実はこんな感じの
皆さんは、アカイカというイカをご存知だろうか。かなり大型のイカで、大きいのに大味ではないために、食品産業では重宝されるイカらしい。これは余談だが、以前、日本のとある漁村にダイオウイカが打ち上げられて、その村で「このイカを皆で食べよう!」ということで、巨大イカリングを作ったりして盛り上がったクライマックスに、村民皆で「せーの!」で口に放り込んで、数秒後に皆吐き出した、ということがあった。そのときの村民の話によると、食べた感じは「スポンジに海水を染み込ませて齧っているような感じ」だったそうで、なるほどたしかにそんなだったら食べられなかったろう。こんな風に、ダイオウイカは食えたものではない、という話だが、アカイカの方は、ちょっとモチモチした感じの食感で、冷凍するとまた食感が変わって美味しいのだ、という。
このアカイカを通販で販売されている I.C.ティアラム株式会社のネット通販店舗「山陰とれたて本舗」のページで公開されている画像をリンクしておこうと思う。こんな感じだ:
誤解なきよう更に書き加えておくけれど、このアカイカは美味しい。美味しいのではあるが、回転寿司屋の厨房の奥のまな板の上に、このイカがでで〜ん、と鎮座ましましている様を想像すると、正直言ってちょっと腰が引ける、かもしれない(いや、でも、安くて美味しい良品なんですよ、本当に)。
……という話を某所でしていたときのことだ。
「なるほどねえ。そういう、加工現場の見えない食べ物って、都市伝説になりそうですよね」
「でしょう?なんかねえ。いや、アカイカはいいんだけど、僕も知らない未知の生物がいたりしたら、ちょっと厭だなあ、と思って」
「たとえば、どんなのです?」
「うーん……」
こういうときは、S は頭の回転が速い。
「手羽先屋で、千手観音みたいに全身に手羽先が生えてる鶏を飼育している(手羽先屋の名誉のために書き添えておくけれど、そういう話は今のところないと思います)、とか?」
「あーそうそう。そういうの」
「それって、都市伝説としては結構聞く話だけどね」
僕の頭の中には、おおむねこんな感じの鳥が浮かんでいた。さしづめ、「生産者利益の追求のため、遺伝子操作で作られた異形の鶏」とでも言うところか。
「Thomas さん、そういうのってできないの?」
僕は iPS 細胞の話とかをして、そういう話はあながち完全にホラ話とも言えないご時世なんだよ、とか説明した。で……
「まあ、既存の生物のモディファイ、ってことなら、不可能ではないでしょうね。コストが割に合わないとは思うけど」
「……何だか気持ち悪い話ですねえ」
むしろ、僕に言わせれば、何から何まで未知の生物の方が気持ち悪い。そういう話をすると、
「たとえばどんなのです?」
「そうだなあ……たとえば、回転寿司のネタがね、そのネタからは想像もつかないような生物の一部だったとしたら、どうします?ホタテの貝柱、なんて、寿司ネタでは人気がありますけど、あれが実は筒状の生物のスライスだったらどうか、とか」
「筒状って?」
で、僕が彼らに説明したのがこんな感じのものだった。
「やめて下さいよ!僕、回転寿司で、ホタテ食えなくなっちゃうじゃないですか!」
と、あのとき皆に言われたけれど、こんな生物、実在したら、皆さんどうします?