守られるべきは誰なのか
先日の女子柔道のナショナルチームにおける暴力問題に関して、JOC に告発した選手の氏名を公表すべきだ、という意見がある……という話を聞いて、最初、耳を疑った。新聞などを見ると、どうもこういうことらしい:
……いやはや、あきれてものが言えないとはこのことである。毎日新聞 2013年02月07日 東京朝刊
柔道全日本女子代表選手らに対する暴力問題で、被害の実態や背景に迫るカギとなる問題を告発した選手15人への聞き取り調査(ヒアリング)は6日時点で進んでいない。日本オリンピック委員会(JOC)は今週中にヒアリングを開始する方針だが、選手の氏名公表をめぐって関係者の間で見解の相違も。匿名での集団告発への対応の難しさが、浮き彫りになっている。【井沢真、中井正裕、藤野智成】
この問題でJOCは、プライバシー保護の観点から全柔連にも15人の氏名を伏せている。だが、ヒアリング担当者の一人でJOC理事を務める自民党の橋本聖子参院議員が6日開かれた党参院議員総会で「あまりにも選手のプライバシーを守ろうとする観点から、15人が表に出ていないことをどう判断するかは非常に大きな問題」と持論を展開。さらに「プライバシーを守ってもらいながらヒアリングをしてほしいというのは決していいことではない。長年の問題を訴えることは、非常に大きな責任があると選手一人一人が理解しなければならない」と強調した。
この発言が一部で「選手の氏名が公表されるべきだとの認識を示した」と報じられた後、橋本議員は「氏名を公表すべきだとする発言はいたしておりません」とコメントを発表したが、混乱を招いた感は否めない。
選手の代理人を務める岡村英祐弁護士は「現状では選手の不安が大きく、公表は難しい。ヒアリングの担当者(橋本議員)がそういう姿勢だとスムーズに進まない」と懸念を示した。
そもそも、なぜ JOC が匿名のまま話を進めているのか。それはここに書くまでもないと思うのだが、もし告発した選手の名前が全日本柔道連盟に知れたとき、その選手達の今後のキャリアにおいて、全日本柔道連盟内で不利益を被らない、という保証がないからだ。
なにせ、今回の件でも、最初は告発を正面から受けずに内々に済まそうとし、事を JOC が公にするや、関係者が辞めること以外に対策らしい対策を何もしていない組織である。この時点で告発者の名前が知れたら、選手生命、あるいは今後の指導者としてのキャリアを絶たれる可能性は、決して低くないだろう。
そもそも、こういう騒ぎが起きているのだから、自分達の組織のことだけを考えていたとしても、コンプライアンスをどのように確立するか、というような話が出てこないのがおかしい。しかし、実際に何処からもそういう話が出てきていないのである。彼らのやったことと言えば、逆ギレめいた会見をして何人かの人間が辞めた……それだけではないか。
全日本柔道連盟寄りの人々(これには谷亮子参院議員も当然含まれるであろう)は、こういうときにそもそも誰が保護されるべきかがてんで分かっていない。最も立場が弱く、最も未来にまでこのことが関わる存在こそ、ここで最も保護されなければならないのである。武道を志していて、こんなことも分からないオツムだったら、それこそ文武両道という武道の均衡を欠いたデクノボウだと言わざるを得まいに。
そして、これに関して、国会議員、そしてオリンピック関連にも顔の利く立場にありながら、橋本聖子(敬称は使わない……今回の所業は到底敬意を向けるに値しないものだからね)は何をホザいているのか。女子柔道選手の芽を摘むためにアンタは議員センセイやってるのか? 本当に、いい加減にしてもらえないだろうか。