デジタルリマスタリング
最近、ちょっとある曲をカヴァーしようかと考えていて、音源をいくつか入手してごそごそやっている。この音源は1970年代初頭にレコーディングされたものなのだけど、ライブ音源のブートなどもいくつか存在するようで、そういうものも参考に聴いているところである。
こういう音源を聴くときには、できるだけ妙な加工をしないようにしたいところなのだけど、採譜しようとかヘヴィーローテーションで聴きこもうとかいう話になると、さすがにちょっと手を入れたくなる。そういうときにどうしているのか、を、ちょっとだけ書いておこうと思う。
まず、音源を入手したら、16 bit PCM、いわゆる WAV 形式に変換する。この変換にはSUPER ©というソフトを用いることが多い。この SUPER © というソフトは、画像・音声ファイル変換の最終兵器とでもいうような変換ユーティリティなのだけど、意外なほどに利用者を見かけない。非常に便利なのだけどなあ……
変換した WAV ファイルを Audacity で開いて、まずは FFT でスペクトル解析を行う。この段階で妙なピークやディップがないことを確認して、あった場合は補正の前段階としての EQ を行う。
次に、Cubase を立ち上げて、内容確認の終わった WAV 形式のファイルを読み込んで、補正に用いるプラグインを立ち上げる。ここで僕が使うのはBBE SONIC MAXIMIZER PLUG-INとSonnox Oxford Dynamics、そして(本来なら Sonnox Oxford Dynamics だけで作業可能なのだけど操作上の問題で)Sonnox Oxford Limiterである。
BBE SONIC MAXIMIZER PLUG-IN は、ブートのようなテープ音源で埋もれてしまっていた音を、うまい具合に彫り出してくれる。かけ過ぎると当然ドンシャリっぽくなっていくのだけど、これとパラ EQ(Oxford のを使用することもあるけれど、Cubase 付属の4バンドパラ EQ を使用することが多い)を組み合わせることで、ノイズ以外の問題に関してはかなりの範囲で補正が可能である。そうやって補正した音源の音圧を、コンプとリミッターで上げていく。分解能を落とさないように音圧を上げ、音が硬くなった場合は EQ で補正する。これを 32 bit 浮動小数点の WAV ファイルに落としてから、再び Audacity で読み込む。
Audacity を使わなければ一連の作業ができない、というわけではないのだけど、Audacity には強力なリミッタープラグインである ”Fast Lookahead Limiter" があるのと、いつでも FFT で帯域を監視できるので、最後のマスタリングは Audacity 上で行う。最大音量の部分が -0.1 dB となるようにノーマライズして、音源の導入部と終わりの部分を整えて、16 bit,44100 kHz サンプリングの WAV ファイルに落として、作業完了である。
いわゆるデジタルリマスタリングとでも言うべき作業をしているわけだ。僕の場合はあくまで音楽をやる上での要請からこんなことをしているのだけど、自分で録音した音源のマスタリングもこれに類したようなプロセスを経ている(自分の音源の場合は BBE は使わないけれど)。まあ、道具があって、必然性があれば、こんなことは誰でもできることなのだけど。
というわけで、目下、こんな風にしてデジタルリマスタリングした音源を iPod に突っ込んで、何か時間が空くと聴いている、という状態である。何が出来るかは、乞うご期待……