eclipse
今日は部分日食が見られる日なのだが、曇っていたため、半分観測は諦めていた。しかーし……薄い雲が逆に幸いし、手持ちのデジカメでの撮影に成功した。以下に画像を公開する。
さて、今回の日食は、沖縄の南などでは皆既日食が観察できる条件だったわけだが、僕らの業界で「皆既日食」というと、思い浮かべられるものは何か……多くの同業者は「一般相対性理論」と答えるであろう。
特殊相対性理論の証明として有名なのは、いわゆる「マイケルソン・モーリーの実験」と呼ばれるものであった。これは、直接には、直行する二つの光路を通った光を干渉させ、干渉縞から二つの光路の光速度の差を求める、というもので、この実験(実際にはこの二氏の後も、レーザーなどを用いた極めて大規模・かつ高精度の追試が数々行われている)によって、光の媒質として仮想されてきたエーテルの存在が否定され、特殊相対性理論以外にこの問題を説明できる理論が存在しないために、特殊相対性理論の妥当性を証明している、とされている。
しかし、いわゆる相対性理論には、もうひとつ「一般相対性理論」というものがある。一般相対性理論は特殊相対性理論を、加速度運動を内包する場の理論として拡張したものだが、この理論では重力が時空連続体(いわゆる我々にとっての時間・空間を形成する場)に生じた歪みであると解釈され、重力で空間に歪みが生じている、ということを観測や実験によって検証することが求められていた。
あらかじめ位置が分かっている星の位置を、質量の極めて大きいものをかすめるような条件で観測してやって、観測結果から得た位置が既知の位置とずれていれば、一般相対性理論が証明されることになる。宇宙空間にある「質量の極めて大きいもの」としてもっとも手っ取り早いのが太陽だが、太陽は自らが強力な光を発しているために、通常はこのような観測は不可能である。
そこで……イギリスの天体物理学者 Sir Arthur Stanley Eddington は、1919年5月29日のアフリカ・プリンシペ島における皆既日食において、皆既食中の太陽とその近傍に観測される恒星を写真撮影し、恒星の位置を検討した。その結果は、ニュートンの万有引力理論における予想値の約2倍、恒星の位置がずれて写っており、これによってはじめて一般相対性理論の妥当性が証明されたのである。
もし、皆既日食という現象がなかったとしたら、このような観測による証明は非常に困難であったろう。日食の効能というのは、実は我々が考えるよりもはるかに大きな意味を持つものなのである。