microSD 飛ぶ

昨日のことだった。shannon とタブレット端末を sftp で繋いでファイルを転送していたら、何やら転送に失敗したとのエラーメッセージが出ている。ん? とタブレットをチェックしたら……あれ、どうして microSD を認識していないんだ?

この microSD には、普段読む本(青空文庫形式のものも、PDF のものもある)や英辞郎の辞書ファイル等、日常生活でよく使うファイルが多数入っている。そういう用途で便利なように、わざわざ 32 GB の class 10 の microSD を買って使っているのだった。

ところが、その microSD カードが android に認識されていない。おかしいなあ、と、抜き出して shannon に挿してみたが、やはり認識しない。信じ難いのだけど、どうやらお亡くなりになったようなのだ。

所用で出かけようとしていたときのことだったので、あまりのことにちょっとパニくった。U に 2 GB の microSD を貸してもらい、英辞郎の辞書ファイルだけ突っ込んで、慌てて出かけたのだが、それにしてもなあ。トんだデータがイタいですよ、これは。

何が一番困るって、タブレット端末の OS を入れ替えるときに、オリジナルの状態のバックアップをこの microSD カードに取っていたのが消えてしまったことだ。もうこれで、タブレット端末はオリジナルの状態に戻せない……ということになる。まあ中古で売るようなことはないと思う(こういうものは使い潰すまで使うのが流儀なので)から、いらないと言えばいらないのかもしれないんだが、しかし、これには参った。

amazon の購入履歴をチェックすると、昨年の10月末に、2000 円でこのカードを購入している。今の相場も同じ位だが、定評のある SAMSUNG などの製品は 2500 円以上が相場のようだ。むー、やはり安物買いの……ということかなあ。

当面は U から借りたカードでしのごうと思っているのだが、まずはミニノートの購入の方を優先することにしよう。あー、しかし、あのデータがもう取り返せないのは、困ったなあ……

tar

tar というのは UNIX 関連の環境で使われるソフトで、複数のファイルをひとつのファイルに束ねたり、逆に束ねられたファイルをもとのファイル群に戻したりするのに使われる。ZIP や LHA のようなソフトとは異なり、本来の tar にはファイルを圧縮する機能はなかった。だから、外部のファイル圧縮ソフト…… compress や gzip, bzip2, xz 等……と組み合わせて使われる。

しかし、僕等が通常使っている GNU tar は、このような外部圧縮ソフトを内包したかたちになっている。たとえば、

$ tar cfJ ./hoge.tar.xz ./*.pdf
などのように、xz の機能を併用することを示す J オプションを付与すると、カレントディレクトリに存在する全ての PDF ファイルを束ねて xz で圧縮したアーカイブファイルが一発で生成される。同様に、
$ tar xfJ ./hoge.tar.xz
とやると、圧縮を復調した上で個々のファイルが一発で展開されるわけだ。

ところが、僕が気付かないうちに、このオプションが一部不要になったらしい。展開時には、

$ tar xf ./hoge.tar.xz
のように、J オプションがなくても、xz で圧縮されたアーカイブが一発で展開されるのだ。もちろん、他のファイル圧縮ツールのフォーマットでも同様である。

まあ、ファイルを展開するときには、暗黙のうちに「圧縮する前の状態」に展開することが一意的に定まっている、と見て良いだろうから、このようなことになったのだろう。しかし、正直言ってあまり便利だとは思えないんだが……これで問題が生じることもないかもしれないけれどさ。

鳴かぬなら

コンピュータに関わることで質問をされることがある。まあ、質問するからにはそれなりに困ったことがあって、それで聞いてきているのだろう、と仏心(カトリックで仏心というのも妙な話だが)で答えたりするのだけれど、どういう訳か、逆ギレとしか言いようのないことを言われたり、返されたりして、嫌な気分にさせられることが少なからずある。いっそ、そういう質問に答えるのも、質問が集まってくる場所を見ることも、やめてしまった方がいいかもしれない、と思うのだけど、中には本当に困っている人もいたりするので、完全に回答を放棄するわけにもいかない。

嫌な気分にさせられるのは、ほとんどの場合パターンが決まっている。僕はそういう質問者を「傲慢な質問者」と呼ぶことにしているのだけど、まず、そういう質問者は、何でどう困っているのかを最初に明示しない。たとえば、こんなことがしたいのですが、これこれこんなファイルをこういう OS 上のこのソフトで処理しようとしたら、意図と異なるこんな結果になりました、当初の目的を達するためにはどうしたら良いでしょうか……というようには、まず絶対に書いてこない。こうしようとしたらこうなった、どうしよう……それしか書かないのである。5W1H とか、最近は小学校でも教えるんだろうに、そういう教育を受けていても、もうそれは遠く忘却の彼方らしい。

そういう書き込みを見て、周囲の人々は、その人がどのように困っているのかを想像するしか術がない。せめて、そのトラブルが再現されるファイルなり、トラブルの結果として出力されるファイルなり、そのトラブルの模様を記録したログファイルなりを示してくれれば、そんなことで生じる無駄な手間も、無駄な時間も発生しないのである。しかし、傲慢な質問者は、自分がしたいことができない、それだけが全てなのである。

そして、隔靴掻痒の態で話が進まず、なかなか solution に到達できない、となると、傲慢な質問者は予想し難い反応を示す。「私の欲しい答をアンタラは提示できないのか」と逆ギレしてみたり、「ご意見を頂き、有り難うございました。****** はアンインストールし、使わないことに致します。」と逆ギレしてみたりするのである。「鳴かぬなら殺してしまへホトトギス」……いや、ちょっと違うな。信長はそんな馬鹿じゃなかったはずだ。

自分の欲しい答を得るために、いささかも自分の時間、手間、あるいは金をも費さず、挙句の果てにはそれを他人やソフトウェアのせいにする。いやはや、こんな傲慢さは、一体どうしたら持つことができるのだろう。僕もそういう傲慢さがあれば、気鬱に溜息をつくことなどなく、もっと楽に生きていけるのかもしれないけれど、もちろん僕はそんな傲慢さなど欲しくはない。そんな手合いは唾棄すべき輩としか言いようがないし、そんな輩になるなんて御免被る。

しかし、残念なことに、この10年程を考えてみても、この手の傲慢な質問者は増加する一方である。20年程昔の Linux 関連のコミュニティみたいに「タコは重要な存在だ」なんて牧歌的なことを言っていられた時代があったなんて、信じ難い状況である。あの頃、「タコはタコでなくなろうとしている」ということが暗黙の前提だったわけだけど、今のタコは、自分がタコであることを確信犯的に利用し、それで自らの権益を護っているとしか言い様がない。この「傲慢な馬鹿」の強みを利用する、ということが定着してしまった今、従来の voluntary な共同体で当たり前のように成立していた相互扶助は、もう成立し得ないのかもしれない。ああなるほど、だから iPhone も android も、バナーの出ないアプリが欲しかったら金を払うしかないような状況になって、しかも皆それが当たり前だと思っているわけか。

しかし、人がより良き存在になろうとする、ということこそが、共同体全体が緩慢であってもより良き方向に転がっていく上での driving force だったはずなのだ。それが忘れ去られてしまうのだとしたら、これから先の世の中は、どれ程住みにくく、生きにくくなるのだろうか。

どうしちゃったんだろう

先日のことである。出先で赤ペンを使っていたら、急に書けなくなった。あれれ、と思い芯を出してみると、綺麗さっぱりインクがない。ここまで綺麗に使い切ったことがなかったので、しばし唖然として眺めていたのだが、ああそうだ、この後も赤ペン使わなきゃならないんだった、と気付いた。この後他の場所に動く途中で買うことにしよう、と思って、ふと、その場所までの行程中文具店がひとつもないことを思い出した。うーん、どうしようか。

歩いていると、某大手コンビニが見えてきた。メントールキャンディも欲しかったし、そこで赤ペンを探してみると……おー、単色の赤ペンというのを、この店舗では置いていないらしい。参ったなあ……2色とか3色とかのボールペンを見ていると、このコンビニのブランドで出している3色ペンが目に留まったので、それを買うことにした。金280円也。

やがて到着した出先で、早速そのペンを使おうとしたのだが、この段になって、このペンに問題があることに気付いたのだった。芯か、芯を押し出すボタンのところかが擦れ合うようになっているらしく、そこで芯同士が引っかかってしまい、選んだ色のペン先が出てこない。先に出たままになっている前の色のペン先を何かに押し当てて無理矢理引っ込め、更に3つのボタンを半押しして位置を整えないと、次に選んだペン先が出てこないのである。

「…… Thomas さん、何やってるんですか?」
「いやあ、このペンがね……引っかかってねえ」

傍で見ている人には、僕が何に四苦八苦しているのか分からなかったろう。でも当の本人としては、軽いパニックだったのである。

帰ってから U とその話になったとき、

「それはちゃんと言った方がいいんじゃない?」

うーん、クレーマーみたいに思われるのも嫌だ……とも思ったのだが、勿論、こういうことは向こうさんに伝える方がいいのは明らかだろう。僕のように、このコンビニのブランド商品だから少し高いのを買ってみて、それで同じめに遭っている人が、おそらく全国で何千人とかのオーダーで出現する可能性だってあるわけで、それを未然に防げれば、僕だけでなく、このコンビニにとっても利益になるわけだろう。

改めて、このボールペンをよく見てみると、商品企画はこのコンビニ(以下Xと称す)、製造はこれも大手の筆記用具関連メーカー(以下Y社と称す)、生産は……タイで行われているらしい。うーむ。中華品質、なんて話は聞くことがあるけれど、タイやベトナムというのは、基本的にはこういうものの品質に関してそう悪い話は聞かないんだけどなあ。しかし、実際にやり直してみても、芯はやっぱり引っかかるわけで、とにかくこの商品に問題があるのは間違いない。

Xの web ページを見てみると、商品に関する問い合わせ等は web のフォームでのみ受け付けるようになっていて、郵送での窓口住所に関しては一切記述がない。ということは……どこに送るかね。Xの持株会社の大代表しか住所が分からないので、仕方がないからそこ宛に書状を送ることにする。

手紙を書いて、封筒にボールペンと共に入れて、切手を貼って投函すると、料金不足で返送されてきた。ボールペンの厚みで引っかかったらしい……舌打ちしながら、合計120円以上になるように切手を貼り足して、再びそれをポストに放り込んだ。昨日の夕方のことだ。

そして今日、いきなり電話がかかってきた。Xの商品担当の人だという。平身低頭謝られた後に、製造メーカーであるY社の担当にも電話させますがよろしいですか、と言う。大事になっちゃったなあ、と思いながらも了承すると、1時間程してから、Y社の担当者から電話がかかってきた。これまた平身低頭の態で、僕の方としても対応に困ってしまうような感じだったのだが、とりあえず、同じトラブルが複数起きているでしょうから、早々に対策をお願いします、後は書状でお願いしますね、とお願いして、電話を切ったのだった。

それにしても解せない。Y社といえば老舗だし、僕も今まで散々この会社の文房具を使ってきたけれど、こんな初歩的な問題でトラブルが生じた記憶は一度もないのだ。製造コストを削減するために海外生産にするのは仕方ないかもしれない。しかし、ひょっとしたら、先方に商品開発の実際の業務までやらせて、それをちょいとつまんで「よしよし」と自社ブランドで売る……そんなことでもしているのだろうか。

先日、テレビで、ある発展途上国に単身滞在しているパイロットの現地法人社長を取材したのを観たのだけれど、パイロットが彼の地で売っている主力商品のボールペンは、中国製の同等商品の数倍もするのだという。しかし、現地の学校などに行くと、生徒のほとんどがパイロットのボールペンを使っている。彼らは、決して豊かでない懐の中から、あれこれやりくりして、ようやくペンを買う。そのペンが簡単に使えなくなってしまっては困るのである。経済水準が低いからこそ、顧客は信頼性を求め、それに応えることでビジネスが成立する、というのである。

僕は、その国の子供達よりはまだ経済的に豊かなわけだけど、でも280円出して買ったペンが使えなかったときには、正直がっかりしたものだ。しかし、日本製品というものは、時としてオーバークオリティと言われる程に、十分な信頼性を有していたのではなかったのか。そうでなくなってしまったのだとしたら、そして世間がそれをよしとしてしまっているのだとしたら、この国の未来は、親から買ってもらったパイロットのペンを大事に大事に使っている子供達の国と比べて、どちらが明るいのだろうか。たかがボールペン、と言われるかもしれないが、そんなことを考えてしまったのだった。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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