僕が普段どのように TeX Live を使っているか……というか、TeX / LaTeX の周辺環境をどのように使っているのか、という話を少し書いておくことにします。
TeX Live とは関係のない話ですが、まず僕がどのように書いているのか、という話から始めましょう。
最初に書きましたけれど、僕は統合環境を使いません。この30年程、書きものをするのはほとんど GNU Emacs で行っています。Emacs 上で LaTeX ファイルというと YaTeX(野鳥)が有名ですが、僕は YaTeX も使いません。「何も使わないでよく書けるな」とか言われることが時々ありますけれど、定型文的なものに関しては、以前書いたファイルをテンプレートとして使うこともあります。
日本語のテキストファイルに関しては UTF-8 で統一しています。Windows とのファイルのやりとりで文字コード変換が必要になることが時々ありますが、Linux の場合は nkf でちょろちょろっと変換しています。まさに文具感覚ですね。
最近は lualatex + LuaTeX-ja で書くことがほとんどです。luajitlatex が事実上使えなくなったのが哀しいところですが…… LuaTeX-ja に関しては、最初の何年かは、縦書きやルビが使えなかった時期もあったわけですが、ltjtarticle.cls, ltjtreport.cls, ltjtbook.cls、そして luatexja-ruby.sty が正式にパッケージに入って、今は何も問題なく使えます。
platex による処理は……特に書くことは何もないでしょうね。数十ページを超えるような長い文章を書くときには、章毎に書いた断片を \include でひとつの .tex ファイルに取り込むようにしたり、とか、目次や索引、参考文献関連の処理を何度か繰り返す必要のある場合には Makefile を書いて make 一発で処理できるようにしたり、位はします。
pLaTeX を使う場合は dvipdfmx を併用します。最終的な出力を得る場合は、
のように、ヒラギノフォントを埋め込む指定をして出力することが多いです。実際には、フォントマップは何種類か用意してあって、源ノフォントを中心としたフリーフォントを埋め込めるようにもしてあるので、配布する必要のあるファイルはそうやって生成することもありますし、特に埋め込む必要のない場合は「埋め込まない」というオプションを選択することもあります。$ dvipdfmx -f hiraginoEmbed.map foo.dvi
PDF ファイルの内容確認は、書いている過程では zathura、仕上げから印刷の段階では Evince を使うことが多いです。ヒラギノフォントを埋め込みたい場合には、.tex ファイルを mac os 上で platex → dvipdfmx で処理します。Mac OS X 上には GNU Emacs と ghostscript.app が入っているので、ほとんどの場合はリモートの Linux 端末上からブラウズも含めた処理ができます。
そんな面倒なことをしなくても、Linux にヒラギノを……というのは、技術的には何ら問題なく可能なのですが、一応そういう行為はフォントの著作権の侵害になるのでしていません。また、僕の Linux 端末は Windows 10 とデュアルブートなので、そちらのパーティションに入っている Microsoft 由来の游フォントなども使おうと思えば(物理的に)可能ですが、これも著作権的に面倒なのでしていません。
luatex-ja が TeX Live にマージされてから結構な年月が経過し、縦書きもルビも安定して使えるようになっています。実行速度に関しても luajittex の登場によって以前より改善されています。platex を使うこともまだまだ少なくありませんが、諸々の問題が解消され、完全に LuaTeX ベースになる日が来るのも、もう遠くないかもしれません。