下棒の付いた T
奥村氏の TeX Q & A で出ていた質問について。
質問者は、数式モードで \mathcal 字体を使いたいらしいのだが、調べているうちに、この字体の "T" に、下端に棒のあるものとないものがある、ということに気付いたらしい。以下にその二者を:
この違いは、実は Knuth が(彼の言うところによると、最後の)Computer Modern Fonts の改良をした結果である。詳細に関しては彼の書いた:
http://www-cs-faculty.stanford.edu/~knuth/cm.htmlおよびその試訳:
http://www.fugenji.org/~thomas/texlive-guide/knuth-message.htmlを御参照いただきたい。
TeX Q & A での質問者はあっさり引っこんでしまったようだけど、この筆記体大文字というのは、結構悩ましいところかもしれない。演算子等にこういう記号を使うときには、やはり好みを反映させたいだろうからだ。
実は、このような筆記体大文字のフォントを手近で探すと、Microsoft Office にバンドルされている Monotype Corsiva や、Mac OS にバンドルされている Apple Chancery(以前は dfont 形式のファイルしか入っていなかったようだが、10.6 と 10.7 では TrueType フォントが入っているのを確認済)を見つけることができる。そして、これらの T はいずれも下棒が付いているのである。
だから、TeX に対して原理主義的でないのならば、実はやり様があるはずなのだ。Knuth だって、あくまで Computer Modern Fonts の話をしているわけだし……しかし、この辺のフォローはなされているように思えないので、ここに書いておく次第である。