ジャムを煮る

秋になると毎年必ずすることがある。大したことではないのだが、まあタイトルの通りで、ジャムを煮るのである。ジャムなんか作るんですか?とよく驚かれるのだけど、別にそんな大したことではない。実家では母が毎年煮ていたし、U の実家でも毎年御母堂が煮ていたのだそうだ。作り方も別に何も難しいことはない。

守らなければならないことが二つだけある。これを守りさえすれば、後は大概どんな風にやっても失敗することはない……ああ、勿論、ズボラしていて焦がしてしまう、なんてのはダメなわけだけど。一応、ちゃんとやり方を書いておくことにしよう。

用意するのは、まずは林檎。これは後程詳しく書くけれど、必ず「紅玉(こうぎょく)」という品種を使うこと。どこぞのパティシエがどんな他の品種を使っていても、どこぞの料理評論家が何をほざいていようと、そんなことは無視すること。日本で通常入手できる林檎の場合、加熱調理する林檎の料理の失敗の最大の要因が、紅玉以外の品種を使うことであるから、ここは何が何でも厳守すること。だいたい1個が200数十グラムというところだろうから、片手鍋で煮るなら3〜4個あれば足りるだろう。

そして砂糖。一般に、ジャムは焦げつくのを防ぐのと出来上がりの色目を良くするためにグラニュー糖を用いることが多いが、林檎のジャムに関しては三温糖でも問題ない。林檎の重量の 30% を目安に、林檎の熟し具合を見て量を加減する。芯を抜いて8等分して、厚さ 1〜2 mm 程度にスライスした林檎を鍋に入れ、砂糖を加えてから全体を木杓子でかき回し、砂糖と林檎が馴染んだところで火を点ける。やや強めの火で、林檎から出た水分が上がってくるまで炊いたところで、火を弱め、時々かき混ぜながら、好みの粘度になったところで出来上がりである。上品な感じにしたいなら、皮を剥いて、剥いた皮はガーゼを袋にしたものの中に詰めて一緒に炊くとよい(皮を一緒に炊くのが重要である……色の問題もあるが、皮から出るペクチンがジャムに適度な粘度を与えるので)。これだけである。

世間で本などに載っているレシピには、やれレモンジュースを入れろだの、水を入れないと焦げるだの書かれているものがあるけれど、僕はこうやって作っていて問題が生じたことはただの一度もない……いや、一度だけあったな。そうそう、それこそが林檎に起因する問題だったのだ。

一度だけ、酸味のない、まるで飴炊きのような代物が出来上がったことがあった。確かに紅玉と書かれた林檎を買ってきたのに、である。あのスーパーではどうも紅玉と言って実は紅玉じゃない林檎を売っているのかもしれない、と思い、それ以降、そのとき買ったスーパーでは紅玉を買わないようになったのだが、それ以来こういうことになったことはない。どうも考えた通りだったようで、やはり紅玉を使っている限りは何も問題はないようだ。簡単なので、皆さんも是非お試しになられるといいと思う。

驚愕の事実

僕が大学院生の頃、先にブログで書いた某国立研究所からお誘い頂いて、そこに就職することになったのだが、教授に呼ばれて、

「Thomas 君なあ、君、阪大辞めてもらわなあかんのや」
「へ?どういうことですか?」

就職を控えているときにとんでもないことを言い出す教授に、僕は全身粟立つ思いで聞き返すと、

「そらそうや。大学院生しながら研究員はでけへんやろ」
「はあ……しかし、そうなると、学位は?」
「アホやな君は。君はもう単位とか問題ないから、2年の猶予期間内に学位を取れればオッケーなんや。もう公聴会も済んだしな」
「なるほど。ということは、どうすればいいんでしょうかね」
「まあ、退学届を出してもらう、ということになるんかな」

ということで、学生課に相談に行ったのだが、

「……なるほど。では、来月末日付の退学届を出していただくということになります」
「わかりました」
「つきましては」

と言うと、その事務方の人はこう続けたのだった。

「学費をお払いいただけますか」
「?僕は学費免除なんですが」
「ええ。でも前期の途中で退学ということですから、この期の学費はお支払いいただくことになるんですよ」
「……ひょっとして、学費を納入しないと退学できない、と?」
「そういうことです」

えーそんなー、と思いつつも、泣く泣く金を都合して学費を払い、領収書のコピーを添付して退学届を出し、この年の6月末に阪大院を退学、7月の頭から就職、そして9月の末に学位を授与されたのだった。

で……それ以来、僕は最終学歴には「単位取得退学」と書くことにしていた。それで今まで何も問題は起こらなかったのだ。しかし、今回、前の blog に書いた経歴の書類と一緒に、院の修了証明書が必要になって、僕の場合は「単位取得退学証明」だろう、ということで、その旨阪大に書状を出して、証明書の発行をお願いしていたのだが、先程阪大学生部から電話がかかってきた。

「あのー、Thomas さんは課程博士を授与されていますよねえ」
「ええ」
「ということはですね、博士課程の単位取得退学証明はできないんですよ」
「……え?ということは、どうすれば?」
「Thomas さんの場合はですねえ、博士課程修了ということになるんですよぉ」
「……え?では、単位取得退学じゃない?」
「ええ、修了です」

驚愕の事実!僕の最終学歴は、実は「博士課程修了」だったのだ!今まで散々、

「いやー僕の最終学歴は『退学』でしてねえ……ヘヘヘ」

とネタにしてきたのに!もうネタにはできないのか?いやそれ以前に、修了だったら学費返してよぉ!あれ納めるの大変だったんだからさぁ!……しかし、学位を授与されて、今迄何をしていたのやら……

経歴を書く

何日か前から、僕は心に重い塊を抱いていた。厭だ。避けたい。やりたくない。しかし、やらなければならない。そして今日、覚悟を決めた。

ボールペンを取り、罫線の間を埋めていくが……あ゛ーーーーーーー!間違えた!あ゛ーもーやだやだ!

……と書くと、一体何の話なのか、と問われそうだが、実は自筆の経歴書を書かなければならない用事ができたのだ。これがもう苦痛だったらない。

昔っから、何が嫌いって、履歴書や経歴書の類を書くのが何より嫌いなのだ。この手の書類は手書きであることを要求される。誰かに代筆を頼むこともないわけではないけれど、それが代筆だとばれるのも厭だから、嫌々自分で書くことになる。しかしだな……

僕の経歴をざっと書いてみると、こんな感じだ。

  • 茨城県立水戸第一高等学校 卒業
  • 大阪大学工学部材料系 入学
  • 大阪大学工学部材料開発工学科 卒業
  • 大阪大学大学院工学研究科博士前期課程材料物性工学専攻 入学
  • 大阪大学大学院工学研究科博士前期課程材料物性工学専攻 修了、修士(工学)
  • 大阪大学大学院工学研究科博士後期課程材料開発工学専攻 入学
  • 大阪大学大学院工学研究科博士後期課程材料開発工学専攻 単位取得退学、博士(工学)

……ここまででいい加減疲れてくるわけだけど、まだまだ続く。

  • 通商産業省工業技術院大阪工業技術研究所 入所、通商産業技官
  • 省庁改編にともない通商産業省産業技術総合研究所と名称変更
  • 省庁改編にともない独立行政法人産業技術総合研究所と名称変更、同職員に職名変更
……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!と、この辺でもう書いているのが厭で厭でたまらなくなってくるのだが、残念なことにこの後も経歴は続くのであった。

正式な職名だけだったらこれだけでもいいんだろうけれど、実際には、大阪大学リサーチアシスタント、とか、某大学の非常勤講師、とかいうのもあるので、そこまで書くともう訳が分からなくなってくる。それでもコンピュータで書くなら、コピーペーストで少しは労力も減らせるのだけど、自筆ではそうはいかない。しかも僕は生来の悪筆で、しかもよく書き間違えるのだ。今回も、ちょっとした経歴の書類を書くのに、フォームを5枚も6枚も無駄にするはめになった。

まあでも、書くことが多いというのは、贅沢な悩みなのかもしれない。U にもそんなことを言われたけれど……しかし、やはりこの手の書類は苦手だ。おそらくこれは一生変わることはないのかもしれない。

今回書いたものを U にチェックしてもらっていたのだが、経歴の後にある自己紹介の部分を読んでいた U が……

「ん……『自分の長所』に『自分の短所』ねえ……」
「ああ、そこ、なんて書こうか迷ってたんだけどね」
「これさ、『自分の短所』に『字が汚い』って書いておくといいんじゃないの?」

で、提出先の担当者の方から電話があったときに、「書いといた方がいいでしょうかね」と訊いたら、思い切り笑われてしまった。やはり字が綺麗に越したことがない。

ペスト・ジェノヴェーゼ

U宅にバジルの鉢植えを預けていたのだけど、もうそろそろバジルも終わりの時期である。枯れないうちに有効利用しよう、ということで、今日はペスト・ジェノヴェーゼを作った。

バジルを刈り込み、葉だけを取ると約 40 g 程あった。この量に対して、松の実を 40 数 g、ニンニク大1欠け、ペコリーノかパルミジャーノのようなハードタイプのチーズが十数 g、それにエキストラヴァージンのオリーブオイルが 120 ml、というところだろうか。

実は昨日、某食材店に松の実を買いに行ったのだけど、中国産の怪しいものしか売っていなかったので、今回はクルミを使うことにする。まずバジル以外を全て(ニンニクはすりおろして使用)フードプロセッサーに投入し、よく攪拌しておいてから、ひとつかみのバジルを入れ、短時間の攪拌で潰して、を繰り返す。このとき注意するのは、あまり長時間攪拌し過ぎると温度が上がって、風味を台無しにしてしまうので、あまり慌てずに行うこと、位だろうか。

使うときには、アンチョビのフィレを入れ、よく潰して合わせてから、パスタを茹でてからめるだけ。冷蔵か、長期間保存するときはアイスキューブの皿などに入れて冷凍してしまうと、1回づつ使うのにも重宝する。バジルを栽培されている方がおられたら、今のうちに作っておくと非常に便利なので、おすすめである。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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