ニコ生動物虐待事件

昨夜、久しぶりにニコニコ動画を覗いていたら、「ニコ生で動物虐待」というタイトルの動画が再生件数トップになっていた。ん?何が起きたんだ?と、検索をしながらつらつらとその動画を見たところ、どうもこういうことらしい。

まず「ニコ動は分かるけどニコ生って何よ」という話になりそうなので、その説明から。ニコニコ動画では、ユーザ登録をしている人に対して30分の「生放送枠」というのを提供している。これは、ユーザ側のオーディオとカメラのデータをAdobe Flash Media Encoder経由でニコニコ動画のストリームサーバに送って、そこ経由で大規模配信を行える、というサービスで、プレミアム会員(月額使用料を払っているユーザ)になれば、誰でも30分枠の「生放送」(ニコニコ動画経由でのストリーミング」が行えるというものである。僕はこのサービスを知らなかった(個人の生放送なんて観る暇がないので)のだけど、この生放送、実はかなり人気のあるものらしい。

で、10代の女性が、このサービスを利用して自宅から生放送をしていたらしい。その内容を記録したものが以下の通りだ:

注:文字は消して観ていただいた方がいいだろう……生放送配信時につけられたコメントは画像と一緒に記録されている。ニコ動ユーザの方はタイムシフトストリーミングが以下の URL で観られるので、ご参考まで:http://live.nicovideo.jp/watch/lv17839408

で、だ。この「五郎」と名乗っている女性の言動、特に彼女のペットらしいミニチュアダックスフントに対する扱いの酷さに不快感を感じた人々が、上のような糾弾動画を配信し、さらには2ちゃんねるでもこの件を糾弾するスレッドが立ち、経過をまとめたウィキが公開されている。このウィキから辿ると、驚くべきことに、五郎なる女性の:

  • 氏名
  • 生年月日
  • 血液型
  • 未成年なのに喫煙癖があること
  • 住所
  • 通っていた都内の高校名
  • その高校を中退していること
が特定され、公開されてしまっている。剛の者に至っては、その高校に電話して現在の状況確認をする人まで現れた:

まあ、毎度おなじみの2ちゃん丸裸現象というのは、やりすぎだとは思うけれど、でもこの「五郎」なる女性のペットの犬の扱い方、言動等を見ているに、こちらの方もやはり問題があると言わざるを得まい。ネット上で何かを公開するということは、自分を特定できる情報の断片を与えていることと同意なので、こういうことになってしまうんだけどなあ……

あって当然と思っていたものが

4月2日の日記に書いたように、ここしばらくの間は XFS ベースのシステムを使っていたのだけど、大きなファイル操作をしているときに background で仕事をしていると重くて重くて仕方がない。まあ覚書とかで、システムの復旧にそう手間がかからない状態なので、今日の空いた時間を使って、エイヤっと ext4 上に再度システムを構築し直した。

こういうときは、squeeze/sid のインストールイメージを取ってきて netinst するのだけど、最小限のシステムから必要なものを足しつつ、いつも使うツールを make していたときにふと気付いた……おいおい、default で ed って入らないの?

ed と言っても、普通の方にはお分かりいただけないかもしれない。僕も、直接使う機会はなかなかないのだけど、ed というのは「ラインエディタ」と言われるエディタである。現在のシステムに慣れた方は、エディタというと、Windows の notepad(いわゆる「メモ帳」)とかのように、あるウインドウの中に文書が展開されていて、好きな場所を好きなように編集できるものを想像されると思うのだけど、このようなエディタ以前に、いくつかのエディタの形式があったわけだ。ed はそのひとつである。

MS-DOS の時代にコンピュータを使い始められた方は、VZ エディタとか MIFES とかいう名前を御記憶の方もおられるかもしれない。これらは、GUI ではない DOS のコマンド画面上に文書を展開し、好きな場所を好きなように編集できるエディタである。こういうエディタを、スクリーンエディタと言うのだけど、これの登場以前にもエディタは存在した。その頃は、画面全体を使う利便性より、それに要するディスクやメモリの余裕がなかったり、あるいはダム端末などの、一画面の書き換えに時間や操作が必要な端末だったりしたために、画面の書き換えを最小限度に抑えて文書編集ができる方が優先された時代である。

僕が MS-DOS 上で最初に使ったエディタが、まさにこれだった。EDLIN と言うのだが……おそらくご存知の方はかなりの少数派だと思う。これは、1行単位で文書を展開し、修正し、保存する……その繰り返しで文書を編集するというエディタだった。VZ を入手するまでの何日か、僕はこれで泣きそうな気分で FORTRAN のソースを書いたりしていたのだった。DOS の標準エディタはこの EDLIN なのだけど、UNIX の標準エディタとして実装されたのが、先の ed である。

もちろん、このご時世には、ed をリアルタイムの文書編集に使うことはほぼ皆無である。システムに深刻なトラブルが生じたときのために、一応僕も使い方は覚えているけれど、これでソースや blog を書く気にはとうていなれそうもない。僕は UN*X 系のシステムの管理を行うときには vi を使うことが多いけれど、最近では vi を使えない UN*X ユーザも多いらしい。僕が UNIX を使い出した頃には、vi なんてライブラリのリンク次第でいつでも使えなくなる可能性があるんだから、admin は echo と ed で非常時を乗り切れなければダメだ、なんて話があったんだけど……

まあ、そういう話は大袈裟かもしれないけれど、でも ed がないのは困る。何故かというと、shell script でファイルの処理を行うときに、script から呼び出して使うことがあるからだ。今日の場合は、upTeX のインストールをしようとしていたら、妙なスクリプトエラーが出て、ん?あーこれ ed 入ってないじゃん、と気付いたのであった。しかし……要するに、ed がなくても困らないということは、shell script 使えなくても問題ないってこと?あーなるほど、自分で make とかしない UN*X ユーザってのが存在するわけか……しかし、じゃあ何が楽しくて UN*X 使ってるんだろう。不思議な話である。

児童ポルノ制限を考える

老婆心ながら、一応書いておくけれど、児童ポルノに関しては僕は当然規制の対象にされるべきものだと認識している。ただし、このひと月程の間に、特に原口総務相と警視庁、そして警察庁が打ち出している児童ポルノ制限策に関しては、正直言って有効策でないばかりか、憲法をおかすものだとしか言いようがない。

児童ポルノ:遮断「可能」−−原口総務相

 原口一博総務相は16日の閣議後会見で、インターネット上の児童ポルノ流通防止対策として導入を検討している、問題サイトへのアクセスをプロバイダー事業者が強制的に遮断するブロッキングについて、刑法で違法性を問わないと定める「緊急避難(としてなら可能だ)」との考えを示した。総務相が自身の見解を表明するのは初めてで、ブロッキング実施は確実な情勢となった。

 ただし、警察庁などからは、緊急避難としての整理では、ブロッキングできる範囲が極めて限定的との指摘も出ている。今後、政府の犯罪対策閣僚会議に設けられた児童ポルノ排除対策ワーキングチームで詰めの作業が行われる見通しだ。

 「通信の秘密」は憲法が保障し、電気通信事業法も、通信事業者に順守を義務づけている。原口総務相は、ブロッキングは「通信の秘密」を侵害するが、緊急避難なら可能との認識を示した。警察庁の有識者会議も先月、通信の秘密の侵害については同様の見解をまとめているが、違法性を免れる根拠について、警察庁側はより広いブロッキングが可能な「正当業務行為」と位置づけたい意向だ。

 この点について、原口総務相は「正当業務行為と言い切るには、通信の秘密は重い」と発言。警察庁との考え方には開きがあることも明らかにした。【望月麻紀】

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100416dde007010027000c.html

話がきな臭くなってきたのは、おそらくこの辺からだろう。で、

児童ポルノ紹介も「有害」…警視庁、誘導サイト削除要請へ

 インターネット上で児童ポルノサイトを紹介している「ランキングサイト」が児童ポルノの温床となっているとして、警視庁は30日にも、サイト管理会社4社に削除要請を行う。

 ランキングサイト自体には違法画像は掲載されていないが、リンクによって誘導されるサイトに約3万点の児童ポルノ画像が掲載されており、「有害サイト」と判断した。

 児童ポルノに絡み、警察当局がランキングサイトに削除要請するのは初めて。誘導先の違法サイトについても、順次、児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑などで摘発していく方針。

 削除要請の対象は、東京、神奈川、兵庫に本社のあるサイト管理会社4社が設置する14のランキングサイト。計835の児童ポルノサイトのタイトルが張り付けられ、クリックするとそのサイトに誘導される。誘導先には、小学生以下とみられる児童の無修整画像が少なくとも計1万4500点、中学生や高校生とみられる画像も計約1万4000点が掲載されていた。

 同庁では、今後も有害なサイトを確認し次第、削除要請を続ける方針。

児童ポルノ氾濫、歯止め効かず

 警視庁がランキングサイトの削除要請に踏み切る背景には、インターネット上の児童ポルノの氾濫(はんらん)に歯止めがかからない現状がある。

 1996年の国際会議で「児童ポルノ天国」と名指しで批判された日本が、児童買春・児童ポルノ禁止法を施行したのはその3年後。以後、児童ポルノの摘発件数は増え続けている。2009年の全国の摘発件数は00年の5倍以上の935件に上った。だが、その半数以上の507件はネット上に流れていたことも確認されている。いくら摘発しても、一度ネットに流れた画像は何度もコピーされ、完全に消し去ることは不可能だ。

 プロバイダー(ネット接続業者)の段階で有害サイト閲覧を強制的に遮断する「ブロッキング」という手法も検討されているが、総務省は「通信の秘密の侵害にあたる」との見解を崩していない。被害児童の苦しみを減らすために何をすべきか。それを最優先に対策を講じるべきだ。(ネット問題取材班)

(2010年4月30日 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/net/news/20100430-OYT8T00347.htm

というニュースが流れて、きな臭さはますます増した。前者に関しては、

児童ポルノサイトにブロッキングを〜総務相


< 2010年5月3日 12:33 >

 アメリカ・ワシントンを訪問中の原口総務相は現地時間2日夜、同行記者団と懇談し、インターネットでの児童ポルノサイトへの「ブロッキング」を、今年度から実施したいとの考えを示した。

 ブロッキングは、インターネットでの児童ポルノ対策として、接続業者側がサイトへのアクセスを強制遮断するもの。原口総務相はブロッキングが児童ポルノの根絶に有効な手段であると判断し、今月18日に開かれる総務省の研究会に、「通信の秘密」「表現の自由」を侵害しない形での指針作りを急ぐよう指示する方針。

 原口総務相としてはこの指針を犯罪対策閣僚会議に諮った上で、今年6月をメドにまとめる政府の児童ポルノ総合対策に盛り込みたい考え。

http://news24.jp/articles/2010/05/03/04158491.html

とダメ押しの発言が出た。ますますきな臭い。

さて、僕が何を問題にしているか、という話をしていこうか。まず、有害情報発信を抑制するためにプロバイダにブロッキングさせる、という話になっているわけだけど、これは有効な抑制策としては機能しない。その理由を書かなければならないことが既に苦痛なのだけど、有害情報を発信するサイトがあったとして、その情報が web で発信されていたとしても、そのサーバが日本に置かれているという保証はないし、日本の国内法が及ぶ範囲内に経営母体がある保証もない。network reachable な国なんてのは山のようにあって、そのほとんどの国にはレンタルサーバの業者がある。その多くは、英語でサーバのレンタルの手続きが可能だ。

その好例が2ちゃんねるである。先のバンクーバーオリンピックのときに2ちゃんねるのサーバが攻撃されて、そのときに大々的に報道されたのでご存知の方も多いだろうけれど、2ちゃんねるのサーバがあるのはアメリカである。日本のサイトのサーバだから、とろくに考えもせずに攻撃を行った韓国の悪しきネチズンが、FBIから訴追されるんじゃないか、と大騒ぎした、というのは記憶に新しいところだけど、この例でもわかるように、日本国内で流通している悪しき情報を取り締まるのに、日本国内のプロバイダにどうこうさせる、という事自体、無意味だとしか言いようがない(誤解なきよう追記するけれど、2ちゃんねるが悪しきサイトだと言いたいわけではない……あくまで日本でよく知られたサイトで海外にサーバがある一例として言及しただけなのでねんのため)。勿論、児童ポルノに関しては欧米は日本よりはるかに厳しい態度で臨んでいるので、欧米にサーバがあったって特に問題にはならないわけだけれど、法規制がまだ充実していない国に仮にサーバを置かれた場合どうするのか。国内からそのサイトへのアクセスをブロックする、などという話になったら、恐ろしい限りだ。これは中国が金盾で行っていることと、何の違いがあるというのだろうか。

おそらく、児童ポルノ関連の情報が流れるのは、web と、BitTorrent・Winny・Share などのいわゆる P2P がメインだろうと思うけれど、分散ファイル共有である P2P の一元的ブロッキングというのは、これはもはや不可能に近い。一番現実的なのは、データを共有している個人を特定して摘発することだけど、要するにこれがうまくいっていないから、こんなブロッキング云々という話が出てくるのではないだろうか。P2P を問答無用で取り締まられると、例えば僕のように Linux 関連のダウンロードに BitTorrent を使用している人間が著しい不利益を被ることになるのだけど。

そもそも、仮にブロッキングが行われるとしたら、一体誰がその責任を負うのか。現時点では、警察がプロバイダにブロック要請を出し、プロバイダがそれに応ずるというかたちでブロッキングが行われることになっているけれど、要請は命令ではないわけで、要請が真の意味での「要請」である限り、ブロックした責任はプロバイダにある、ということになる。しかし、この場合の「要請」というのは、オカミの「命令」に限りなく近いわけで、その場合、責任は誰が負うのか、実にいい加減な話だとしか言いようがない。

しかも、ブロッキングが「緊急避難」とはあまりに暴論に過ぎる。緊急避難というのは恒常的に行われないからこそ緊急避難なのであって、一度や二度では済みそうにないブロッキングを、緊急避難というワイルドカードで片付けようなどとは、政治家としてはあまりに低級な発想だと言わざるをえない。おまけに、hyperlink まで取り締まろう、というのは、もう10年以上前に大きな議論を呼んだ問題であって、また同じ過ちを繰り返すなぞ、お話にならないのである。

ちなみに、この話と一緒に、原口総務相は「消防庁はツイッターを有効活用せよ」と宣ったとか。へー日本はいつから国民皆スマートフォンユーザーになったんですかね。しかもツイッターですよ。一私企業、それも外国の私企業に災害インフラを依存する、なんて、どういう発想だよ。いや本当、馬鹿もここまでくると、こうやって言及すること自体苦痛になってくるけれど、それでもこうやって書かないと同じ馬鹿が踊るだけだからねえ……

復活

先程プロバイダから替えのモデムが送られてきた。ほー最近のは有線・無線兼用(当然だけど無線 LAN は使用しない)で、おまけに 26M 対応……まあ、ADSL の最終形なんでしょうね。接続してゲートウェイの設定をちょこちょこいじって(デフォルトの管理パスワードなんて怖くてとてもじゃないけどそのままになんかしておけませんよ)、再接続処理をして1分で安全な接続完了。いや、安定している。

それにしても、連休前にこうなったのはむしろ幸いなのかもしれない。連休中にこうなっていたら、書きものに多大なる支障が出ていたに違いないし。ということで、まずはご報告まで。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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