黄長Y暗殺未遂事件
アイスランドの火山、スペースシャトル、普天間問題の3ニュースの影に隠れているけれど、こんなニュースが流れている。
韓国、偽装脱北者を逮捕 黄元書記の殺害計画か
【ソウル共同】韓国の情報機関、国家情報院と検察当局は20日、1997年に北朝鮮から韓国に亡命した黄長ヨプ元朝鮮労働党書記を殺害する目的で、北朝鮮からの脱出住民(脱北者)を装い韓国に入国したとして、工作員2人を国家保安法違反容疑で逮捕した。聯合ニュースが報じた。
同ニュースによると、2人は昨年11月、北朝鮮人民武力省から黄元書記の殺害指示を受け、同12月に脱北者を装って中国とタイを経由して韓国に入国。脱北を偽装した可能性があるとして国家情報院が取り調べたところ、殺害指令を自白したという。
2人はいずれも朝鮮労働党員で、同省から工作員教育を受けていた。韓国では黄元書記の通う病院や立ち寄り先などを割り出し、具体的な殺害指示を受けることになっていたと供述しているという。
検察当局は、韓国内に協力者がいる可能性があるとして、国家情報院と協力して捜査を進める方針。
2010/04/20 23:51:50【共同通信】id
韓国でこの話が報道されているか調べると、以下の2記事が引っかかってきた。
上海万博を控えたこの時期に出てくる話にしては、少々きな臭い。黄長Y(ファン・ジャンヨプ)という人は、北朝鮮において主体(主體、チュチェ)思想を体系化した人物である。つまり、金日成以降の独裁政権の理論的支柱を確立したわけで、北朝鮮では一時ナンバー2と言われていた。しかし、とある事情(本人は北朝鮮の実情への義憤にかられたため、と言っているけれど、党内の立場が悪くなったから、あるいは、国外在住の女性と懇ろになったためだという説もある)から家族を捨てて亡命した。それ以来、何度となく北朝鮮からの脅迫に遭っていたわけだけど、こうも具体的に暗殺事件が発生したのは今回が初めてかもしれない。
それにしても、黄氏が理論構築した主体思想というのはつくづく罪深い。古くは、よど号ハイジャック事件の際に、犯人グループは主体思想(当時の映像を観ると、彼らが「しゅたいしそう」と読んでいるのが確認できる)への傾倒を主張して北朝鮮に渡ったのだった(もっとも、彼らは北朝鮮を思想的に正そうとしていた節があって、要するにミイラとりがミイラになったような体なのだけど)。黄氏が亡命し、主体思想を「マルクス・レーニン主義を極東に適用したもので、もともと独裁政権を正当化する方便として構築したものではない」と言っても、実態として、彼の国は既に三代目を世に出そうと準備している最中だ。ソ連崩壊後、東欧からトルクメニスタンのような独裁国家が出現したのだって、北朝鮮の存在とまんざら無関係ではなさそうなわけで(もっともトルクメニスタンは国民が富裕な生活を維持できていたので大した文句も出なかったようだけど)いや本当、つくづく罪深いと思う。