ヤガラ尽くし
最近、スーパーでヤガラを売っていることがある、という話は聞いていた。しかし、今日、たまたま別件で買い物に出かけたときに、頭を落としてぶつ切りにされたヤガラがトレイひとつ200円で売られているのを見つけて、おいおい……と呟いてしまった。
ヤガラ……ここで言及しているのはアカヤガラのことである……は高級魚である。詳細はWEB魚図鑑のエントリ「アカヤガラ」を御参照いただきたい。非常に長い口を持つ、細長い魚なのだが、刺身にしてよし、焼きものにしてよし、と、非常に評判がよろしい。
まあ、この辺の人達はこういうお魚のことをよく知らないんでしょう……と思いながら、トレイひとつを購入し、帰宅後、料理にかかる。
まず、腹腔の少し後側の身を刺身にする。この手の魚を捌くときには、いわゆる「大名おろし」と呼ばれるおろし方をすればよい……ただし、中落ちにぶ厚く肉が残ることになるので、これと皮をとっておく。おろした両側の身の表面の皮を外して、薄めに引けば刺身の完成である。
次に、尾に近い身を同じように三枚におろして、これはぶ厚く切る。中落ちと皮を、先の刺身のときの中落ちと皮と共に鍋に入れて水を張り煮立たせ、アクを引きながら中火でしばらくおいて出汁を取る。これを漉し、酒、塩、少しだけの醤油で味を整え、先のぶ厚く切った身に片栗粉をまぶしたものを出汁に落として火を通す。食べる寸前に刻んだみょうがを入れて椀に盛れば、吸い物の完成である。
胸鰭のある辺りは焼き物にする。これは塩をしてグリルで焼くだけだ。これだけで、刺身・吸い物・焼き物、と、ヤガラのフルコースである。
食べてみると……いや、非常に上品な味なのだけど、決して薄味ではない。おろしているときも感じていたのだけど、身から生臭みとかを一切感じさせない感じなのだ。それがそのまま食味に反映されている感じである。しかし……あれ、数尾分も積み上げてあったのだけど、喜んで買った人を他にはついぞ見かけなかった。200円でこんなに贅沢な思いができるというのに……つくづく、食わず嫌いは損をすると思うのである。