違う環境下での検証
最近、TeX Live のページなどを書いている関係上、奥村氏の TeX フォーラムを覗く機会が多いのだけど、ここで beamer が使えなくて困っている、という書き込みがあった。僕は普段はこの手の書き込みにフォローすることはまずないのだけど、そう言えば beamer って使ってないなぁ、と思って、ちょっと試すことにしたのだった。
奥村氏の『LaTeX2e 美文書作成入門』pp.299 にある example を書き移したファイル (beamer-test-win.tex)を作成して、platex で2回処理してから dvipdfmx で処理すると、こんな PDF ファイル (beamer-test-win.pdf……ちなみにこのファイルには Takao ex ゴシックが埋め込まれている)が生成される。以上。
……いや、以上、って、それじゃああまりに教育的ではないだろう。まあ、TeX Live 2011 はこういうときにはあまりに強力過ぎるので、他の環境で使っている人に有益な情報を提供できるとは限らないのだ。ということで、reboot して Windows Vista X64 上で試してみる。
……と、ここで重大な事実に気付いたのだ。w32tex って beamer 入ってないじゃん! いや、これは w32tex を纏めている角藤氏の不手際ではなくて、単純にプライオリティの問題なのだろうと思うけれど、そりゃ入っていなければ、使えないに決まっている……ということで、以下、TeX フォーラムの当該スレッドから引用しておく:
……いやー、我ながら丁寧に書いたもんだ。まあ、違う環境のユーザに対しては、これ位ケアすることもたまにはある、という話である。いや……そもそも僕は、誰に何も聞かなくてもこれができたわけで、それは他人が見ただけで読むのを諦める英文の document をちゃんと読む、とか、google でその時点での live なサイトをチェックする、とか、そういうことをしているからであって、そんなこたぁ誰だってできるはずなのだけど。そう言えば w32tex には beamer は入っていないのですね?(僕の認識不足でしたらすみません)。ということで、w32tex に実際にインストールしてみました。
以前だと、sourceforge に beamer と pgf, xcolor 一揃えがあった:
http://sourceforge.net/projects/latex-beamer/
のですが、これは現在メンテされていないということですので、CTAN から取ってきます。
beamer.zip はそのまま展開します。pgf の ZIP ファイルは、展開後に格納フォルダの名称を pgf などにリネームしておくといいですね。xcolor もそのまま展開しますが、後で中の .ins ファイルの展開が必要です(後述)。
- http://mirror.ctan.org/macros/latex/contrib/beamer.zip
- http://mirror.ctan.org/graphics/pgf/base.zip
- http://mirror.ctan.org/macros/latex/contrib/xcolor.zip
僕の手元の環境では c:\w32tex に w32tex がインストールされています。以下、path は適宜読み換えて下さい。
まず、
C:\w32tex\share\texmf-local\tex\latex
を作成します。この中に、
のように展開したフォルダを置き、コマンドプロンプトで
- C:\w32tex\share\texmf-local\tex\latex\beamer
- C:\w32tex\share\texmf-local\tex\latex\pgf
- C:\w32tex\share\texmf-local\tex\latex\xcolor
> cd C:\w32tex\share\texmf-local\tex\latex\xcolor
> latex xcolor.insとして、スタイルファイル等を展開してから、
> mktexlsrで ls-R データベースの更新をすれば、使えるようになるはずです。僕の手元の環境では、使えるようになっています。先に僕が添付した pp.299 のファイルも処理できています。
# ここまで到達できない場合は、beamer 以前の TeX のインストールの段階で問題
# が発生しているかもしれません。
【追記】TeX フォーラムで、複数の方からご指摘いただいたのだが、w32tex では基本的に mktexlsr は使わない方がよい、らしい。僕の現時点での認識としては、w32tex の場合は ls-R データベースの作成は必ずしも must ではないので、無用な mktexlsr による ls-R データベースの作成は弊害の方が大きいから、だろうと思うのだが……たしかに『美文書……』でも付録 B.4 (pp.316-7) にそんなニュアンスの記述がある。
【追記2】TeX フォーラムで、w32tex のマスターである角藤氏が「mktexlsr しちゃいけない理由が私には分かりません」という内容の書き込みをされている。うーん、結局 ls-R 有害論って、実はよくある Windows ユーザ特有の「経験則信仰」ってやつなのかしらん?