オーバーダブ

自室でごそごそとヘッドフォンを付けて、床にあぐらをかいてエフェクタのセッティングをする。今日の場合は DYNACOMP を通して、真空管プリ経由でインターフェースに送るわけだけど、ノイズの源になるクーラーやテレビ、蛍光灯を消してある部屋は、どこか僕を排除するような暗さを感じさせる。ストラトにシールドを差して、さあ、作業開始だ。

最初は何度かプレイバックしているのに自由に重ねながら、フレーズを考え、試し、また考える、の繰り返しだ。徐々に頭の中でフレーズが淘汰されてきたところで、録音を始める。今日はフェードアウトに向かうところのリードギターだ。

なにせあまり歪みモノを使わないので、こういうときは掛け合いになるようなフレーズを考えて、録音して、プレイバックして、ダメならまた録音して……を繰り返す。グルーヴを殺さないようにするには、いわゆるフレーズサンプリングはしないようにしなければならない。だから、単調なフレーズの繰り返しを2分近く続けて、またやり直して、を繰り返す。アナクロと言われるかもしれないけれど、昔はこれをしたくてもできなかった(そんなに録り直したらマルチのテープがヘタってしまうことだろう)のだから、時代と技術の進化の恩恵は確実に受けているのだ。

やがて……じゃあ、この二つを左右に振って……で、ディレイのアウトを反対に振って、と。まあこんな感じですかね。あとはテレキャスで更にいくつかフレーズを重ねることになるだろう。まだヴァースも、メロも、サビも、フレーズのアイディアが固まっていない。明日も同じことを繰り返すことになる。一人で音楽を作るというのは、つまりはそういうことだ。他の人はきっともっと楽にやっているんだろうけれど。

2010/06/12(Sat) 22:25:45 | 作編曲・演奏・録音
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T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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