資質

鉢呂経産大臣が、「死の街」発言に続いて「ほら、放射能」と言いながら防護服の表面を記者に擦り付けようとした問題で、今夜辞意を表明した。まあ、厚労大臣のタバコ増税発言と言い、閣僚としてあまりに程度が低過ぎて、ただただ脱力、という感じである。

しかし、どういう訳か、世間では「ここで辞める方が無責任だ」とか、はなはだしきに至っては「マスゴミの誘導で辞めさせられるとは許し難い」などという発言まで目につく。これに関しては、断固ここで objection を表明しておかねばなるまい。

まず、政治家という仕事は非常に過酷な仕事である。何が過酷なのか、というと、未知のファクターの集成である未来に対して一定の結果を出さねばならない、そしてその業績が結果のみで評価されるところこそが過酷なのである。いかに頑張ろうが、汗をかこうが、そんなものは何の役にも立たない。軽口をたたき、鼻をほじりながらでも、するべき仕事をして結果を残す方が、政治家としての評価は高いのである。

そして、そういう未来への仕事を託される政治家に要求されるのは、「どういう姿勢で」「どういう理念で」「どういう方策で」未来への課題に立ち向かっていくのか、ということである。これは、つまりはその人の政治家としての哲学が問われているのである。

その人の発言は、その人の哲学を反映したものとしてとられるのが当然である。だからこそ、シビリアンコントロールにおける文民と素人の区別もつかないようなことを言ってみたり、葉タバコ農家の存在を一顧だにせずに、職務権限もなしにタバコの増税に関して発言して、後で私見でござい、とヘラヘラしていたり、これから自らが救済しなければならない対象を軽々に「死」という言葉で形容したり、そこにある放射性物質の存在をネタにしたり……そういう政治家は、そういう哲学を持っているとみなされて当然だし、そういう政治家の資質というものには期待を持ち得ないのである。

そして、僕等は民草として、市民として、そういうことにはきっちりと「それはおかしい」と声を上げるべきなのだ。反原発と言っていたから、ああいう放言・問題行動をしていても経産大臣として期待していた?はぁ?てんでお話にもならない。それは共同幻想を大事にするあまり「毒食らわば皿まで」と言っているようなものだし、そういうことに世間の他の人達を巻き込んでいただきたくはないのだ。迷惑千万ではないか。

太陽電池の落とし穴

以前にもここに書いたけれど、世間で盛り上がっている「再生エネルギー礼賛」みたいなムードの中で、皆本当に、真剣に、再生エネルギーのこと考えてるの? という疑問を、いつも僕は抱かずにはいられない。たとえば、今日、こんなニュースが流れている:

米太陽電池、3社が相次ぎ破綻 中国の攻勢で

2011/9/5 0:47

【シリコンバレー=奥平和行】米太陽電池業界に逆風が吹き付けている。8月にはソリンドラ(カリフォルニア州)など3社が事実上、経営破綻したほか、米最大手ファーストソーラーの4〜6月期は大幅減益となった。最大市場である欧州で販売が伸び悩んでいるほか、低価格を売りものにする中国企業の攻勢が強まっており、消耗戦の様相を呈している。

ソリンドラはビルや商業施設に設置する円筒状の発電効率が高い太陽電池を生産していた企業。8月はエバーグリーンソーラー(マサチューセッツ州)と、半導体世界最大手、米インテルの出資先として知られるスペクトラワット(ニューヨーク州)も経営が行き詰まった。ファーストソーラーの4〜6月期決算は売上高が前年同期比9%減の5億3277万ドル(約410億円)、純利益は同62%減の6113万ドルと減収減益だった。

自然エネルギーの需要の高まりを背景に、太陽電池への需要はこれまで順調に拡大してきた。欧州太陽光発電産業協会(EPIA)によると、2015年には世界の太陽電池の新規導入量が10年実績より4割強多い2393万キロワットまで増える見通し。ただ11年は10年比20%減の1333万キロワットを見込んでいる。

欧州各国の政府は電力の固定価格買い取り制度などをテコに需要を喚起してきたが、ここへきて財政悪化を背景に相次いで補助を縮小しておりその影響が出た。主要市場である欧州の需要減速で太陽電池の価格が下落し、米国各社の業績を圧迫した。

供給能力増強を進めてきた中国企業が欧州の減速などで米国市場に矛先を向けたことも、米企業の苦境を一段と深める結果となった。中国企業は米国で施工会社を拡大し広告も活発に行っている。米調査会社ソーラーバズによると、8月の太陽電池モジュール1ワット当たりの価格は、前年同月より23%低い2.84ドルまで下がっており、各社の収益の重荷になっている。

(日本経済新聞 2011年9月5日付)

これからも分かることだけど、太陽電池生産は、現在、中国のほぼ一人勝ちの状態である。再生エネルギー先進国(とか言ってるけど、他国の原子力発電による電気を買ったりもしているから、実は真の意味でそうは言えないと僕は思うのだけど)ドイツでも、国内法人で太陽電池を生産するはずが、実際には中国の安価な太陽電池に勝てない、という現状があるのだ。

エネルギーは、どう形が変わっても、それが国というものの生命線であることには何ら変わりはない。生命線を容易く断たれるような構造を容認してはならないのだ。もし、本気で太陽光発電を大規模に行うのだったら、内製するか、日本に対する政治的カードとして太陽電池供給を使わないことがある程度保証されている国から輸入する、という方針を現実のものにする尽力は欠かせないのだが、再生エネルギー再生エネルギー、とはしゃいでいる政治家や一般の方々は、どうもとんとそういうことをお考えにはならないらしい。

僕は別にナショナリズムを説いているのではない。21世紀は、今迄以上にエネルギーというものの位置付けが重要になり、それが貴重なものになり、時にはそれを巡った政治的やりとりをしなければならない……そういうことを言っているのである。現実を見据えずに空理空論に遊ぶとどうなるか、この一年と少しの間、日本という国にいて、尚分からない人がいるならば、そういう方はさっさとこの過酷な現実の世界からオサラバした方がよろしい。いっそ死んでいただきたい。

程度が低過ぎる

民主党の代表選の話題で、ここ何日かのニュースは賑やかである。あの菅直人の後だから、誰に決まっても今以上に悪くなることはないだろう、という話がそこここで聞かれる。しかし、本当にそうなのだろうか。

海外から電力輸入を=小沢元環境相

民主党代表選出馬を目指す小沢鋭仁元環境相は22日、時事通信のインタビューに応じ、原発からの段階的撤退を目指す立場を改めて示した上で、代替エネルギーに関し「海外から電力の直接輸入を行う」と語った。ドイツなどは電力を輸入しているため「脱原発」への転換が可能だったとの指摘があることから、日本も原発依存度を減らすため、電力輸入に踏み切るべきだとの考えを示したものだ。

小沢氏は「(輸入先は)韓国、中国などいろんな国の可能性があっていい。国と国の間に海底ケーブルを1本引けば全て解決する」と語った。同氏は代表選の目玉公約として訴えていく考えだ。(2011/08/22-19:08, 時事ドットコム)

僕は、このニュースを聞いて、正直言って我が耳を疑った。はぁ?という感じである。

おそらく、小沢氏はヨーロッパにおける売買電の現状から安易にこういうことを言ったのではないか、と思う。しかし、ヨーロッパでの国際間の売買電は、そのほとんどが EU 圏内の話である。では日本はどうなのか。中国から電気を買う?では、先日のレアメタルのような「売り惜しみ」が起きた場合にどうするというのか。こんなことは小学生でも気がつきそうな話である。

政治家のちょっとした間違いだ、などと片付けてはならない。この小沢鋭仁という人は元環境相である。環境政策というのは、常にエネルギー政策と表裏一体の如くあるものだ。しかるに、エネルギー政策においてこのような不見識を平気で露呈する輩が、果たしてまともな環境政策を進めていたのだろうか?僕にはとてもじゃないが、そうは思えないのだ。そしてこういう不見識を平気で露呈してはばからない輩が総理大臣になったとしたら、この国の行く末は限りなく暗いと、言わざるを得ないのである。

とにかく、(民主党に限定した話ではないのかもしれないが)最近の政治家のこの手の発言は、あまりに程度が低過ぎる。あまりに程度が低過ぎるから、メディアも呆れてあまり批判しないのかもしれないが、こういうことはちゃんと指摘されなければならない。馬鹿は放置しておけば良いのではない。ちゃんと「こいつは馬鹿だ」と指摘しなければならない。そうせずに、それが周知されている保証は何一つないのだから。

薄ら寒い (4)

ついに、東海テレビは「ぴーかんテレビ」の打ち切りを内々に決めたらしい。

「ぴーかん」打ち切り 東海テレビ、不適切テロップで判断

2011年8月11日 09時58分

東海テレビ放送(名古屋市東区)が情報番組「ぴーかんテレビ」で、「怪しいお米 セシウムさん」などの不適切なテロップを放送した問題で、同局が番組の続行は困難と判断したことが分かった。今後、スポンサーなどと番組終了に向け最終調整に入る。

この問題では、フジパングループ本社(同市瑞穂区)、流通大手のイオンリテール東海カンパニー(同市中村区)などが不快感を示し、スポンサーを降りる企業が相次いだほか、視聴者から1万4千件を超える苦情のメールや電話も殺到した。

同局幹部は「過去の放送事故の事例を鑑みても番組を続行することは困難」としており、打ち切りは避けられないと判断した。

中日新聞

まあ、スポンサーがつかないからこれ以上放送出来ない→打ち切り、という理屈は分かる。しかし、まだ東海テレビは勘違いをしてはいないだろうか。前にも書いた通り、これは打ち切れば済む話ではない。その辺を勘違いしていると、これは「東海テレビ排斥運動」という最悪のかたちに発展してしまいかねない。皆厭だろうとは思うけれど、局関係者は一刻も早く、自分達の何がどう悪かったのかを総括するべきだ。そうしない限り、このネガティブなイメージは払拭し得ないと思うのだけど。

【追記】東海テレビの浅野碩也らは、今夜八時から記者会見を行う、とのことである。一週間経ってしまった今日、というのは、あまりに遅過ぎだと思うけれど、どうするんだろうか。まさか画像を作成した本人を晒したりしないだろうな……今あの社員が晒されたら、家族も含めて危険だろうから、管理側としては(あの社員がしたことはともかくとして)個人を特定できるようなことは絶対に避けねばならないだろう。さて、どうするのか。まあ、こういうときに腹を切るために、社長ってのは普段から高い給料貰っているんだけど。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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