オーバーダブ
自室でごそごそとヘッドフォンを付けて、床にあぐらをかいてエフェクタのセッティングをする。今日の場合は DYNACOMP を通して、真空管プリ経由でインターフェースに送るわけだけど、ノイズの源になるクーラーやテレビ、蛍光灯を消してある部屋は、どこか僕を排除するような暗さを感じさせる。ストラトにシールドを差して、さあ、作業開始だ。
最初は何度かプレイバックしているのに自由に重ねながら、フレーズを考え、試し、また考える、の繰り返しだ。徐々に頭の中でフレーズが淘汰されてきたところで、録音を始める。今日はフェードアウトに向かうところのリードギターだ。
なにせあまり歪みモノを使わないので、こういうときは掛け合いになるようなフレーズを考えて、録音して、プレイバックして、ダメならまた録音して……を繰り返す。グルーヴを殺さないようにするには、いわゆるフレーズサンプリングはしないようにしなければならない。だから、単調なフレーズの繰り返しを2分近く続けて、またやり直して、を繰り返す。アナクロと言われるかもしれないけれど、昔はこれをしたくてもできなかった(そんなに録り直したらマルチのテープがヘタってしまうことだろう)のだから、時代と技術の進化の恩恵は確実に受けているのだ。
やがて……じゃあ、この二つを左右に振って……で、ディレイのアウトを反対に振って、と。まあこんな感じですかね。あとはテレキャスで更にいくつかフレーズを重ねることになるだろう。まだヴァースも、メロも、サビも、フレーズのアイディアが固まっていない。明日も同じことを繰り返すことになる。一人で音楽を作るというのは、つまりはそういうことだ。他の人はきっともっと楽にやっているんだろうけれど。