ノッテケノッテケ
最近、ホンダの CM で、波にのせてクルマの絵を出してきて、マスコットキャラクターが1車種出てくるたびに「のってけのってけ」と言う……というのが流れているのだけど、
「うーん、これ見て分かる人って今はどれくらいいるんだろうか」
などと要らぬ心配をしてしまう。
昔、いわゆるサーフィン&ホットロッドブームというのがあった。もともとは instrumental のバンドがその主流を占めていたのだが、Jan & Dean などが先駆けとなって、やがてはあの The Beach Boys などが登場する、アメリカ西海岸の一大音楽ブームである。しかしながら、このブームの中で登場した数々のバンドは、実はアメリカでは言うほど「売れて」はいない。The Beach Boys なんかは例外中の例外で、あの "Misirlou"(The Beach Boys はデビューアルバムの ”Surfin' USA" でこの曲をカヴァーしている)で有名な Dick Dale も(いや、彼は Capitol と契約してたんだからまだ売れてる方なんだけど)全米規模でいうとそれほどの大ヒットに恵まれたわけではない。彼の "Let's Go Trippin'"(これも The Beach Boys が頻繁にカヴァーしていた曲である)が全米チャートでは60位というから、やはり西海岸の局地的ブームというべきなのだと思う。
さて、そんなアメリカ西海岸シーンの中、1963年に結成された The Astronauts というグループがあった。アメリカでは実はあまり成功していないバンドなのだけど、日本では(どういうわけか)かなりの人気があった、らしい。もちろん日本のエレキブームがその背景にあったわけだけど、先の Dick Dale が確立した「スプリング・リバーブを深くかけたリードギター」を、これでもか、とばかりに前面に押し出したサウンドが、おそらくは日本での人気の理由なのだろうと思う。
大分前置きが長くなってしまったが、その The Astronauts の "Movin'"(邦題『太陽の彼方に』)という曲をご一聴いただきたい:
この曲が、日本のエレキブームに乗っかって(アメリカではヒットチャートにも乗っていないのに)局地的なヒットになった。この時代、アメリカのヒット曲は日本人がカヴァーして人に知られるようになる、というパターンが多かったわけだけど、この曲もその例外ではない。1964年に寺内タケシとブルージーンズ(『エレキの若大将』でご存知の方もおられるかもしれない)の演奏、タカオ・カンベ(この人は東映の大部屋俳優だったらしいが、この時代の欧米の楽曲の訳詞……といっても漣健児と同じで超訳だけど……を数多く残している)の詞、そして藤本好一の唄でカヴァーされている。
これが、先の「のってけのってけ」のルーツである。この8年後にゴールデンハーフ(全員ハーフ……本当は一人日本人が混じっていたんだけど……のガールグループで、スリー・キャッツの『黄色いサクランボ』のカヴァーで有名)もこの曲を再カヴァーしているのだが、こちらの方でご存知の方もおられるかもしれない(今回聴き返して、ファズ・ギターの音がいいのでちょっとびっくり)。
いずれにしても、僕より下の世代でこの辺の曲のことを知っている人なんて、果たしてどのくらい存在するのか疑問だし、知らない人もきっと何の疑問も持たずに聞き流しているんだろうなあ……などと思うと、ちょっと哀しくなってしまう。引っかかったら、まあ「ググれカス」とまでは言わないけど、ちょっとは調べてみましょうよ。ちょっとだけ豊かになれるんだから。
Re:ノッテケノッテケ
私の道場に高校1年生の男子が数名居るのですが、その過半数がサザンすら知りません(涙)