いい加減に教えるな

この歳になると、知人の家庭などでも小中学生に出喰わすことも多くなるし、時には勉強のことで質問されることも珍しくない。で、先日も、そういう質問を受けていたわけなのだけど、何でも中学校では今週辺りが中間試験のシーズンらしく、そういう関係の質問をされていたわけだ。

で、中2の某少年が僕のところに一枚の紙片を持ってきた。今度の英語の中間試験の「出題のポイント」なのだ、という。見てみると、1年の教科書のある単元が示してあり、そこに出てくる「付加疑問文」を出題する、と書かれている。早速、1年の教科書を持ってきてもらって一緒に見てみるが、どこにも付加疑問文は出てこない。先の紙に戻ると、「What 〜 や How 〜 の付加疑問文」と書いてあるのだが(後記: そもそもこの時点で意味不明なのは言うまでもない)……

そこに書かれている、what や how を使った文章を探すと、あるのは「感嘆文」だけである。まさか、この感嘆文のことを付加疑問文なんて書いているのか?

中3の某少女のときは、これにも増してひどい話を耳にしてしまった。比較級とか最大級とかの説明をしてほしい、というので説明していて、-er や -est ではなく、more や the most を使う場合があるんだよ、と、一例として moving を挙げて説明しようとしたら、

「あの、それは mover とか movest とかになるんじゃないんですか?」
「は?」
「あの、6文字までの単語では -er とか -est になる、って習ったんですけど」

僕は怒りで震えた。何処のどいつだ、こんないい加減なことを教えたのは。

どうせそういうことを書いているサイトでもあるんだろう、と思って検索してみると、比較級・最上級を文字数で判別させるような記述の多いことったら……先の子は、これに加えて「6文字以下」と「6文字以上」を勘違いしていたようだけど、いや、そんな問題じゃないんだ。文字数で分けられる? ……もう、呆れましたよ。じゃあ訊くけどさ、以下の単語の比較級・最上級はどうなるんだよ?

  • bored
  • like
  • quiet
  • pleasant
  • unhappy
bored は more / most しかとり得ない。like は一部の例外(詩とか)以外では more / most しかとり得ない。quiet は両方とり得る。pleasant も両方。そして unhappy は7文字、かつ3音節だけど -er / -est しかとり得ませんよ? 猿知恵で子供にいい加減なことを教えようなんて、実にひどい話だとしか思えない。

知人の塾関係者に聞いてみたところ、

「あー、それねえ。おそらくそこら中の中学校でそれ式で教えてますよ」

という恐るべき答が返ってきた。ひょっとすると、ここを読んで「数少ない例外をあげつらって私達を誹謗中傷するのか」と怒りに震えている教育関係者がいるのかもしれない。しかし僕は声を大にして言おう。そもそもここに「字数」などという概念を持ち込んで単純化をはかっている時点で、アンタラには人を教える資格なんてないんだよ。自分が受け持ってる間だけ正しい答を出せばそれでいいわけ? 高校に入って、あるいは社会に出て、今まで磐石だと教えられてきたルールが実は何も根拠がないものだった、となったときの教え子のことを、アンタラは何も考えていないわけ? それで教育関係者だなんて、恥を知れ、恥を。

今にしてつくづく思うのだけど、僕は師には恵まれていたのだった。そういういい加減なことを教わらずに今日まで来られたのは、実は幸運なことだったのだ、と、こういうことを目の当たりにする度に思い知らされるのだ。残念だけど、こんないい加減なことを教わって育つ子達がいる。こういう不幸な子達がいる限り、この国の教育なんて、知れたものだと言わざるを得まい。

2013/05/30(Thu) 02:56:26 | 日記

Re:いい加減に教えるな

ここで言っている like は形容詞(同様・類似の意)です。
Thomas(2020/01/22(Wed) 22:37:00)

Re:いい加減に教えるな

like は形容詞だったんですか!初めて知りました。大変勉強になりました。
guest(2020/01/22(Wed) 11:29:26)

Re:いい加減に教えるな

やっぱりペーパーテストの弊害なんでしょうか。6-7割がそれで点数取れてしまいそうです。しっかり発音記号から教えるべきだと思います。
guest(2013/06/01(Sat) 07:43:29)
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Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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