きっこ、逐電?
『きっこのブログ』というのは、なんでも、ブログ業界ではたいそう有名なのだそうだ。僕は実はあまりよく知らない。そもそも僕自身、アクセス数を誇るために blog を書いているわけではないし、blog を書き始めてからの年数だったら、えーと……もう十数年書いているわけだから、別にそんなものを今更誇る必要もない。読んで下さっている方々が確実に存在し(最近はそういう方々とちゃんとやりとりしていないのだけれど)ているし、まあそういう方々は日々何事かを思って読んでおられるのだろう、と思っているのだが、それ以上のことを、正直あまり考えていない。勿論、軽々にものを書くことは問題があると思うし、ハンガリーの汚泥流出事故のときなどのように、僕の書いたものが情報源とされることもあるので、そういう意味での責任は負っているつもりだけど、それ以上、世間でそれが話題になるかどうかに目を向けているわけではない。ましてや、他人の blog に関して、そこまで興味を持っているわけがない。
で、僕は最近 Twitter も覗いているのだけど、この『きっこのブログ』を書いているきっこなる人物が、東電福島第一原発のメルトダウン報道を受けて、もう日本にいるのは危険なので国外に逃げる、という発言をして、話題になっている。僕はこのきっこなる人物のフォローをしていて、たまたまその発言をリアルタイムで目にしたのだけど、えーと……これかな:http://twitter.com/#!/kikko_no_blog/status/69408172053495808
このままだと北半球は終わるので、あたしはカナダ経由でオーストラリアへ逃げることを考えます。自分のことで忙しくなってきたので、しばらくツイッターから離れます。皆さんも自分のことだけを考えてください。GOOD LUCK!
何故、このような発言に至ったのか、と、このきっこなる人物の発言を遡及すると、こういう発言があるわけだ:http://twitter.com/#!/kikko_no_blog/status/69403508377530369
東電が1号機だけでなく2号機も3号機もメルトダウンの可能性を認めました!東日本だけでなく、中部、近畿、関西も厳しい状況になりました。チェルノブイリを前提とすれば中国地方の島根県までアウトです。避難するなら海外か、国内の場合は九州を目指してください!うーん。まあ、建屋外の状況や汚染水の蓄積状況からみると、少なくとも3号機に関しては、1号機と同じような状況になっている可能性が高い、ということは、僕も前に書いた。しかし、今回の事故を、そのままチェルノブイリ原発事故と重ね合わせる、というのは、ちょっとそれは違うんだけどなあ、と思うわけだ。
チェルノブイリ原発で使用されていた原発がどういうものか、というのは、Wikipedia のエントリ「黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉」を御一読いただければ、概略はお分かりになるかと思う。この原子炉は、減速材である黒鉛のブロックを炉体として、燃料被覆体を更に被覆するように設けられた経路に水を流し、熱を取り出す構成になっている。この炉の運用において問題だったのは、この炉の安定性に重大な問題があった(簡単に言うと暴走し易い特性だったということ)と、いわゆる「封じ込め」が万全ではなかった、ということである。特に、この炉は炉の上方の封じ込めが万全でなく、その状態で爆発が起こったために、炉心が外界に完全に露出し、周辺には炉内の核燃料やプルトニウム、そして黒鉛ブロックの破片を中心とする、炉内の構成物が大量に飛散してしまったわけだ。
今回、炉心溶融で燃料棒がほぼ融け落ちている、というのは、格納容器に包まれた圧力容器の、その中での状態である。もちろん、圧力容器や格納容器の健全性は維持されていないことが分かっているわけだけど、チェルノブイリのときのような、炉内が外界に完全に開放された状態と比較すると、まだナンボもましな状態なのである。しかも、燃料の成れの果てである核物質は、今のところは少なくとも水に覆われている。水は汚染されるわけだけど、大気開放で塵が飛散している状態に比べれば、これもナンボもましな状態である。
前にも書いたけれど、これからこの福島第一の炉は、再臨界を起こさないように注意しながら、水による冷却を継続しなければならない。水が存在することは中性子が減速される、つまり臨界に至りやすい状況を作り出すけれど、冷却しなければ、更なる容器の破損を来すことが確実である。これはまさに無間地獄とでも言うような状態なわけだ。しかも、水を突っ込めば突っ込んだだけそれは汚染されて出てくる。どうにかして洩れは塞がなければならない。東電や政府が考えているような、コンクリートで埋めるようなことで漏水を阻止できるとは到底思えない。場合によっては、決死隊のような人達が内部で作業しなければならなくなるかもしれない。しかし、それでも、核物質の飛散という観点においては、これはチェルノブイリと同じ状態には程遠い。
東京の下水処理施設3か所の汚泥から、10万〜17万ベクレルという高濃度の放射性セシウムが検出されたというニュースも流れていて(http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011051301000689.html)、不安になるのも無理はないし、実際、健康面で今後問題が出ない保証はない。しかし、繰り返すけれど、今回の福島第一原発の状況を、そのままチェルノブイリの状況に重ねるのは、無意味な行為である。たとえば、今回の汚染範囲と汚染状況を、日本の地図にチェルノブイリの汚染マップをそのまま重ねて評価する、というのは、これは論理的根拠のない行為である。この点だけは、何が何でもはっきりさせておかなければならない。不用意なアジテーションで右往左往してはならないし、ましてやさせてはならないのである。
Re:きっこ、逐電?
池田先生は、経済や電波についてはかなりまともだと思うんですが、原発については「私は専門家ではない」と断りながら、専門家や理系の有識者を自分と意見が異なれば、ぶった切ると言うやり方に終始しているのが非常に滑稽ですね。「あれはガセ」「あれはオカルト」って・・・・・・・。じゃあんたが一番正しいのねって話しになっちゃいますよねえ。