貧困者支援パスタ

ちなみに、この貧困者というのは多分に自嘲を込めて使っているわけだけど、懐具合が寂しいときなど、安く健康に、腹一杯食べたい!というときにお薦めのレシピである。

用意するもの(2人分):

  • パスタ(ペンネ) 200g
  • トマト缶 1缶
  • ぶなしめじ、えのき 各1株
  • 玉ねぎ 1/4〜1/2個
  • にんにく 1かけ
  • 鷹の爪 1〜2本
  • 肉類(ベーコン、ツナ缶、コンビーフ、鶏肉など、お好みで)
  • コンソメ(ブイヨン、中華スープの素でも可。鶏ももなどダシの出るもので作る場合はなくても可)
  • 塩、こしょう
  • エキストラヴァージンオリーブオイル
  • ハーブ(後述)
……と、まあ、こんなものかな。

まず材料の下処理。ぶなしめじは下部の菌床の部分を切り取り、ほぐしておく。えのきも菌床の部分を切り取ってから、フォークの先を根本に刺し、菌床のあった方にしごくようにしてほぐし、根本の細い株を除いて(これは後でソースに入れてしまってかまわない)から、長さが半分づつになるように切っておく。

前に何かのときにも書いたけれど、きのこ類を美味しく食べるコツは「洗わないこと」。もし汚れが気になる場所があるようだったら、刷毛、あるいは濡らして固く絞った布巾かペーパータオルなどで除去する。くりかえすけれど、きのこは決して水で洗わないこと

玉ねぎは頭と根を落としてから半分に割ったものを薄く串切りにしておく。にんにくは包丁などで叩き潰してからみじん切りにしておく。鷹の爪はヘタに近いところを切って種子を抜いておく。

次にパスタを茹でる。パスタを茹でるときは、パスタ 100 g あたり 1 リットル位の水を鍋に汲み、重量比率で 1.5 % 程度の食塩を加えて、煮立たせる。ここにペンネを投入し、時々かき混ぜながら規定の茹で時間茹でる。ペンネの場合だと大体10分程度だと思う。

パスタを茹でる間にソースを作る。まず、辛いのがお好みの方は、あらかじめフライパンに多めのオリーブオイルを入れ、鷹の爪を入れて極弱火にかけ、鷹の爪の色が黒っぽくなってきたところで引き上げる。もっと辛くしたい方は、鋏で細く輪切りにした鷹の爪を使って、オイルに入ったままの状態で以下の工程を行えばよろしい。鷹の爪が黒っぽくなったときに、オイルに赤く色が付いていれば OK である。これも補足しておくけれど、唐辛子の辛味成分は油に溶け易いので、必ずこのようにして辛味成分をオイルに抽出すること。後からたくさん入れても全体の辛味はつかない。

そこまで辛くないのがお好みの方は、鷹の爪とにんにくを冷たいフライパンに入れ、上から多めのオリーブオイルを垂らし、弱火にかけて香りを出す。先の工程を経由された方は、オイルが若干冷めたところでこの工程をやっていただければよろしい。この際に、にんにくと共にハーブを使うとぐっと味に深みが出るのだが、ベーコンやコンビーフを使う場合はローズマリー、ツナ缶や鶏肉を使う場合はタイムをメインに使われるといい。ドライで粉砕されていないものを買うか作る(特にローズマリーは鉢植えで簡単に栽培できるのでお薦めである)かして、鷹の爪やにんにくと一緒にオイルに香りを移すわけだ。

オイルに香りが移ったところで、玉ねぎを投入し、全体に油がまわるまでかきまぜる。ちょっとしんなりしたところで、肉類を投入し、さっと火を通したところで、きのこ類を投入する。きのこを炒めるときは必ず強火で炒めること。軽く塩を振って炒め、表面に水気が出てきたところで、トマト缶と、空になったトマト缶の中を水ですすいで、その水(缶に 1/4 位?)も一緒に鍋に投入する。水気が足りないと思ったら、パスタの茹で汁で調整する。そこにコンソメ(僕は化学調味料無添加のコンソメか、同じく化学調味料無添加の中華がらスープを使うことが多い)を適量加える。ここで味見をして、こころもち控え目に塩味を決め、こしょうを振ってから、ソースのとろみが出るまで中火で煮詰める。

そうこうしているうちにパスタが茹で上がるので、ザル等で湯から取り出してソースの中に投入し、鍋を煽ってソースを絡める。この際に水気が少ないようだったら、やはりパスタの茹で汁で調整すること。ソースを絡めながら3分程加熱し、ソースを十分にパスタに行き渡らせる。

これで出来上がり。仕上げにバジルやミントを刻んだものをかけて全体になじませ、粉チーズをかけていただく。

……というわけで、簡単でしょう?コンビーフ(最近は馬肉入りのは『ニューコンミート』というそうだけど)を使うと、肉の繊維が解れたのがペンネに絡んで、いい感じになる。勿論ツナ缶で作っても美味しくいただけると思う。

いわしの梅煮

昨日、手頃な大きさの鰯が安かったのでまとめ買いして、いわしの梅煮を炊いているところである。

梅煮のレシピを読んで最初に作ったのは、確か「辻留」の辻嘉一氏の随筆だったと記憶している。鍋の底に竹の皮を敷いて炊くそのレシピは、今でも辻氏の本を御一読いただければ再現できると思うけれど、ここ最近僕が採用しているのは、『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』で濱本良司氏が紹介したこのレシピである。関西の料理らしい、丁寧なレシピである。単純に、ここに書いてある通りに作ればいいわけだが、いくつかコツがあるので、それを書いておくことにする。

まず、いわしの下処理だが、いわしは身が傷付きやすく、味も抜け易いので、真水に触れさせてはならない。このレシピでは塩水で洗うように書かれているが、海水と同じ位(重量濃度で 3 % 程度)の塩水をボウルに作って、その中で洗う。市販のいわしで、よく頭が落とされて内臓が抜かれた状態のものがあるのだけど、これを使う場合でも掃除は必要である。腹に鱗があるので、これをそうっと包丁などで除去して、腹を肛門のところまで切り開く。腹腔には黒い腹膜が被っているのだが、これがいわしの臭みの源になるので、内臓(頭ごと除去されていても、肛門に腸の一部が残っていたり、卵巣や精巣が残っていたりすることが多い)共々、ボウルの塩水の中で、親指の腹の指紋を使ってやさしく擦り取る。このレシピでは酢水で下茹でするので、水気を拭き取らずにそのまま鍋に並べてもらって構わない。

そして酢水で下茹でをするわけだが、僕はここでは純米の米酢を使っている。いわゆる合成酢の類でも、その後味を付け直すので問題がない、と言われそうだけど、調味料には少し贅沢をした方が、こういう料理は美味しくなる。醤油共々、あまりケチらないようにした方がよろしい。

酢水を切った後、酒と水を等量入れた中に調味料を加えていくわけだが、僕はここでは料理用清酒を使っている。いわゆる料理酒は、酒税法対象になるのを回避するために塩が添加されている上に、基になっている酒の質が著しく悪いので、手元にちゃんとした日本酒のない方は、たとえば宝酒造の「料理のための清酒」などを購入されることをお薦めする。できれば(淡麗辛口ではない)純米酒を使われると申し分ない……たとえば「美少年」とか。醤油も、脱脂大豆やアルコールを使用していないものがお薦めである。何か僕が贅沢でこういうことを書いていると思われそうだが、こういう料理だからこそ、調味料に少し贅沢をすると差が大きい。貧乏人(僕もこの範疇だ)はむしろ調味料でケチるべきではないのだ。

そして、おそらく一番問題になるもの……それが、梅干しである。これに関して書きたくて、今日こうやって blog にわざわざこんなことを書いているのである。実は、スーパーで普通に売っている梅干しでいわしの梅煮を作ると、おそらくかなり高い確率で、美味しくない梅煮が出来上がってしまうのだ。残念ながら、それが今の日本の現実なのである。

どういうことか、というのは、スーパーで売っている普通の梅干しのパッケージを引っくり返して、原材料をチェックしてもらえばすぐに分かる。たとえば、今ちょっとググって出てきた、ある梅干しの原材料のところを見てみると、こんな風に書かれている:

原材料: 梅、漬け原材料〔食塩、還元水飴、砂糖、発酵調味料〕、調味料(アミノ酸等)、酸味料、ユッカ抽出物、 ビタミンB1 (原材料の一部に大豆を含む)
……残念ながら、これが今の日本の梅干しの現実なのだ。先日、某量販店に行ったときに、試しにそこで売られている梅干しの原材料を全てチェックしたが、この手の添加物を使用していない梅干しは、残念ながらひとつも存在しなかった。

梅干しを作るときは、まず熟した梅の実を食塩で漬け込む。浸透圧で、梅の水分とクエン酸等が外に出てくる。これを白梅酢と言うのだが、これが十分上がってきたところで梅を取り出して天日干しする。白梅酢に塩で揉んで色を引き出した赤紫蘇を漬け込んで赤梅酢を作り、この赤梅酢に再び梅を戻す。これを1か月程寝かせてから、梅を天日で3日間干す……いわゆる「土用干し」というやつだ。土用干しが終わったところで、赤梅酢の中に再び漬けて熟成をかけ、ようやく梅干しが出来上がる。

このような作り方をした梅干しは、20 % 以上の塩分を含んでおり、梅酢に起因する酸味や香りも強い。昨今の減塩ブームや、この強い酸味や香りを敬遠する向きがあるので、梅干しの生産者は、せっかく作った梅干しを流水に何日か晒して、塩と酸味を抜く。その梅に、先の調味料を沁み込ませたものが、スーパーなどで売られている梅干しの正体である。

いわゆる JAS(日本農林規格)法では、このように塩抜きをした後調味料を沁み込ませたものを「調味梅干」、昔ながらの梅干しを「梅干」と表示することが義務付けられている。和歌山名産の南高梅などの、大粒のものを店頭でよく見かけるけれど、そういう(世間では「高級」だと思われているであろう)ものも、ほとんどがこのような「調味梅干」である。おそらく皆さん、甘酸っぱくて美味しい、などとよく買われているのかもしれないが、いわしの梅煮のように、梅の酸味と香りを調味料として使う場合、この「調味梅干」では十分な味や香りが出ない。それらは塩分と共に、梅干しの外に流れ出てしまっているのだ。いわしのような、味も匂いもキツい魚に、こういう梅干しでは太刀打ちできない。

僕は茨城・水戸で生まれ育ったわけだが、水戸は偕楽園の梅で作った梅干しが比較的容易に入手できたこともあって、調味梅干というものには十二、三歳位までお目にかかることがなかった。しかし、他所で何かのときに梅干しを食べることがあって、口に入れた途端に「こりゃ駄目だ」と吐き出したのを覚えている。明らかにグルタミン酸や甘味が足されたそれは、どう考えても僕にとっては「梅干し」とは違う食べ物だったのだ。

しかし、現時点において、JAS 法で言うところの「梅干」はもはや絶滅の危機にあると言ってもいい状態だ。大阪に住んでいた頃、某百貨店で「梅干」を探していて見つからず、店員に、

「なるだけ塩分濃度の高いものはありませんか」

と聞いたときの、あのまるで異形のものにでも遭ったかのような表情は、未だに忘れることができない。

名古屋の金持ち連中の間で有名な割烹に、ちょっと用事があって飯を食べに行ったことがあるのだけど、そのとき、店主に講釈を垂れている客に出喰わしたことがある。その人物は、店主の出した鱧の湯引きに添えられた梅肉が気に入らなかったらしく、

「いいか、お前はまだ若いから知らないかもしれないけど、梅肉ってのはもっとこう味があって、まろやかじゃなきゃいけないんだよ」

などと説教めいたことを言っていて、僕は、あーなるほどな、と思ったのだった。その客が帰ってから、店主に、

「この店で梅肉に使ってる梅干しはどんなものですか?」

「え?……はいはい、これはですね、うちの母ちゃんが漬けた梅を使ってるんですよ」

あー、やっぱり。グルメぶってこの店で飯を食っている客も、もはや本当の梅干しの味を知らないということか、と、暗澹たる気持ちになったのだった。まあでも、それが日本の食文化というものの現実である。

……さて。いわしの梅煮の話に戻ろう。ネットで探してもらうと、梅干しの直販をやっている農園などで、昔ながらの漬け方をしている「梅干」を見つけることは、まだ不可能ではない。目立たなくなってはいるけれど、原材料に「梅、食塩、赤紫蘇」位しか使っていない梅干しがきっとある筈だ。このような「梅干」を使っていただければ、梅煮はきっと美味しく作れると思う。

勿論僕も、そういう梅を探してストックしてある。普段こういう「梅干」を食べるのはちょっと……という方も、こういう「梅干」は本来の梅干しとしての長期保存が可能で、乾燥や高温多湿さえ避けてもらえれば、使う頻度が少なくても問題なく保存できるので、もし梅煮を作られるのであれば、事前に確保していただければ、きっと満足していただけると思う。逆に言うと、いわしの梅煮を美味しく作るのに気をつけるのは、これ位のことで十分なのだ……ああ、勿論いわしは鮮度の良いものがいいと思うけれど、それはスーパーとかで買われても、あまり問題ないと思うので。

Thomas はこんな風に晩飯を作っている

ごそごそと買い物に出かけ、人参、じゃがいも、玉葱、鶏手羽元、野菜ジュースを購入し、帰宅。

まず、生のローズマリーたっぷり、にんにく1かけすりおろし、しょうが2かけすりおろし(しょうがは皮を剥かずにすりおろすのがポイント)、タイムをガラスボウルにとり、エキストラヴァージンオリーブオイルをたっぷり注いでから、鶏手羽元を入れて手で揉み込み、常温でマリネしておく。この間に、人参、じゃがいも(皮を剥かずに使うのがポイント……こうすると胸焼けしない)、玉葱(たっぷり2個使う……ひとつは繊維に沿って細切り、もうひとつは具になる程度の大きさに切る)を洗い、切り分けておく。あと、冷蔵庫にあったぶなしめじを一株、菌床のおがくずを除去してから手でばらしておく(絶対に洗わないこと……これは茸を使うときの基本である)。

深鍋にエキストラヴァージンオリーブオイルを多めに入れて火にかけ、マリネしていた手羽元のボウルの中身を全て投入して炒める。にんにくが焦げ易いので、底を木べらでこそぐようにしながら炒めるといい。手羽元の全面が白くなったらたまねぎを入れ、全体に油がまわったら他の野菜も入れ、ざっくり混ぜる。全体に油がまわったら、ホールトマト1缶をつぶしながら入れ、野菜ジュースを具がひたひたになる位まで、酒(僕は料理用の日本酒……料理酒ではないので念の為……を使ったが、白ワインがあればそれを使うのが順当だろう)を 100 cc 程度投入する。一煮立ちしたところで、ローリエ(葉は2つに折って入れるとよい)とブイヨン(僕はマギーの化学調味料無添加のものを使っているが、中華の鶏ガラスープなどでもいいだろう……できれば化学調味料の入っていないものをお薦めしておく)を入れておく。

今日は暑いし、しっかりした味にしたいので、ホールのカルダモンを数個、皮を剥いて、中の黒い種子を乳鉢であたって粉にしてから、鍋に投入する。同じように、クミンシードも小さじ1〜1.5程度を乳鉢であたって粉にしてから、鍋に投入する。

じゃがいもが透き通ってきたら、カレー粉、塩で味を整える。少しクッとくる感じにするのには、醤油やソースを好みで加えるといい(ソースはデーツや甘草が入っているので、こういう目的に向いているのだ)。好みの感じまで煮込んだら、火を止め、ガラムマサラを入れてひと混ぜすれば完成である。

このカレーのポイントは、水を使わないことと、カルダモンをがっつり効かせることである。カルダモンは、効かせるのと効かせないのとで差が実に大きい。この味を覚えておくと、カレー屋に入ったときに、そこがスパイスをケチっているかどうかがよく分かる(カルダモンは結構高いので、手抜きするときにはおそらく真っ先にケチられる)。そういう意味でも、是非一度お試しを。

アルム石について

僕は交感神経・副交感神経のバランス維持がうまくいかないので、この季節には汗が止まらなくて往生するときが多い。そんなわけで、いわゆるデオドラント問題に関してはそれなりに気を遣っている方だと思うのだけど、この何年かは、あるモノのおかげで非常に楽をしている。

それがアルム石と呼ばれるものである。これは何かというと、早い話がミョウバンの天然結晶である。タイ等で産出するものなのだそうだが、タイではこれが昔からデオドラント目的で使われている、という話を、僕はたまたま知っていた。で、日本でこれが商品化されたときに速攻で購入して、今もこれを使い続けている。

使い方は極めて簡単で、シャワーの後等に、水をかけて濡らしたアルム石を、腋の下などにこすりつけるだけである。ミョウバンは収斂作用と殺菌作用があるので、汗腺を引き締めつつ汗による雑菌繁殖を防いでくれる。朝これをしておけば、その日一日は大丈夫である。

日本では、僕が最初に見かけたときからずっと、デオナチュレ(株式会社シービック、現在は株式会社ミロットが販売元となっている)というブランドで販売されている。この会社では派生商品をいくつも出しているのだけど、他に何も細工をしていない、そのものずばりのアルム石……この会社の商品で言うと、「デオナチュレ クリスタルストーン」「デオナチュレ 男クリスタルストーン」がお薦めである。何年も使えるので、決して損な買い物にはならないと思う。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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