデジタル信号処理をしてから着メロ化するのだけど、まあ同じ感じだと思っていただいてかまわないと思う。

この "SPARKLE" のイントロは、山下達郎が自ら演奏するカッティングソロで始まるのだが、これはとにかく着メロとしての聞き落としはゼロに近い。そういう意味では非常に有用なのだけど、いかんせん派手というか、人前でいきなりこれが鳴ると非常に目立つわけで、他に何かいいものはないか、ずっと探していたことがある。

静かな曲で印象的なイントロのもの……というと、やはり僕の好きな四人囃子の『レディ・ヴァイオレッタ』という曲がある。僕はこのインストゥルメンタル・ナンバーが昔から好きだったのだけど、色々考えた挙句、とうとうこれを着メロにしてしまった:

四人囃子『レディ・ヴァイオレッタ』着メロ(イメージ)

うんうん、なかなかいい感じだなあ……と、思っていたのだ、最初は。そう、最初は。

誤解しないでいただきたいのだけど、僕は今でもこの『レディ・ヴァイオレッタ』が好きだし、実際にいい曲だと思っている。しかし、だ。静かな曲で印象的なイントロ、というのは、実は「どきっ」とさせられるイントロなのだ、ということを、あまり深く考えていなかったのだ。

ちょっとした都合で、電話がかかってくるのを辛抱強く待たなければならないことが何度かあったのだけど、静かな部屋で、気を紛らわせるように書きものなどしているときに、このイントロが流れると……どきっ、とする。そう、どきっ、とするのだ。最初のうちはそれでよかった。しかし、それが何度も繰り返されると、このイントロで受ける「精神的衝撃」の度合いが、どんどん上がってくるのである。しまいには、このイントロが鳴ると、心臓をわし掴みにされたような心持ちになってくる。気がつくと、もうすっかり、このイントロを避けている自分がそこに居たのである。

こんな風に、好きな曲のイントロを「聞きたくない」ものにしてしまう、という危険性が、着メロの選択においては存在することを、僕は声を大に主張しておきたいのである。いや、本当、このイントロを聞く度に、今も僕の胸はギュン、と締め付けられるのである。おかげで現在、僕のケータイの着メロは「電話のベルの音」(こちらの方が「精神的衝撃」は小さいのだった)に設定されているのだ……

もう戻れない

皆さんは、普段音楽を聴く際に、どのような形態で聴かれているだろうか。最近は、ほとんどの方が iPod や Walkman、あるいは携帯電話などを端末としてサウンドファイルを再生するかたちで音楽を聴かれていると思う。

僕も、ほぼ全ての場合においてこのようなかたちで音楽を聴いている。外で聴くためには iPod classic に AKG K314P を接続して使っているし、家ではパソコンに TASCAM US-144 を接続して、そこに SONY MDR-CD900ST を突っ込んで使っている。しかし、ここで問題になるのは、聴くためのサウンドファイルをどういう形式にしているのか、という点である。

残念なことに、僕はどうも耳のつくりがいいらしいので、圧縮ファイル、たとえば MP3 とか MPEG-4 AAC とかのフォーマットのファイルを聴いていると、WAV に代表される非圧縮ファイルを聴いているのと明確に区別がついてしまう。僕のようにロックを聴いている場合、圧縮フォーマットはハイハットの音と残響音を致命的に変質させてしまうので、もし圧縮ファイルと非圧縮ファイルを同一の再生環境で再生した場合、おそらくは皆さんでも(慣れれば)区別はつくと思う。

それでも、ハードディスクが逼迫するので、今までは MPEG-4 AAC で圧縮をかけたファイルを iTunes library に突っ込んで聴いていたのだけど、もうどうにも我慢できなくなってきたのである。何が我慢ならないって、僕の iTunes に入っている自分の曲を聴いているときである。圧縮ファイルが再生する音は、僕が苦心惨憺したミックスダウンの音と明確に違うのだ。あー!もう我慢できない!

ということで、山下達郎の "POCKET MUSIC" など、いくつかのアルバムを WAV 形式で入れ直した。先程聴いてみたのだが、そうそう、こんな音でしたよ。あのスッカスカの音は何だったんだ?と思うほどに違う。もう、将来的には、現行の iPod classic みたいに100数十 GB のメディアを載せた携帯プレイヤーに、こういう非圧縮のフォーマットのファイルを入れて聴くことになるんだろう。もう、僕は戻れないのだ。

Roger Nichols & The Small Circle of Friends

こういう日は、本当に音楽がないと生きていけそうにない心地になるけれど、今日は久々に "Roger Nichols & The Small Circle of Friends" なぞを聴いている。

Roger Nichols & The Small Circle of Friends

このアルバム、いわゆる渋谷系のミュージシャンが聴いていることで一躍有名になってしまったけれど、もともとは僕にとっては密やかな感じの……丁度 Nick DeCaro and Orchestra の "Happy Heart" みたいな存在だ。どの曲も、今も尚心地良い。

そう言えば、Swing Out Sister の "Where Our Love Glows" を買ったときに、収録曲の "When The Laughter Is Over" のイントロに、このアルバムの "I Can See Only You" がそのままサンプリングされていて仰天したことがある。日本人とイギリス人は、どちらもアメリカの音楽が本当に好きで好きで、だからこういうところで「ウマが合う」のかもしれない。

Snuff Garrett

この何日か、麻薬絡みの話、ネット詐欺の話……どうにも嫌なことに触れてきたので、精神的によろしくない状態になっているような気がする。こういうときは……これこれ。Snuff Garrettだよ。

Snuff Garrett は、アメリカの有名な音楽プロデューサーである。この人はちょっと変わった立ち位置の人で、もともと DJ からプロデューサー業に移行したというキャリアも関係しているのか、自身では曲を書かない。ではどうするか、というと、音楽出版社から買ってくるのだけど、そのセンスと、完成品を構築する上でのセンスが非常によろしい。彼のキャリアの中で今に至るまで最も聴き継がれているのは、おそらくGary Lewis and the Playboysの作品群だと思うのだけど、たとえばこんなのを聴いていただくと、雰囲気がお分かりになりやすいかもしれない:

この "Everybody Loves a Clown" は、冒頭部のコード進行が大滝詠一の『君は天然色』と同じであることから、『君は……』の元ネタだと世間では言われているらしい。何でも何でも元ネタ元ネタだ、と、実に下らん話だと思うけれど、少なくともこの曲に代表されるような、グロッケンシュピールやヴィブラフォン、ウインドチャイムなどの「金モノ」、そしてハープシコードを上手く使った明るい曲調を、大滝氏が意識していたことは間違いないだろう。

そして、世間ではおそらくこちらの方がインパクトが大きいかもしれない:

この曲は同じく Gary Lewis and the Playboys の "Count Me In" という曲だけど、ピアノのオクターブのフレーズやフィルが、大滝氏の作品に色濃く影響を与えている。……いや、皆さん、それ以前に何か思い当たりません?これですよ:

この iPod nano の CM ソング、どう聴いても "Count Me In" のパクリだと思うんだけど。どうなんでしょうね、一体。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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