老後の楽しみ
大学生の頃。僕は池波正太郎は読まないと心に決めていた。老後の楽しみにとっておくべきだと思っていたからだ。しかし、とうとう『鬼平犯科帳』、そして『仕掛人梅安』……そして、結局あらかた読んでしまった。池波正太郎というカリスマに巣喰うダニみたいな作家(常盤某とかね……池波正太郎は自分なしには語れない、とでも言わんばかりのあの蔓延りぶり、まさにダニだよ)の存在まで知ってしまい、本当に嫌な気分になるオマケ付きだった。
音楽でも、そういうものがないわけではない。たとえば The Beatles…… これは、聞くと自分が影響されてしまうことが避け難いと思ったから(山下達郎が全く同じことを言っていたのにはビックリしたけれど)なのだけど、これだって結局はあらかた聞いている。自分で蒐集したりヘビーローテーションみたいにしたりしていない、というだけのことである。
音楽でこういう「老後の楽しみ」にしたいと思っていたのが、実は Todd Rundgren だったのだが、これも聞いてしまっている。"I Saw the Light" を偶然聞いて、その(日本で知られる彼のイメージで括るにはあまりに広過ぎる)彼のあまりに広範な世界を知ってからは、結局れこれ聞いてしまっている。今日だって、彼の A Cappella Tour を聞きながら書いているのだが、たとえば山下達郎がゴスペラーズや Baby Boo を従えて A Cappella Tour をやってくれたらいいのになあ(でもまずそういうことはしないんだろうなあ)と思いつつ、結局はこうやって聞き潰してしまっている……あ、これは既に僕が老境に達したということなのだろうか?