渡辺 温

ひょんなことから、渡辺温の作品群が青空文庫収録されているのを発見して、夕食後の時間は何本かの短編(といっても、渡部温は短編しか残していない)を読んでいた。

実は今日まで、僕は渡辺温が自分の母校(旧制水戸中学校、現在の茨城県立水戸第一高等学校)の大先輩だということを知らなかった。それに、誕生日も僕と一日違いだ。いや、これは本当に知らなかった。それを知らずに、自ら探すわけでもなく、たまたま青空文庫の作品群に行き当ったのは、これは何かあるのだろう……というのは考えすぎかもしれないが、でも、そう思いたくもなろうというものだ。

渡辺の作品は、ときに陰惨であり、残酷であるけれど、でもそれらに現実の生々しい臭いを感じさせない。幻想的であって、そして短編しか残されていない彼の作品の多くは、呆気無く終わる。妙に乾いている。普通ならねとりと糸を曳きそうな愛憎が、まるで乾燥した老廃物のようにはらりと剥がれ落ちる。そんな感じだ。

27歳の若さで、夙川の踏切(阪急神戸線だ!)で事故に遭いこの世を去った彼より、今の僕はもう一回りも齢をとってしまっているけれど、この機に渡辺とネット上で邂逅を果たしたことに、偶然を越えた何かを感じて、どうも眠れずにいる。こんな気持ちになるのは、もう何年ぶりのことだろうか。

2010/10/07(Thu) 00:50:37 | 日記
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T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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