『誰も……』問題は続く

『誰も教えてくれない聖書の読み方』なのだけど、昨日ようやくイギリスから原著の "Ken's Guide to the Bible" が届いた。で、昨日と今日のわずかな時間でざざーっと読んでみたのだけど……山形さん、かなり抜けがありますぜ、これぁ。せっかくケンが書いているのに、訳本に出てこない引用部がいくつもある。これに関してはこちらで訳して、今書いている document に追加する予定。

ちなみに、抜けている部分の一例:

神さまは罪人を飢えさせ、彼らが子供を食べるのを楽しむんだって。
あなたは敵に包囲され、追いつめられた困窮のゆえに、あなたの神、主が与えられた、あなたの身から生まれた子、息子、娘らの肉をさえ食べるようになる。あなたのうちで実に大切に扱われ、ぜいたくに過ごしてきた男が、自分の兄弟、愛する妻、生き残った子らに対して物惜しみをし、その中のだれにも自分の子の肉を与えず、残らず食べてしまう。あなたのすべての町が敵に包囲され、追いつめられた困窮のゆえである。あなたのうちで大切に扱われ、ぜいたくに過ごしてきた淑女で、あまりぜいたくに過ごし、大切に扱われたため、足の裏を地に付けようともしなかった者でさえ、愛する夫や息子、娘に対して物惜しみをし、自分の足の間から出る後産や自分の産んだ子供を、欠乏の極みにひそかに食べる。あなたの町が敵に包囲され、追いつめられた困窮のゆえである。
申命記 28:53-57

あと、これも訳本には出てこないのだけど、巻末に "Ken's Concordances" として、以下の補節が付いているのが笑える。山形氏はどうしてこれを割愛してしまったのだろうか?

  • Bible Sex Concordance(聖書セックス索引)
  • Bonus Anti-Abortionist Horror Concordance(おまけの中絶反対論者恐怖索引)
    • References to Pregnant Women Being Ripped Open(切り開かれた妊婦)
    • References to Children Being Murdered(殺された小児)

要するに、ケンは山形氏が訳している日本語から想像する以上にファンダメンタリストに皮肉っているということですな。

『誰も教えてくれない聖書の読み方』正誤表(私家版)

pp.55:
「アーロンの代用息子の一人エレアザルが」→「アーロンの孫(代用息子の一人エレアザルの子)ピネハスが」(原著段階での間違い)
pp.55:
脚註「……で、近くの街の人がやってきて」 →「イスラエル人が宿営していたモアブの王バラクが」
pp.59:
原著 pp.37 の4番目が引用されていない
(試訳)神さまは罪人を飢えさせ、彼らが子供を食べるのを楽しむんだって。 ―― 申命記 28:53-57
pp.62:
「犬のように舌で水をなめる者」→「水を手にすくってすすった者」
この箇所に関する記述は原著にはない。
pp.67:
末尾 サムエル記上 11:5-7 → 同 7:10(原著は 7:10 になっている)
pp.67:
原著 pp.42 4番目に相当する訳文なし
(試訳)はじめて神に油注がれたイスラエルの王であるサウルは、イスラエルの民の牛を 皆殺しにすると脅すと、彼らが自分に従って戦ってくれるということを証明したんだ。 ―― サムエル記上 11:5-7
pp.69:
ダビデがゴリアテを殺すくだり:訳はケンの記述に忠実だが、これはケンの勘違いでは?該当箇所の欽定訳からの引用:
And David put his hand in his bag, and took thence a stone, and slang it, and smote the Philistine in his forehead, that the stone sunk into his forehead; and he fell upon his face to the earth. So David prevailed over the Philistine with a sling and with a stone, and smote the Philistine, and slew him; but there was no sword in the hand of David. Therefore David ran, and stood upon the Philistine, and took his sword, and drew it out of the sheath thereof, and slew him, and cut off his head therewith. And when the Philistines saw their champion was dead, they fled.
これでも、石で打ち殺した後に、自らは武器を帯びていないのでゴリアテの剣で首を切り落としたことになっている。
pp.69:
末尾本文・脚註:ペリシテ人を殺した人数は日本語の聖書だけではなく欽定訳でも200人。100人という人数はどこから?
pp.84:
歴代誌下 26:16 → 歴代誌下 26:16-21(原著でこうなっているのを確認済)
pp.101:
イザヤ 34:2-3 と イザヤ 26:19 の間にあった引用が削除されている:
(試訳)エジプトに対する悲観的な預言をドラマティックなものにするために、神さまはイザヤを裸で三年間歩かせる。 ――イザヤ 20:2-4
pp.102:
イザヤ 49:14-15→原著にない引用
pp.123:
ゼパニヤ書の二つの引用箇所の間にあった引用箇所が削除されている:
(試訳……訳文は新共同訳聖書による)その日は憤りの日……わたしは人々を苦しみに遭わせ……彼らの血は塵のようにはらわたは糞(ふん)のようにまき散らされる。 ―― セファニヤ 1:15-17
pp.139-140:
「無原罪の御宿り」がクレアヴォーのベルナールによるものとあるがこれは間違い。ベルナールは反スコラ派の宗教学者で、むしろ「無原罪の御宿り」という概念に反対する立場にあり、ここに挙げるならばヨハネス・ドゥンス・スコトゥスが適切(これに関してはケンの記述の段階からこうだったことを確認済)。
pp.156:
ルカ 8:28-34 → 同 8:43-46(原著ではこうなっている)
pp.167:
ヨハネ 28-30 → ヨハネ 19:28-30(原著の段階で抜けていたのを確認済)
pp.178:
ヨハネ 8:47 → 同 8:42
pp.178:
上に言及した引用部と ヨハネ 8:55 の間に引用箇所があるのが訳本では削除:
(試訳……新共同訳からの引用)神に属する者は神の言葉を聞く。あなたたちが聞かないのは神に属していないからである。」 ―― ヨハネ 8:47
pp.186-187:
バルナバ→バルイエス(原著ではこうなっている。ちなみにバルナバとバルイエスは別人……バルナバはサウロと同じアンティオキアの教会にいた聖職者で、パウロの最初の宣教の旅に同行したといわれている。 )
pp.203:
1番目の引用部の後に引用箇所があるのが訳本では削除:
(試訳……新共同訳からの引用)あなたがたは、自分の体がキリストの体の一部だとは知らないのか。キリストの体の一部を娼婦の体の一部としてもよいのか。決してそうではない。 ―― 1コリント 6:15
pp.211:
ヘブル人への書 12:6 → 同 10:28-31(原著ではこうなっている)
pp.214:
「923ページある聖書の、902ページ目でやっと。」 → 「923ページある聖書の、907ページ目でやっと。」

裸の女王様

とあるテレビ番組を観ていたら、民主党の植松恵美子参院議員が出ていて、事業仕分けの蓮舫議員の話が出たときに、植松恵美子参院議員に話がふられた。植松恵美子参院議員は、事業仕分けで蓮舫の体重が2キロも減ったんだ、という話をしたのだが、その話を聞いて、野村沙知代氏が、そんなの、好きでやってるんだから当人の勝手でしょ、と、例の調子でツッコんだ。で、植松恵美子参院議員がこう言ったのだ。

「蓮舫さんは、日本のムダを洗い流そうと必死になってたんですよ〜」

(念の為補足しておくけれど、これは明らかに「洗い出す」の言い間違いだろう)まあ当然野村沙知代氏はツッコんだ。「洗い流すの?」

驚いたのはその後だ。植松恵美子参院議員、胸を張ってこうのたもうたのだ。

「洗い流しましたよ〜」

……誰だ、あんな馬鹿を国会議員にしたのは。日本語も分からない奴に日本の政治に関わってもらいたくはないんだけどな。

物議をかもした Google Books

最近、聖書関連の調べものをしているときに、雑誌がそのまま検索に引っかかってくるのに気付いた。これって、ちょっと前にアメリカで物議をかもしたGoogle Booksではないか?と見てみると、ちゃんと日本語版のサイトが beta release されている。どんなんかなぁ、と「LIFE Robert Capa」の3語をキーワードに検索を行った結果がこちら:

http://books.google.co.jp/books?as_brr=3&q=LIFE+robert+capa

おー、ちゃんとキャパが落下傘降下して撮影した写真(詳細を知りたい方はキャパの第二次世界大戦の回顧録である『ちょっとピンぼけ』を御一読のこと)も観られるじゃないか!これは凄い。今に web 上の文献の citation とかもこれでできるようになってしまうのだろうか。著作権に関する問題がまだ完全に解決したとはいえないだろうけれど、これは確かに使える機能だ。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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