これどうやって弾いてるんだ?

楽器を弾く、特に、譜面中心でないロックやフォークソングをやっている人々は、しばしばこの言葉をつぶやいたことがあるのではないだろうか。今日はこのお話を少し。

昨日からごそごそやっている曲なのだけど、耳で取ったコードの経過音を弾くのに、一か所だけ非常に厄介なところがあった。無理すれば弾けないことはないのだけど、でも先日張り替えたライトゲージの弦で弾くのは少々厳しい(一応誤解なきように明記しておくけれど、いくら僕でも F とか B♭ とかを押さえられないということはない……最近は書かぬが花、と思って書かずにいると、アホな読み手が読む対象を平気で自分のレベルにまで引き下げて簡単に誤解してくれるものだから、こんな下らんことを書かなきゃならないんだけど)。うーん。

僕が悩むのには理由があった。というのも、この曲を演奏していた人々は CS & N とか CSN & Y とかのフォロワーだからだ。こう書いても最近の人にはピンとこないかもしれないけれど、「クロスビー、スティルス、アンド ナッシュ」とか「クロスビー、スティルス、ナッシュ、アンド ヤング」とか、ええい大まけだ、ヤングはニール・ヤングのことだ、とか書けば……やはりピンとこないか。詳しくはWikipedia の説明を読んでください。

このグループは、僕より下の世代にはおそらく馴染みがないだろうと思う。むしろ『名前のない馬』で有名な America の方が知られているのかもしれない。そういう人々のために書くけれど、このグループは言ってみれば「元祖ウエスト・コースト」とでも言えばいいのだろうか。CS & N の初期に聞かれるアコースティックサウンドと、男声のみの美しいコーラスが非常に特徴的で、たとえばイーグルスなんかは彼らの影響をもろに受けているに違いないのだ。

で、この CS & N とか CSN & Y とかを演奏しようとして、ギターをよくよく聴いてみると、ギター弾きはしばしば愕然とさせられることがある。彼らの押さえているはずのコードが、自分のギターで押さえられない!……なぜかというと、彼らはいわゆる変則チューニングというのを用いるからだ。ギターのチューニングというのは、神聖にして侵すべからざるものでは全然なくて、特にカントリーの影響を受けている人達は、この変則チューニングというのを使うことが多い。その多くはオープン・チューニング(ギターの指板を押さえていない状態で各弦の音が和音を構成するようなチューニング)なのだけど、他にもダウン・チューニング(全ての弦を、多くの場合半音下げにしてチューニングする)とかドロップ・チューニング(何本かの弦だけを下げたチューニング)とか呼ばれるものがある。彼らはこれを用いることがあるので、そういう曲をカヴァーするのには、コードだけではなくチューニングも読み取らなければならない。

まあ、それらのチューニングでの演奏可能性に関しては、ちょっと考えれば分からないわけではない(これでも20数年ギター弾いてますからね)。しかし……うーん、チューニングの問題でもなさそうだ。「これどうやって弾いてるんだ?」

もう少し悩むと得るものも多いのだけど、今回は卑怯な手を使うことにした。YouTube で問題の曲が演奏されている動画をさがしたのだ……結果、坂崎幸之助氏がセッションで弾いている動画を発見、左手を見てみると……あー!なるほど、ここ開放で弾いちゃうのね。なるほど。

……まあ、楽器を弾いていると、こういうことはよくあるんですよ。昔だったらそれこそ先輩に聴いてみるとか、昔のロック・フォーク関連の雑誌をひっくり返すとか、レコード擦り切れるまで聴くとか、ラジオの深夜番組にハガキ書いてみるとかね。総力戦で調べるものだったのだけど、最近は安易な時代になったものだ、と、僕位の世代でも思ったりするのだった。

2010/08/06(Fri) 17:37:59 | 作編曲・演奏・録音
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Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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