TEXと L^ATEX

TEXは、アメリカのコンピュータ科学者である Donald E. Knuth が1970年代に数式を含む文書のタイプセッティング（印刷のためのいわゆる組版）のために作成したソフトウェアです。この時期は活版印刷の衰退に伴い数式の組版に長けた植字工が減っていた時期ですが、Knuth が自著 “The Art of Computer Programming” で試した電子組版の品質が到底彼の満足するものでなかったことが、開発の動機と言われています。

現在と違い、印刷品質のフォントを搭載した PC など存在していなかったので、TEXには Knuth 自身がデザインしたフォント、そしてフォントを生成するためのソフトウェア¹も含まれています。AMS（アメリカ数学会）等でその成果を公表し、フリーで公開したため、コンピュータ科学や数物系分野で急速に普及していきました。

TEXは決して簡単に使えるものではなかったのですが、1980年代に Digital Equipment 社の技術者 Leslie Lamport が、雛形となる書式に沿って比較的シンプルなかたちで文書を整形できる L^ATEXを発表しました。現在我々が TEXを使う、と言う場合、多くの場合はこの L^ATEX、もしくはそれをベースにした発展形のシステムを使うことを指すといっていいでしょう。