太陽光利権
僕は一応、お国のお金をいただいて、世間で言われている代替エネルギーに関わる研究に従事してきた。最初の職場だった某研究所での時期を加えると、結構な年数、代替エネルギーに関わってきたことになる。
その立場として言わせていただくけれど、この日本という国は、代替エネルギーに関して何もしてこなかった、ということでは断じてない。それどころか、この国で研究・提案されてきた新エネルギーのビジョンというものは、少なくとも、最近雨後の筍のように出てきた「自然エネルギー万歳」みたいな人々のような非現実的なものでは決してない。彼等のうちの誰一人として具体的なビジョンを示さない、エネルギーの貯蔵という問題に関しても、たとえば水素エネルギーとかフライホイールとか、そういう次世代メディアに関しての研究開発を行ってきたのである。ぽっと出の素人に、彼等の知らないものがこの世に存在しないものであるかのように言われることは、専門家の端くれとして耐え難い。
だいたい、最近は皆さん「太陽光発電」と「スマートグリッド」があれば万事解決だ、みたいな、実に安易なことを平気で思ったり口にしたりしているようだけど、本当にそうなのか。そしてそこには利権は存在しないのか。
ここを読まれている方々は、日本やドイツが太陽光発電のトップを行く、と思われているかもしれない。しかし、まず頭に入れておいていただきたいのだが、日本は太陽電池の生産において、到底世界のトップには及ばないのが現状である。少なくとも、世界の企業別生産シェアにおいて、日本の企業はトップ3には入っていない。では国別ではどうか、というと、これはドイツとほぼ並んでいるのだが、日独の生産量を大きく上回っている国がある。それは、中国なのだ。
中国の太陽電池生産は、2009年の値で世界シェアの 30数 %、2010年の予想値でも30 % に達している。ちなみに同年の日本のシェアは中国、ドイツ、そして台湾に次ぐ第4位で、その量は 10 % あるかないか、というところである。日本はコスト面での太刀打ちができずに太陽電池の生産を縮小しており、それとは対照的に、中国は貪欲なエネルギーソースの開発を行っていて、国家的規模で太陽電池の生産量を拡大しているのである。
太陽光発電を積極的に導入して成功していると言われているドイツではあるが、実はその太陽電池の大部分を中国で生産している。ドイツには Q-Cells AG という世界最大の太陽電池製造メーカーがあるのだが、国別で言うともはやドイツですら中国の半分程度の製造量しかない。特に中国の Suntech 、Yingli Solar、そして JA Solar の3社は凄まじい勢いで製造量を増している。Suntech に関しては、去年の生産量が 1572 MW というのだから、凄まじいの一語に尽きる。
実は、このように中国の太陽電池の製造量が拡大した背景には、欧州、特にドイツで2001年に施行された Erneuerbare Energien Gesetz(EEG、再生可能エネルギー法)による自然エネルギー由来の電気の固定買取制度がスタートしたことがある。これによって、この10年程の間に急激に太陽電池の需要が拡大したわけだが、コスト的に国内生産では折り合わず、中国での生産に依存するようになったわけだ。
つまり、日本がこの先、急激に太陽光発電に向けて舵を切った場合も、同じように、日本は太陽電池の供給を中国に依存することになる。まあ、エコに関心がある人は、化合物系や酸化物系の太陽電池があるんだ、と言うかもしれないが、技術革新というのはそう簡単にいくものではない。おそらく、この10年、20年のタイムスパンでは、中国の太陽電池生産の優位性が揺らぐことはないだろう。
もし、政治レベルでこのような舵が切られることになれば、中国が受ける経済的利益は、これはとんでもなく大きい。当然そこには利権があるはずだ。菅直人氏や孫正義氏の周囲にそういうものがあるのかないのか、今後、我々は注意しなければならないだろう。土建屋と田中角栄どころではない話が、実は密かに進んでいるのかもしれないのである。
Re:太陽光利権
> guest(2011/07/14(Thu) 02:18:04)はい、考えにくいですね。詳しくは……まあ wiki でも何でも、ちょっとググればいくらでも資料にはあたれる筈ですけど。調べてないんでしょ?ちなみに「発電効率」だけでは何も語れません。必要な量を必要な品質で生産できるかどうか、の方がむしろ現実には大きな問題です。