突然死

仕事で使っている Thinkpad X61 だが、出先でちょっとだけバッテリで使った後、職場に来てから AC アダプタにつなぐと、バッテリのサインを示す LED がオレンジ色になって点滅している。訝しく思いながらもバッテリの残量を見ると……充電済になっている。うーん、これはどういうことなのか。

調べてみて初めて知ったのだが、Thinkpad X60/61 シリーズ用のバッテリはしばしば「突然死」を起こすらしい。そういうロットがあって、かつて Lenovo は交換にも応じていたらしいのだが……しかし、ちょっとこれはショックだ。純正の長時間駆動用のバッテリパックだし、このバッテリがないと困ることが多いのだ。

とりあえず amazon で代替品を探す。最近は中国製のこの手のバッテリの互換品はあちこちで出回っているので、その中から手頃な価格のものを発注する。まあ、早ければ明日にでも届くだろう。しかしなあ……ちょっとショックだった。

そういうことにしたいのですね

先日も、日記で質問者に対して書いたばかりだが、今日もそういう話を書く。どうも、厭なめにあうことが多いもので。

何事か人に質問されることの多い立場に、この何十年か身を置いているわけだけど、質問者というのにも色々いる。前回の『質問は何のために』に書いたような手合いもいたりするわけだけど、これに限らず、問題があるな、と感じる質問者に共通しているのは、何事かを前に進めるために質問しているのではなく、彼もしくは彼女が「安心したいから」質問してくるらしい、ということである。

たとえば、最近多いパターンなのだが、漠然とした質問をしてきて、「一体何がしたいんだアンタは」と思いながら、その質問の意図するところを訊き出そうとしていると、「やっぱり無理なんですね」という言葉を返してくる。回答のために他人を動かしておいて、それを後目に、どうしてそういうことが言えるのだろう、と思うわけだが、向こうさんはそういうことは欠片程も考えていないらしい。悪意はないのかもしれないが、自分ができないかと思っていることが無理なのだ、と安心したいがために動かされる方はたまったものではないのだ。

あと、これも多いパターンなのだが、訊きたいことをまとめることのできない人というのが大変に多い。何かひとつ質問する→答える→「じゃあこっちは」と質問→答える→何が訊きたいのか分からずに訊き返す→「実は……」という話が返ってくる……まあ、こういう状況になるわけだ。

何か分からないことがあるときに、本気でそれをどうにかしたいのだったら、どこまで出来てどこから出来ないのか、とか、それ以前に何をどうしたいのか、とか、頭の中でも紙の上でもいいけれど、まず整理するものだろうと思う。しかし、この手の質問者達はまずそういうことをしている気配がない。要するに、「これは無理だね」という答が出てくることを期待しているから、手近の順に質問を投げてくるのではないか。そう思えてならないのだ。

どうにかしたい、と思っていないんだったら、最初から諦めて指を咥えていればいい。それに他人を巻き込むなんて、傲慢の極みだと僕は思う。他人の時間や手間を奪っているのだから、それに応えるだけの何かにつなげてほしいと思うのだ。別にそれが回答者に直結する利益につながらなくてもいい。回答者は、回答によって誰かがより良い状態になることにボランティアとして手を貸しているのだ。だから、質問者はその期待に応え切れなくてもいいけれど、裏切ったり無駄にしたりするのは、勘弁してもらいたい、と僕は思うのだけれど。

質問は何のために

僕は何度かここで、愚かな質問者に関して毒を吐いてきた。まあでも、彼らの中には innocent な人もいないわけではないのだ。問題なのは、ある種確信犯的に愚かであろうとしている人の存在である。

2、3日前のことだが、某省庁からの調査書みたいなのが僕の手元に来た。書かなければならないことの数はそう多くないし、上司にいくつか確認を取ればそれだけでこちらで話を済ませられそうだ。上司の暇がありそうな時間に電話をかけ、必要な事項だけを確認すると、ああそれは記入事項あまり多くないんでそちらでお願いします、と、上司の方からも言われて、了解です、と電話を切って、その書類を書いていたのだった。

そこに、違う部署に常駐している同僚から電話があって、これこれこんな書類……と言う。はいはい、あの書類は書かなきゃならない事項も多くないんで、こっちはこっちでもう書いてしまいましたよ、と言うと、

「そちらで書いたのをファクスで送ってくれない?」
「え? いや、書き方の凡例も付いていましたよね」
「でもよく分からないんで、送って下さい。」

こっちもそう暇じゃないんだけどなあ……と思っていると、 「ああそうそう、一回コピー取ってからファクスで送ってもらえると鮮明に読めると思うんで、それでお願いします」

こっちもそんな暇じゃないんだが……とイラッとなったわけだが、まあコピーを取って、ファクスで送信したわけだ。

で、その後に、その日の業務の準備をしているところに、また電話がかかってきたのだった。

「ああ、さっきはどうも。ところで、今何かメールが飛んできたようなんだけど」

アンタは人間 biff か(などと言っても彼にはその意味が分かるまいが)、などと思いながらも、電話の横の端末でチェックすると、確かに上司からメールが来ている。内容を見ると、今度某方面に配布するものに添付することになっている表だった。上司もバタバタしていたのだろう、手元の紙のフォームをスキャンしたらしき TIFF ファイルで送られている。

職場で使っている複合機は、当然スキャナとしても使えるわけだけど、スキャンしたときのフォーマットはこの TIFF か PDF かのどちらかが選べるようになっている。PDF は PDF でまた面倒だったりもするし、体裁を整えてファイルの形で配布する必要のあるものではないので、内輪で送るのにはこれで過不足なし、と、少なくとも僕にはそう思えたわけだ。しかし、電話の主はそうではなかったらしい。

「これって、表示できないよねえ?」

と、いきなりこれだ。いや、こちらでは何の問題もなく表示できていますけれど、と言うと

「いや、その、チャック付いてるやつ(彼は zip でアーカイブされたファイルをいつもこう呼ぶ)を開いたら、中のファイルが開かないんだけど」

ということは、TIFF が表示できない、ということか。うーん。しかし、それはないんじゃないのかね。

「Windows フォトビューアとかありませんでしたっけ」
「そんなのないよ」

調べると、Windows 7 には確かにフォトビューアがインストールされていないとのこと。じゃあ Windows Live のフォトビューアはありますか、と訊くと、入っている、という。起動して下さい、と言うと、

「じゃあ、このチャック付いてるやつを閉じて」
「え? いや、そこからビューアにドラッグアンドドロップすることになると思うので、それは閉じないで下さい」
「いや、閉じないと先に進めないじゃない」

どうやらこの方は、Windows がマルチタスク OS であることをご存知ないらしい。イラっと来ながら操作方法を説明していると、

「お、開いた開いた……え、パスワード要求してくるんだけど。これって危険じゃないの?」

そりゃ Windows Live のソフトなんだから、Live の ID とパスワードを確認してくるに決まってるだろう。無視して下さいと言うと、ここでまた一悶着。そんなことをしている間にも、こちらのアポイントメントの時間が迫ってくる。さすがに僕も堪りかね、

「時間がないんでここまでです」

と言って電話を切った。もうアポイントメントの時間まで1分しかない。準備もろくに出来ないままに、冷や汗をかきながら対応するハメになったのだった。

そして業務が終わった頃、上司から電話がかかってきたので、この2件の質問で往生した、という話を上司にすると、

「それは迷惑かけましたねえ。でも TIFF って、そんなに特殊なフォーマットなの? 僕はあの複合機でそのままスキャンしただけなんだけど」
「いや、TIFF は高精細度のグラフィックフォーマットとしては最も一般的に用いられるもののひとつですから、フォトレタッチとかするユーティリティがあれば開く筈なんですがねえ」
「そうだよねえ。こちらでも何も問題なく使えてるんだけど、あの画像」

と上司も首を捻っている。

で、残務整理をしている最中に、またその同僚から電話がかかってきたのだった。

「さっきの件ですが」
「はぁ」
「○○さんに頼んだら、何か Windows の何とかってソフトを入れてくれて、これで見られるようになった」

なるほど、おそらく Windows Essential でも入れたんだろう。要するに、Windows Live フォト ギャラリーではメニュー形式が複雑でこの人には理解できなかったということか。しかし、その○○さんもお気の毒に。

「で」
「はい」
「そういうことなんだけど」

そういうことなんだけど、で、何か?

「いや、見られて、印刷もできたんでしょう」
「いや、印刷は、画面から摘み出さないとダメなんだわ」

摘み出す? もはや意味不明だ。

「で」
「はい」
「そういうことなんだけど」

だから、この人は何を僕に求めているのだろうか……と、ここではっと気付いた。このオッサン、俺に非を認めさせたいのか?

僕が過去に出会った手合いの中で、おそらく最も悪質な手合いである。要するに、分からないから他人に聞いて何とかしよう、というのではないのだ。分からないのを他人に聞いた上で、うまくいかないのをその人のせいにしよう、というのだろう。事態解決のために質問するのではなく、責任回避のために質問する。そして、己の無能は棚に上げて、アンタがちゃんと教えないからこういうことになったんだ、と、彼は要するにそう言っているのだろう。

さっきの書類の件にしたってそうだ。書き方が分からないんじゃなくて、自分の書き方で何か不具合が発生したときの責めを負いたくないんだろう。だから、僕にファクスを送らせておいて、「Thomas さんの書いた通りに書いたんだ」→「俺は悪くない、悪いのは Thomas だ」……なるほどねえ。

こちらのバスの時間が迫っている。僕はいつも、ここから帰るのに終バスを使っている。これを逃したらタクシー代を何千円も払うはめになる。まだ何か言いたげ、もとい、言わせたげなこの同僚に、はいはいじゃあもう問題ないですね、切りますよ、と電話を切りにかかるが、なかなか向こうは切ろうとしない。面倒なのでこちらではいはい言ってブッチリ電話を切った。

横を見ると、部下が気の毒そうな顔をして僕を見ていた。彼は左腕を折った僕のために、戸締りをいつも手伝ってくれているのだが、彼の帰るのまで遅らせることになってしまった。あの同僚、自分はクルマ乗ってるから関係ないんだろうけどさ。

慌ててバス停に向かい、着いてからの僅かな時間にコンビニで買い物をした。携帯に着信があったのに気付いて見てみると、その同僚からである。どこまで電話してくるんだ。応答する気にはとてもじゃないけれどなれなかった。

Ubuntu が重い?

ネットである技術系のレビューを読んでいたときのこと。そのレビューというのが、Windows XP で使用していた端末に android をインストールする、という内容だったのだけど、それを書いているライターが、android に至るまでに試した OS の一つとして Linux を挙げていて、そこにこう書いていたのだ:

次に考えたのはUnix系のOSである「Linux」で、ディストリビューション(ユーザーがLinuxをインストールできる形にまとめたもの)の一つである「Fedora」をUSBメモリーから起動して使ってみたが、残念ながら思ったほど軽くない。同様のLinuxディストリビューションである「Ubuntu」はもっと重いという話も聞く。

うーん。bootable な USB スティック用のイメージとして何が重くて何が軽いか、という話なら分からないでもないのだけど、Fedora が重くて Ubuntu がもっと重い、とかいうのは、正直言って意味が全く分からない。何が言いたいんだろう、この人は。

たとえば僕は、Debian GNU/Linux を使っているわけだけど、おそらく Debian でも、いわゆる御仕着せのデスクトップは重いんだろうと思う。僕の場合は XFCE を使っているし、無意味に重くなるだけのツール(たとえばスクリーンショットをアイコンとして提供するためのツールとか)は徹底して外してあるので、デュアルブートできる Windows 8.1pro と比較しても阿呆程軽いわけだ。

今更こんなことを書きたくもないのだが、Linux の各種 distro は、個人環境を徹底的に選択・再構成できる。必要だったら kernel の reconfig だってできる。いや、実際僕は Debian が提供する kernel image なんか使ったことはまずなくって、常にその時点での最新の kernel から自分で kernel image をコンパイルして使っている。無駄なものは要らないから、kernel の config 時に徹底して外しているし、その代わりに、例えば mount することの多い ntfs はモジュールでなく kernel image に include してあったりする。

まあ、軽量化と称して、システムの構成に大規模に手を加えることのできない Windows と比較すること自体おかしな話なのだけど……別に Ubuntu だって、軽いウインドウマネージャーを選んで、無駄なユーティリティを消したデスクトップ環境を自分で整備すれば、軽く使うことは問題なくできると思うんだが……まあ、結局は、他の誰かに(責任をも含めて)負ってもらいたいだけなんじゃないの?

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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