先日行った耳鼻咽喉科は、今いる場所のすぐ近くなのだけど、この医院は U にはすこぶる不評である。
「……あんなところ、もう二度と行かない」
まあ U の言いたいことは分かる。昔寮で一緒にいた医学部の男に聞いたことがあるのだけど、耳鼻咽喉科・産婦人科・皮膚科は「汚い」モノを扱うということで嫌う人というのがいるらしい。そういう風に扱われる患者の側になったら、汚物のように扱われるのは耐え難い。
実は、昨日の朝に服用した分で抗生物質を飲み切った。ということは、一度医師のチェックを受けておく必要がある、ということなのだが、また問答もなしに鼻にファイバースコープ、では、これはチェックにはならない。せめて扁桃腺周辺の状況や、鼻腔内の状況をちゃんと診てもらえるところに行くべきだろう。
ということで、初診料を払い直すリスクを承知で、違う耳鼻咽喉科の医院に受診することにした。U 御推薦のその医院は、歩いて数分の雑居ビルの一番奥にあった。
ここのドクターは初老(これを読んで U 曰く:あれぁどう見ても70いってると思うんだけど?)の男性だったが、喉を一目診るなり、
「あーこれは洗おう。はい、この膿盆持って口の下で受けて」
で、薬液で扁桃腺を洗う。次いで、鼻腔を覗き込むや、
「あー、君、鼻中隔が湾曲してるなあ」
そして、来歴を話した僕に、
「はーそうかー。いきなりファイバースコープ突っ込まれたのかー。いや、うちにもあるけどね、ファイバースコープ」
見るとちゃんと横の支柱に、すぐ使えるようにかけてある。
「しかし、これ診るのに、ファイバースコープは要らんと思うけどなあ」
と言うと、ドクター、ニヤリと笑って、
「金ばっかり取られちゃうよなぁ」
よく分かっていらっしゃる。
結局、チェックしてもらった結果、喉の炎症はもう峠を越えているので、うがいをマメにやってトローチでもなめときなさい、うちは抗生物質は出さんよ、ああそうそう、うがい薬は出しとこうか……で、鼻と喉の吸入をして終了。料金は初診料込みで前回の数分の一である。うーむ。こうも違うものか。
長い間苦しめられた微熱・喉の痛み・咳であったが、耳鼻咽喉科に受診してからは驚く程に軽快した。まだ多少咳が出る(→鼻漏がある→化膿が全快していない?)ものの、熱や炎症はすっかりひいた。
咳とともに、緑色で2、3 mm 程の大きさの粘液の塊が集まったような痰が出ていたのだが、これはおそらく鼻漏で喉に落ちた膿なのだろうと思う。緑色の膿、というと、反射的に連想するのが緑膿菌なのだけど、まあ他にも考えられる原因はいくつもある。ざっと挙げると、
……と、まあ色々ある。
長野・上田市にある住吉耳鼻咽喉科医院のページでは、これらの問題に関して実践的な情報を提供している。で……このサイトでは、「第3回耳鼻咽喉科領域感染症臨床分離菌全国サーベイランス結果報告よりMIC90を掲載 (2003年1月〜5月)」という表で、上に書いたような菌に対する各種抗菌剤のいわゆる抗菌スペクトルを示している。これを見ると……僕が最初に処方されていたフロモックスは、緑膿菌に対して「無効」、とある。
フロモックスとクラビットを比較すると……溶連菌や肺炎球菌に対してはフロモックスも十分高い効果が期待できるようだが、メシチリン感受性のある黄色ブドウ球菌とインフルエンザ菌に対しては効果は低く、悪名高き MRSA に関しても極めて効果が低い。そして、緑膿菌に対しては無効である。これに対してクラビットは、溶連菌や肺炎球菌に対して効果が低く、MRSA に対しては極めて効果が低いのに対し、メシチリン感受性のある黄色ブドウ球菌とインフルエンザ菌、そして緑膿菌に対しては高い効果を発揮する。先の痰の様子に加えて、この比較から、今回僕が感染したのが緑膿菌である可能性が高い、と推測されるわけだ。
それにしても、やはりこういう選択は、専門科のドクターと十分なコミュニケーションをとりながら行われなければならないのだ、ということを今回痛感させられた。だって、これこの通り、文書にある通りの状況を体験したのだから。
数日間、抗生剤を服用したのだけど、状況は全く改善しない。それどころか、喉の奥に痰が下りてきて、去痰のために咳をすることばかりが多くなり、喉の炎症がハンパではない状態になってきた。嚥下の際の痛みだけではなく、昨夜など、喉の狭窄から息が苦しくなった位である。仕事の後、家でぜぇぜぇ言いながら、これはもう耳鼻咽喉科に受診するしかない、と腹を括った。
で、今日の朝九時。近所の耳鼻咽喉科に保険証を持って訪れた。現在の服薬状況等を書いて下さい、と問診票を渡されたのにごちゃごちゃ書き、呼ばれて行ってみると、ドクター(この耳鼻咽喉科はアレルギー外来に力を注いでいて、僕のような本来の耳鼻咽喉科の患者には?マークが浮かぶことが多いのだが)が、
「咳とかは?」
で、先のような状況を説明し、これは膿が喉の奥に下りてきているのではないか、という話をしたところ、
「はい、力抜いて、そこのモニター見てて下さいね」
と、いきなり鼻にファイバースコープを突っ込まれた。まあどうせこういう展開になるんだろう、と思っていたけれど、鼻にファイバースコープを突っ込まれながらモニターを見るのは、これは結構難しい。
「はい、これ喉の奥ですね。鼻腔の奥から膿が下りて喉のここにありますね。これ声帯です。ちょっと裏声で『あー』って言ってみて下さい」
あー。と言うと「はい結構です。なんか非常に上手いですね」まあそりゃファルセットで歌うことがありますからね。ということで、喉の吸入2種類、鼻への吸入、副鼻腔のレントゲン撮影、それにクラビット錠 500 mg(巨大な錠剤である……やはりニューキノロン系をがっつり使う必要があるらしい)等の処方……等々で、所要費用約5000円也。はぁ。
微熱とは言っても、まだ37度以上熱があるわけで、某医者のところに行って相談すると、
「風邪ですか?あーじゃぁ PL とフロモックス出しときましょう」
毎度のことだけど、いいのかなあ、こんな安易に処方してもらって。いや、まあ、それを僕の方でも利用しているわけだけど。普段は風邪のときには抗生物質の服用には熱心ではないのだが、今回は鼻と喉の粘膜をすっかりやられてしまっているので、フロモックスは有り難い。ということで、薬を貰って家に戻る。
皆さんも御経験のおありのことだとは思うのだが、こういうときってどうも中途半端でいけない。一応床は上げたのだけど、しんどくって横になる時間が多くて、こうして書きものをしていると、厭な汗がじわじわ出てくるし。本当に、風邪というのは厭なものだ。
さっき夕食を食べ終わったところなのだけど、また熱が上がってきた。一時は36度台になっていたのが、また微熱状態である。しんどい。やはり耳鼻咽喉科に行くべきだったか。