悪意か不注意か?

理研の某女性研究者の件だが、僕に言わせれば、あれは切り貼りした PCR プロファイルの図1枚だけで既に終了しているのだ。もう数多くの方が書かれているけれど、あれは明らかに、T 細胞の遺伝子が rearrange したということを主張するために切り貼りされているのであり、しかもその切り貼りした部分には rearrange されていない DNA のラインが出ていない。T 細胞だからって、何から何まで遺伝子が再構成されるわけじゃない。染色体において対になっているもう片方の DNA は元の配列を持っているのだから、あの図には(微かであったとしても)GL と示された位置にラインが出るのが reasonable なのだ。それを、猿の浅知恵で「GL にラインの出ていないプロファイルを切り貼りした」ということこそが、某女性研究者の故意の何よりの証拠なのだ。

D 論の図を使用したことだってそうだ。D 論はしんどいしんどい思いをして書くものだ。散々教官に駄目を出され、精神的にクタクタになって、這い擦るような思いで、文章をまとめ、図面や参考文献リストを用意して、ひとつの D 論ができあがる。だから、書いて数年も経たないなら、自分が D 論に使った図を忘れて使い回す、なんて、僕には信じられない。しかもキャプションを消して再利用するなんて。先の PCR にしたってそうだけど、Nature に論文が掲載されるというのは「それ1本で通常の論文3本分に匹敵する」とまで言われる、研究者にとっての「晴れ舞台」だ。だから、図は少しでも良いものを用意するのが普通だ。何かのプレゼンで使ったパワポに貼ってある画像を再編集して使う、なんて、僕にはてんで理解できない。

以下に述べることは僕の邪推であるが、temporary なポストにある若手研究者が、研究者の名声と parmanent なポストを得るまでの「賞味期限付」の実績として、この Nature の論文が用意された……と考えたらどうだろう。時か過ぎ、その内実が露になったとしても、そのとき「ああ、これは勇み足でしたねえ、でもこれまでに他にも業績上げてるし、まあいいんじゃないですか」と言える(というだけで僕はどうかと思うんだが)ようなポストと周辺状況を得ていれば、特に問題はないんじゃないか……そう考えて準備されたものだとしたら。こんなものが Nature に投稿・掲載される、ということのメカニズムとして、僕が考えつくのはそれ位しかない。そしてその台本を書き、お膳立てをしたのは某女性研究者ではなく、corresponding author の方だろう。だからといって、それに乗った者の罪がない、ということにはならないし、そんな虚偽のストーリーで世に出る研究者がいたとしたら、ポスドクの不安な日々で潰されそうになりながら研究を続けている若手研究者達にとって、あまりに救いのない話だと思うけれど。

2014/04/10(Thu) 12:50:09 | 科学
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T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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