小女子を食す

春が近付くと、愛知県では地魚が色々と売られるようになる。なるのだが、どうもこの辺の人達は地魚を美味しく食べる術を知らないらしい。こういうものを工夫して食べられない人達の文化程度なんて知れたものだ、と毒を吐きたくもなるけれど、知っている人はちゃんと知っているようなので、この辺の人達はそういうことの差が激しい、ということのようだ。

今位の時期だと、小女子(こうなご)がトレイに入ったものが売られているのだが、僕が外に用事があった帰り、午後10時過ぎにスーパーを覗くと、決まって小女子の売れ残ったのが処分価格で売られている。昨日も、200 グラム程ありそうなトレイがひとつで78円で売られていたので、二つ購入して冷凍しておいた。

で、昼食にこれをいただくことにする。小女子は、形の大きいものは、鰯のように手開きにして生姜醤油で食べると美味だけど、ちょっと小振りで、世間では佃煮にしてしまうような大きさのものは、実は柳川にすると美味である。まずは手持ちの牛蒡を笹がきにしておく。

小女子は半解凍の状態にして、フライパンに湯を沸かし、塩を入れたところにこの小女子を入れる。無理して解そうとすると身が崩れるので、そうっと混ぜてから、一煮立ちさせたところで湯を切り、笊に上げておく。さっと洗ったフライパンに、濃い目の鰹出汁を1カップ半張り、酒大匙4、砂糖大匙2、味醂大匙1、醤油大匙2、生姜一かけの擦りおろしを加えて煮立てたところに小女子を入れる。出汁が沸騰したところで牛蒡の笹がきをたっぷり入れて、3分程煮てから卵で閉じる。これだけである。

本物の柳川で言うところの「まる」である。鰓蓋や目がやや口に触るのが気になるという方は、大ぶりの小女子を買って手開きにしたもので作れば上品に仕上がるだろうけれど、やはり腸を含めて食べる方が味はよろしい。78円と牛蒡と調味料、それに卵だけでご馳走の出来上がりである。知らない奴ぁ食えないからねえ、と苦笑いしながらいただくのであった。

2011/02/26(Sat) 12:36:07 | 日記

Re:小女子を食す

小女子は佃煮,しか知らなかった伊丹出身の私にとって,柳川とは新鮮な驚きでした。記述が甘くて,いかにも美味そうだね。
guest(2011/03/17(Thu) 00:56:18)
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T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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