久々にプリント基板を
実は僕はユニバーサル基板を使うことが多い。プリント基板のアートワークが公開されている回路を組む場合も、そこからユニバーサル基板上に配置を写して、すずめっき線で配線して作ってしまう。
しかし、今作っているオーバードライブは、このやり方だと少々基板が大きくなり過ぎてしまう。丁度この差で、当初予定していたケースに入るかどうか、ぎりぎりのところだったので、今回は久々にプリント基板を作ることにしたわけだ。
これまでは、感光基板を使ったり、生基板にアートワークを載せてポンチを打って、配線を手で書いたり、エッチングするにも塩化第二鉄水溶液を使ってやっていたわけだが、この十年程の間に、基板作製法も色々進歩している。何と言っても革命的だったのが、Press-n-Peel Blue Transfer Film の登場とキレート剤だろう。
Press-n-Peel Blue Transfer Film は、簡単に言うとコピーのトナーを基板に転写するためのシートである。このシート上にアートワークをコピーして、生基板に貼って熱をかけるだけで、アートワークに青い樹脂で裏打ちしたものが基板に転写されるわけだ。アイロンで転写する際に問題が生じることが多かったのだが、ラミネーターを通して熱をかけるということが考えられてから、この転写も至極簡単に行えるようになった。
そしてキレート剤。本当ならこういうものは僕のような人間が考えなければならないわけだが、食塩とクエン酸を 1:4 程度に混合したものを、できるだけ濃い濃度になるように過酸化水素水に溶解したものが用いられるようになっている。これはまず、薬局とスーパーに行けば材料が揃うし、液が透明なので、目視でエッチングの進行具合を見極めるのが非常に楽だ。溶解した銅は、使用後の溶液にアルミ箔を放り込めば沈殿物として回収できる。悪い要素が何も見出せないという優れものである。
土曜の昼頃から、溜息をつきつつ基板の作製を開始したのだけど、2時前にはもう、穴開けまで出来上がった基板にフラックスを塗り終えている。これは楽だ。ジップ付きのビニル袋を使えば溶液の量はごく少量で済むし、反応の様子も目視で十分確認できる。溶液の温度も反応熱とのバランスで丁度良い感じに維持できる。
使用後の溶液は、水を張ったバケツにプラ容器を浮かべた中に入れ、アルミ箔をちぎって放り込み、攪拌して……を何度か行い、青緑色が消えたことを確認してから濾過し、濾過した銅は燃えないゴミ行き、濾液の方は大量の水で希釈して下水に流せばよい。いやー、これは楽だわ。塩化第二鉄溶液の処理で、サンハヤトのキットでセメント固化とかやっていたのは一体何だったんだろう、という感じである。
出来上がった基板は十分水洗いし、スチールウールと中性洗剤でレジストを除去し、0.9 mm の超硬合金ドリルで穴を開け……あとは塗ったフラックスが乾けばもう半田付けを始められる。こんなに楽ならば、ユニバーサル基板の使用頻度も減っていくだろうなあ……