ストラトの音作り

昨日の日記にリンクしたのは、暑さで何だか厭になって、スッキリした曲を作りたくなって試作したものである。ああいう断片が僕の HDD にはたくさん入っていて、それが膨らむときにはそれが完全な曲になるし、膨らまないときはそのままになるわけだ。

で、あのデモで弾いているギターはストラトである。僕はカッティングのときにはほぼ必ずテレキャスターを使うのだけど、今回はちょっと思うところがあってストラトを使った。その話を今日は書こうと思う。

テレキャスにはピックアップが二つついている。ネックに近い方をフロント、ブリッジに近い方をリアという。各々のピックアップの出力は 3 way selector で切り替えられるが、3 way の名の通り、selector を真ん中にすると、フロントとリアの出力をミックスした出力が得られる。このとき、二つのピックアップが拾っているノイズが相殺されるようにミックスされている。

ストラトキャスターにはピックアップが三つついている。ネックに近い方をフロント、ブリッジに近い方をリア、そしてその中間にあるものをミドルという。各々のピックアップの出力は 5 way selector で切り替えられるが、5 way の名の通り、selector で二つの隣接するピックアップの出力をミックスした出力が得られる。二つのピックアップが拾っているノイズが相殺されるようにミックスされているのは、テレキャスターと同じだ。

……などと書いていても、ギターを弾かない人にはさっぱり分からないかもしれないので、以下に各ポジションで弾いた生音を挙げておこう:

  1. Telecaster Rear
  2. Telecaster Rear - Front Mix
  3. Telecaster Front
  4. Stratocaster Rear
  5. Stratocaster Rear - Middle Mix
  6. Stratocaster Middle
  7. Stratocaster Middle - Front Mix
  8. Stratocaster Front
……違いがお分かりになるだろうか。

さて、では、普段僕がこれらをどう使い分けているのか、だけど、実はテレキャスターの場合、9割方は (2) Telecaster Rear - Front Mix を使っている。カントリーとか、あるいはジミー・ペイジのように歪ませて使う人は (1) のリアを使うことが多いと思う。ちょっとジャズっぽいプレイをする人は、ひょっとすると (3) のフロントを使うかもしれない。ただし、もともとテレキャスターのフロントピックアップは、ギターをベースの代用として使うために追加されたものなので、(3) を常用する人はあまりいないかもしれない。僕のように歪ませずカッティングメインで使う場合は、selector を動かすことはほとんどないと言ってもいいだろう。

ではストラトでは……と、これが問題だったのだ。僕は普段は専ら (5) Stratocaster Rear - Middle Mix を使っていたのだけど、他のポジションを有効に活用できていなかった。うーん、なんだかなあ、と思いつつ、昨日の録音をしていたのだった。

自分でアレンジをして、あれを録音していたわけだけど、時間はトータルで2時間程度しかかけられない。うーん、カッティングにストラト使ってみよう、でもからっとした感じにするのに、どうするのがいいのかなあ、と考えていたときに、そう言えば今回のアレンジ、大貫妙子の『夏に恋する女たち』に似てきたな、と思ったのだった。

『夏に恋する女たち』は、大貫妙子の "SIGNIFIE"(シニフィエ……あーそーか、いわゆるニューアカデミズムの華やかなりし頃の名残、かな)に収録されている。たしかドラムは坂本龍一が叩いている(と書くと意外に思われるかもしれないけれど、『い・け・な・いルージュマジック』とかでも叩いている)のだけど、ギターは確か大村憲司だったはずだ。大村憲司と言えば天下無双のストラト使い……というわけで、納戸の奥をごそごそやって聴いてみると……あー、これリアで弾いてるっぽいなあ。

家でギターを録音するのに、アンプを鳴らすわけにはいかないから、僕はほぼ 100 % ラインで録音をするのだけど、こういうこともあろうかと、ちょっと前にギターやベースは自作の真空管プリアンプを通すようにしてある。このアンプは少しだけだけどオーバードライブできるようになっているのだけど、今回はリアで、歪むか歪まないか、のぎりぎりのところにセッティングする。もう少しゲインを上げると、いわゆる「クランチ」になるのだけど、この辺りのセッティングを今まで追求していなかった。弾いてみると……あー、ストラトってこうやって使うんだ。これも自作の BOSS OD-1 のクローンを突っ込んでみると……そうかそうか、こうやって音を作ればいいわけね。ようやく納得できた。で、録音したのが、昨日のあれだった、という次第だ。

……と、なんだか軽音の高校生みたいな話だけど、今までほとんど歪ものを弾いていない僕は、ようやくストラトと真空管プリと OD-1 で音のバリエーションを整えることができるようになったのだった。

2010/05/18(Tue) 16:37:23 | 作編曲・演奏・録音
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Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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