mixi の DTM 関連のトピックで、ギター弾きなんだけどどうやったら録音できるの?みたいな質問があって、その人は frieve.com で公開されているシェアウェアの DAW (Digital Audio Workstation ……要するに DTM 用ソフト)を使い始めている、ということだった。で、よせばいいのに見ていたら、さも訳知り顔で「そのソフトはだめだからこれこれを使いなさい」みたいな誘導発言があったので、「そういう問題じゃないだろヴォケ」と書き込んでしまった。というのも、frieve.com で公開されているオーディオ関連ソフトは安い share fee の割りに音質がいいので、こんな放言で評価されたんじゃ作っている人の苦労が報われない、という義憤にかられたのである。
で、お定まりのように場が荒れていったのだが、まあこれぁ原点回帰するしかないだろう、じゃあギターと PC だけでどんな風に録れるのか、ということで、ちょろちょろっとドラムだけ打ち込んで、ジャズベ・テレキャス・ストラトだけで音を重ねたらどうなるか、しかも特にエフェクトを使わないでやったらどうなるか、というのを試してみることにした。それが、これだ:
http://www.fugenji.org/~thomas/music/20091118.mp3
- 使用楽器:Fender Jazz Bass、Fender Telecaster、Fender Stratocaster(面倒なのでこう書いたけど、実は Tokai のストラトに GOTOH シングルコイルを載せたもの)
- 録音経路:楽器→真空管プリ(SansAmp のようなものです)→ DAW
- オーディオインターフェイス:TASCAM US-428(年代ものの USB インターフェイスです)
- DAW・音源:Cubase Studio 4 + XLN Audio Addictive Drums
- PC:Dell Inspiron 1501 / Mem 4G / Windows Vista Home 64bit
ベースとリードギターのみ DYNACOMP を挟んでいる。ベースは EQ で下を持ち上げているが、他は EQ すらかけていない。WAV 形式のファイルに落としてから、フリーウェアの Audacity というソフトでトータルコンプとリミッタをかけて MP3 エンコードした。所要時間は30分程度。まぁ、ざくっと録ってこの程度はできるんだよな。ギタリストにはこういうことがちょこちょこっとできるのはやはり魅力的なのである。
……と言うと、あらぬ誤解を受けて生暖かい目で見られる。これはきっとベーシストの受難に違いない。
実は久しぶりにスラップのメカニカルトレーニングをやっていたのだけど、これを怠っていると、右手の上腕部、親指に近い方の筋肉に無用な力が入ってしまう。それでこんなことになっているのだった。うう。こうやってキーボードを叩くのも結構辛い。
こんなトレーニングをしているということは、久しぶりにレコーディングを再開するから、というのもあったりする。で、その曲が(おそらく自分で書くのは初めてかもしれない)三拍子の曲なので、三連系のスラップ(t t p t t p とか td tu td p td tu とか)を延々やっていたら、腕がこんなにパンパンになってしまったのだった。これは無理な力が入っている証拠で、ある程度腕をこうやって疲れさせないとその力が抜けない。こういう愚直なトレーニングってやはり大切なんだと思い知らされる。
もともと僕はギタリストではない。ないのだが、必要上弾くことが求められるし、弾く以上はちゃんと弾きたい。
先日の加藤和彦氏の死去で、メディアは主に彼がフォークミュージックの舞台で残した作品を流している。で……『あのすばらしい愛をもう一度』を聴く度に、僕は猛烈なコンプレックスに襲われるのだ。僕はああいうスリーフィンガーができないので。
スリーフィンガーというのは、その名前の通り、三本の指でギターを演奏する方法だ。親指が和音の根音を弾いて、それを鳴らしながら親指・人差し指・中指でアルペジオ(分散和音)を弾くのだけれど、僕は高校時代にこれの習得に一度挫折している。当時、僕のギターに関する相談に乗ってくれていた某先輩は、
「できないんだったら、フォーフィンガーで弾けば楽だぞ」
「フォー、ですか?ということは……薬指も?」
「そうそう。親指はベースノート(和音の根音)専門にしてやりゃいいんだよ。俺も最初はそうしてた」
と言われてやってみるのだが、どうもこれがうまくいかない。そのうちベースのスラップの練習の方に逃げてしまって、結局身に付かなかった。
もうこれは、怠慢としか言いようがない。だって、あの呑んだくれとして有名だった高田渡氏も、べろべろに酔っ払っててもちゃんとスリーフィンガーで弾いてたし、森山良子氏や加藤登紀子氏も、ギター一本でちゃんとスリーフィンガーで弾き語る。この世代の人に恐る恐る聞くと、皆こう言う:「えぇ?嘘ぉ?基本じゃない?」
かくして僕は、四畳半フォークを嫌悪しつつ、それ以前のプロテストフォークの世代の人々に強烈なコンプレックスを抱えたまま今に至っている。桑田佳祐氏は僕同様スリーフィンガーができないのだそうだが、彼はそのコンプレックスをボトルネックに昇華させた(いや、実際桑田氏のスライドって巧いんですよ)。翻って僕は……うーん。
かくして僕のコンプレックスはますます深くなっていくのであった。
この何週間か、手元の端末の環境整備やら何やらで、自分の MySpace のアカウント宛のメールをちゃんとチェックせずにいたのだが、今日久々にチェックしたところが、アメリカの某インディーズから「コンピに曲入れない?」という話が来ていた。"Gone Up In The Haze" という曲を気に入ってくれていたらしいのだが、ごめんなさい!完全にシカトしてしまいました!ぅぅぅ
しかし、この手の話(仕事でも趣味でもそうなのだけど)は、どういうわけかいつでも大概日本人より先に外国人からオファーが来るのだが、どうしてだろう。やはり、この国は黒船が来ないと何も変わらないのだろうか……