がんとワクチンに関するメモ
備忘録も兼ねてメモしておくことにする。
がんとワクチン、というと、おそらくほとんどの人が、いわゆる丸山ワクチンを連想するだろう。丸山ワクチンは、「結核患者にがんの罹患者が少ない」という経験則に則って、BCG から結核菌を除去したものとして作製されたものだけど、実はこれとは違うがんのワクチンが、先月から実際に臨床の現場で使用されるようになった。
この場合の対象は子宮頸がんである。子宮頸がんは、比較的若い女性でも発症することがあり、場所柄、女性の生殖機能にも直接関わるがんであるが、このがんとヒトパピローマウイルスとの間に関係があることは、ちょっと前から知られていた。このヒトパピローマウイルスへの感染を抑制する目的で、アメリカでは 2006 年にメルクの GARDASIL というワクチンが認可されているが、メルクの 100 % 子会社である万有製薬が日本で GARDASIL の認可を得る(2007年12月)のに先立ち、グラクソ・スミスクラインの Cervarix が同年9月に承認されており、この Cervarix が先月日本国内で発売されたのだ。
僕はパピローマウイルスというと「いぼ」のウイルスだという認識だったのだけど(勿論これは間違っていない……乳頭腫 papilloma という「いぼ」の原因になるのがこのウイルスである)、子宮頸がんや陰唇がん、尖形コンジローマ、あるいはオーラルセックスによって咽頭がんや舌がん、口腔がんなどの原因になることもあるという。おそらくこの発がんに関しては、単純にウイルスの作用だけではなく、自己免疫機構との複合効果が大きく関わっていることは想像に難くない……メディアなどでも有名になった Tree man こと Mr. Dede Koswara の皮膚異常も、このヒトパピローマウイルスと自己免疫機構が関わっているといわれているからだ。
今回の Cervarix の発売によって、過去のデータ通りにいけば、ワクチン投与者は 80 % の確率でヒトパピローマウイルスによるがんの発病を抑制できるといわれている。ワクチンとしては、この予防率はかなり高いといえるのだけど、不思議な程に、メディアはこのワクチンのことを取り上げない。特に女性の方々には、ぜひこの Cervarix という名前を覚えておいていただきたい。そして、このワクチンの恩恵を少しでも多くの女性に享受していただきたいと思う。