第三の男
これはメモも兼ねて書いておくことにする。民主党の細野議員が訪中した際、随行した二人のブレインがいた、という話は聞いていた。そのうちの一人が須川清司氏であることも分かっていた。しかし、あと一人が誰なのかが分からなかったのだ。
須川清司という人は、1996年から民主党における外交安全保障、金融、地方分権のブレインとして活動している。鳩山政権以降は、内閣官房専門調査員を兼務しているから、内閣官房のブレイン、つまり仙石氏のブレインだとも言える。須川氏はもともとは住友銀行にいた人で、シカゴ支店長代理、シンガポール支店長代理と務めた後に退職、シカゴ大学大学院で国際関係論で修士号を取得した後に民主党入りしている。外交通にしてアメリカ通ということで通っている人物なのだが、鳩山政権時代は、鳩山氏がこの須川氏と寺島実郎(財団法人日本総合研究所会長)氏にべったりで、官僚の持ってくる最前線の情報をまともに聞こうとしなかったために、対米外交(特に普天間問題)をしくじった……という話もある。
須川氏はシンガポール駐在経験者とはいえ、中国とそれほど太いパイプがあるとは考えにくい。中国で記者に捕まった時の細野氏の映像を探してもらえばお分かりになると思うが、細野氏ご一行は、中国政府のものらしきクルマに乗っていた。それもそのはずで、あれは中国外交部(日本の外務省に相当)の用意したものなのだという。ということは、中国に何らかのパイプを持っている「第三の男」が、今回の交渉で動いていたと推測されるわけだ。
で、今朝のテレビ朝日系列で放映された『サンデー・フロントライン』を観ていたら、この「第三の男」に関する解説を聞くことができた。彼の名は篠原令(つとむ)という。
篠原氏は早稲田で中国文学を学んだ後、南洋大学(現シンガポール国立大学)、ソウル大学へ留学した経歴を持つ。1980年代から、日本企業の中国進出におけるコンサルタントとして働いており、故小渕恵三氏が1999年に訪中した際に設立したという100億円規模の「日中緑化交流基金」(通称「小渕基金」)の立ち上げに大きく関わっているといわれている。
民主党が中国へのパイプを持たない、というのは有名な話だが、今回の交渉を行う上で、管 = 仙石ラインはどうやらこの篠原氏のパイプを使うことにしたらしい。しかしなあ……篠原氏の Amazon における著書一覧なんかを見る限り、一党独裁国家としての中華人民共和国とのやりとり、という面で、篠原氏にそこまで頼れるものかどうか、という印象は拭い去れない。先日も書いたけれど、日中関係に関して言うならば、フジタの日本人社員が一人でも拘束されている現状は、4人拘束されているのと大同小異というところなんだけど。そもそも、船長逮捕後のやりとりにおいて、もしこの篠原氏が絡んでいてあの状態だったとするならば、日本の今後の対中外交というものに、正直言ってあまり希望は持てそうにないなあ。