はかもなきこと

何かに集中していると、人は傍目に見ておかしな行動をとることがままある。しかし、当の本人はそんなことを意識していないので、言われてショックを受けることが多いものだ。

LaTeX で文書を書いていたときのことである。ふと、この部分にアンダーラインをひきたいなあ、あれ、どうやってひくんだっけ、と思ったのだった。リファレンス代わりの本を手に取り、索引を開く。えーと、アンダーラインだから「傍線」かなあ、ぼ、は行、えーと……

と、横に居た U が笑い出した。

バイキンマンかあんたは?

最初は集中していたので分からなかったのだが、あー……索引をひくときの癖で、つい「は〜ひふ〜へほ〜」と口走っていたらしい。うーむ。確かにこう言われても仕方あるまい。可笑しくも情けない話であった。

『バカの壁』の源流

養老孟司氏の『唯脳論』を読み進めているわけだけど、この中に、おそらくは『バカの壁』の源流になったのはこういうことか、と思わせるくだりがある:

言語を用いれば、相手の考えがある程度わかる。なぜか。それは言語を表出する側と、それを聞いている、あるいは読んでいる側で、似たような脳内過程が生じているからである。言語の場合、その類似の厳密性は数学よりも弱い。したがって、数学はより明確に脳の機能を反映する。あるいは、より基礎的な脳の機能を示す。

もっとも、言語も数学も、ある程度を越えると、理解する人の方が減る。つまり、そうした脳内過程には、個体差を越えるほどの一般性が無い。時代によって、同じ考えの理解度が違ってくるのは、教育、つまり環境の問題に過ぎない。江戸期の人に微積分を教えても、いまの人同様によく、あるいは悪く、理解したであろう。

前にこの blog で、Twitter のアイコンに日の丸を入れている輩をコキおろしたときに、余程癇に障ったのか、「バカの壁」とだけ書いてリンクを張った輩がいたけれど、そう、それこそがバカの壁である。ただし、そういうことだけ書いているというのは、これは自らの脳内過程を表出する術に尽きたのだ、と言われても仕方あるまい。そう、壁があるのは件の輩の脳の内なのである。

書籍、二冊査収

養老孟司氏の『唯脳論』(ちくま学芸文庫)と、『暴走する脳科学――哲学・倫理学からの批判的検討』(河野哲也 著、光文社新書)を査収。

前者は難解だという話が巷で出ていたけれど、全くそのようなことはない。極めて明解に書かれている。解説が脳科学者の澤口俊之氏というのが少し笑える(いや笑っちゃいけないのかね……そう言えば、Wikipedia で彼のセクハラ問題に関する記述が全て抹消されているのはどうしてなんだろうなあ)。

後者は、いくつか読んだ脳科学への哲学・倫理学的考察の中で最も食指を動かされたので査収した。これも例のアルコー延命財団絡みの考察の過程で出会ったのだけど、やはりこういう本は図書館から借りるだけでは物足りない。

えーツ!

今日は何となく朝から身体の節々が痛かった。厭な予感がしたのだ。というのも、先週の金曜、遅い時間に電車に乗ったとき、車両の端にひどく咳込む男性がいて、手で防ぎもせずにゲホゲホ咳をしまくっていたからである。

昼頃、電子体温計を腋下に挟んでみると……36.8度。うーん、微熱だな。しかし、寒気と全身の倦怠感がひどい。咳が出て胸が少し苦しい感じもする。

そのまま夕方まで過ごしたのだけど、これはおかしい、もう一度体温を……と計ってみると、今度は38.1度。いかん、これぁアレかもしれない。

僕と同じような症状で、これはインフルエンザなんじゃないか、と思われる方は、とりあえず 38.0度をひとつの境界線と考えるといいらしい。しかし、最近は体温が38度未満でインフルエンザが発症していることが全症例の3割程度ある、という話もあるので、こういうときは抗体検査を受けることをお薦めする。僕の場合は、近所の耳鼻咽喉科と内科の医院、どちらに行こうか少し悩んだ後に、耳鼻咽喉科の方を受診することにする。ここのドクターはアレルギー関係で名が知れているせいか、子供の患者が多かったのだが、初診なので問診票を記入して、マスクをしてしばし待つ。

ドクターは最初からインフルエンザを疑っていたらしく、ネブライザーでの吸入を指示しながら、抗体検査キットの綿棒を僕の鼻に突っ込んで、念入りに粘膜組織を絡め取った。吸入中に、

「出てる?あー、出てるの!」

どうやらビンゴらしい。吸入を終えて診察席に戻ると、検査キットの表示部を示される……そこにははっきりと、AとCのところにラインが見えている……A型に感染、で決まりである。ドクターはそれを見せながら、

「分かってて来たんでしょ?」
「……はあ」

どうもなまじ慣れているのも困りものである。ドクターは僕にリレンザ©(ザナミビル)を処方し、看護師から吸入キットの使用方法の説明を受けた。

というわけで、今日から、体温が37.5度まで下がってから2日間を経過するまで、僕は外出ができないことになってしまった。まさに気分は表題の如し、である。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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