金盾、矛盾
いよいよ TeX Live 2012 に向けた tlpretest がリリースされた。早速、手元にダウンロードしたいところだったのだが、 mirror にアーカイブが定着するまでは我慢、我慢……と、世界に5箇所ある mirror site にアーカイブが定着したようなので、rsync でダウンロードを開始した。
それにしても、この tlpretest の mirror site は奇妙である。5箇所というのが、中国の ctex.org、チェコの CSTUG、スロヴェニアの Jožef Stefan Institute、そしてアメリカの Harvey Mudd Collegeと ユタ大学理学部数学科なのだけど、TUG のページによると、日本には mirror しているところはないようだ。
こうなってくると、何処が一番近いのか、という話になってくる。もちろん、これは物理的な距離ではなく、ネットワーク的な近さの問題である。traceroute でホップ数を数えたり、小さなファイルの取得に要する時間を比較したりした結果、一番近いのは……なんと、中国の ctex.org であった。
正直言って、僕はアメリカの方が絶対に速い、と思っていた。というのも、中国はネットの検閲が大規模に行われているからだ。この検閲システムは「金盾」の名でよく知られている。しかし、実際の転送速度を計測してみると、tux.org と比較しても、中国からの転送は「劇的」と言っていい程に速い。本当に意外だった。
本当は、中国のように国民の多い国こそ、ネットワークの帯域確保には懸命になるべきなのだと思う。なにせ、十数億もの人々がケータイを中心としてネットワークを使っているのだから……その意味からは、金盾のようなシステムはナンセンスとしか言い様がないのだけど、今の状況は、まさに一党独裁国家の現実だと言わざるを得まい。中国人は、自分達が割を食っている現実に、もっと怒るべきなのだ。そういうことを彼らが考えるようにならなければ、きっとあの国の政治状況は変わらないままだろう。
まあ、そんなわけで、ctex.org からのダウンロードは、おそらく夜までには終わる。今後の更新は、ひょっとしたら tux.org を使うこともあるかもしれないけれど、今回の件は、僕に中国のネットワークを少しだけ見直させたのだった。
【後記】その後、ftp や http での転送速度も色々計測してみたのだけど、ユタ大学の方が速いことも結構あったりして、どちらを人に薦めるべきか、はちょっと微妙。難しいですね。