人工甘味料に見る日本の食の貧困

以前にも書いたことがあるかもしれないが、僕は人工甘味料が嫌いである。特に、最近使われていることの多い、アセスルファムカリウムスクラロースの組み合わせが、何よりも嫌いである。甘味は一見控えめであるように見えて、食品が口から姿を消しても延々と続く。それは後味というものを、そして食後の口内の感覚を根底から破壊してしまう。僕にとっては許されざる大敵なのである。

最初のうちは、清涼飲料水等に入っている程度だった、と思う。しかし、この二つの甘味料は、どんどんその適用範囲を拡大していった。そして現在、その適用範囲には、そんなものまで?と思うようなものまで含まれている……まず、飴である。のど飴等の多くには、この甘味料が使われている。そしてアイス。果実系のジュースも例外ではない。バヤリースのジュース等にまで入っているのだ。

そして現在、この甘味料は、それが使われると我々が想像し得ないものにまで使われている。たとえば、先日発売されたウイルキンソンのジンジャーエールにも入っている。カルピス系のほとんどの商品にも入っている。現在市販されているほとんど全てのマッコリにも、この甘味料が使われている。先日 U が買ってきたノンオイルタイプのドレッシングにも入っていたし、某大手量販店で売られている梅干しの多くにも入っている。そして今日、ついにもずく酢にまで使われているのを発見してしまったのだ(後記:昨日買い物のときに改めて見てみたけれど、実は現在売られているもずく酢の中の結構な割合の商品が、この甘味料に手を出してしまっているようだ……)。もう、なんでもあり、の世界である。

では、何故、ここまで広範囲にこの甘味料が用いられるのか。おそらくその理由は、砂糖をケチるためである……え?と思われるかもしれないが、アセスルファムカリウムとスクラロースの組み合わせは、砂糖の数百倍の甘さを得ることができる。つまり、少量で強い甘味をつけることができるので、甘味料としてみた場合、砂糖を使うのよりもコストを低く抑えられるのである。しかも、「カロリーオフ」という宣伝文句をつけることもできる。

しかし、僕が一番恐怖を感じているのは、こういう状況が無批判に社会で受け入れられていることである。僕にとって、あれ程不自然に感じられるものを、どうして皆何とも思わずに飲み食いしていられるのか。舌が腐ってるんじゃないの?とか、頭にスでも入っているんじゃないの?と言いたい気分だけど、こういうことでどうのこうの言う僕は、おそらく現代社会で極めて少数派に属しているに違いない。

健康に配慮しているようでいて、実はコストカットの為に乱用されている甘味料に対して、これ程までに、羊のように唯唯諾諾と受け入れている日本の社会を思うに、これ程までにこの国の食が貧しくなってしまったのか、と、ただただ悲しい。こんな現状なのに、テレビをつけるとグルメ企画ばかり垂れ流されているのだから、もうお寒い限りである。こんな状況が続いてしまったら、日本人は正常な甘味の感覚を失ってしまう……いや、もう既に失ってしまっているのかもしれない。懐だけでなく、舌も頭も貧しいなんて、どうしてこの国はこうなってしまったんだろうか。

2011/07/16(Sat) 01:12:26 | 社会・政治

Re:人工甘味料に見る日本の食の貧困

怖いのは、甘いものをガブ飲みすることを習慣にした結果、ショ糖や果糖が入った通常の清涼飲料水を同じようにガブ飲みしてしまうことです。近年、「ペットボトル症候群」という名前で、このような症例が報告されていますけれど、甘いものに対する充足感というのは、たしかにそういう意味では大切なものかもしれませんね。
Thomas(2011/07/25(Mon) 15:56:03)

Re:人工甘味料に見る日本の食の貧困

世の中に蔓延する人工甘味料をなんとかしたいと僕も思っています。この甘さがカロリーなしで得られるという感覚により、甘い物に対する制御が弱ってしまうそうです。その結果、甘味料を摂取しだすと余計に甘いものが欲しくなることが多いとのこと。このままではしらない間に味覚がおかしくなるし、子供が摂取するのは親の責任で避けなければいけないと思っています。
guest(2011/07/25(Mon) 02:45:35)
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T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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