[The について]
 最近、この "the" についての質問をいただくことがしばしばあります。これが 単なる質問やアドバイスだけならばまだ良いのですが、中には、

「大学院生とか言ってて英語もできない輩が……云々」

などという中傷のようなものまで眼にすることもあったりして、悲しい気分になる こともあります。
 そこで、この部分には、「なぜ僕が "the" と書いているのか」という理由と、 「native speaker の眼から見るとこの表現は間違いなのか?」という疑問について 在米日本人であるS氏から頂いた貴重な見解を HTML 化してリンクすることに しました。


「なぜ僕が "the" と書いているのか」

 そこここで書いているとおり、僕はいわゆる oldies と呼ばれる(主にアメリカの) 昔の音楽が大好きなのですが……

 その頃のコンサートというのには、必ず司会者、というか、今風に言うとMCと 言うべき存在の人が同行していました。最初、会場のステージにはこの司会者が 登場し、華々しくバンドやミュージシャンを紹介して、熱狂する観衆のただ中に くだんのミュージシャンが登場……というわけです。その時の台詞というのが…… 例えば、こんな感じなのです。

" Welcome to the stage, of ... THE BEACH BOYS ! "

どういうわけか、必ずといっていいほどに "the" を付けるのですよ。この言い回しは 僕にとって、あの時代の(今よりはメディアによる情報が少ないファンの、必死で、 ひたむきな)熱狂を想起させるキーワードの一つなのです。
 ここから、あのころのMCへのノスタルジーを込めて、the を付けているという わけです。


[native speaker の眼から見るとこの表現は間違いなのか?]

 この件に関して日記に書いたところ、それを読まれたS氏(アメリカ在住)から、 以下のようなメールを頂きました。S氏の許可を頂きましたので、ここに転載します。 尚、転載を快諾して下さったS氏に深く感謝致します。
Date: Mon, 14 Oct 1996 18:26:55 -0500
To: thomas@mat.eng.osaka-u.ac.jp

トーマスさん、はじめまして。

the Thomas Home Pageの「the」の使い方ですが、、

確かに少し変な気がします。でも、絶対に間違っているとも思いません。

結構難しいです。明日にでも、友達に意見を聞いてみます。

たとえば、文法的に考えたら、Thomas Ueda's Home Pageのような気がするし。 でも、これもいつも思うんですけど、もし、家てことで考えたら、外に、 「トーマスの家」とは書かないし、この辺もネットならではの疑問だとおもい ます。たとえば、ひっくり返して、Welcom to the Home Page of Thomas Ueda とは出来ないのかな、とも思います。

実生活として考えるのなら、

Tamotsu Thomas Ueda

Welcome to my home page.

だと思うのですけど、アメリカでも変な書き方をしている人もいます。


 この後、S氏は仲間の大学院生(アメリカ人の)にいろいろ聞いてみたのだそう で……
Date: Tue, 15 Oct 1996 23:33:29 -0500
To: Tamotsu Thomas UEDA
Subject: the Thomas Home Page=?ISO-2022-JP?B?GyRCJEskRCQkJEYhIjdrT0AhIxsoSg==?=

Sです。

大学院仲間と討論した結果をお知らせします(なかなか面白い議論でした、 ありがとうございます)。

まず、結論から言いますと、トーマスさんの使い方は間違っていません。

文法上、口語上の問題両方をふまえて議論してみました。

the Thomas Home

まず、どちらかと言えば、古い言い方と考えていいでしょう。実際に古い お屋敷などは、この使い方をすることもあるそうです。一般的に考えて、 大金持ちが死んでしまい、屋敷だけが残って使われている感じがする、 とのことでした。

たとえば、Smithさんだったら、

the Smith Home (House)

というわけです。

ですから、この使い方をした場合、あくまでも、名前は知っているが、知り合い ではない印象を受けるそうです。しかし、場所の名称としては、十分考えられる、 とのことでした。

そして、インターネットですから、どの使い方が正しいかというのはなんとも 言えないとの結論になりました。基本的に文法的には間違っていないそうです。

ということで、解釈としては、ノスタルジーとしてもとれると思います。

たとえば、

I have to go to the Thomas Home.

なんて言われたら、英国人かと思ってしまいます(笑)。

あと、考えられるパターンとしては、

the Home Page of Thomas (書き言葉的)
Thomas's Home Page (一般的な口語的使い方、書き言葉としても一応 大丈夫)
Thomas's (とても、口語的)

などです。

余談ですが、僕が、知り合いの家族全員に向けて手紙を書くときは、

the Ueda family

と宛名を書きます。

これで、上田さんが、少しすっきりすれば良いのですが。

僕は、この問題が、前から気になっていたので、すっきりしました。

一応、解釈は、あくまでもアメリカ的なことを記しておきます(笑)。

では、


……ということで、僕がイメージしていた「やや時代がかった」表現として アメリカ人もこの表現を認識する、らしい、という結論に達しました。尚、 この件に関しましては、皆さんの御意見、感想をお待ちしております。
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