朝、目が覚めると

テレビが映らなくなっていた。昨日の話である。

土曜の深夜、タモリ倶楽部(レコーディングエンジニアとしてあまりに有名なかの内沼映二氏が出演して、ミックスダウンに関する短いが非常に実践的な話を聞くことができた)を観ていたときには何ともなかったのだが、朝起きると、どのチャンネルもアウトである。うーん……

うちの機材のトラブルを疑ったが、結局どれもシロだった。ということはアンテナか……昼近くに、屋根に登る音が聞こえたので、あーやっぱりアンテナだったか、と得心したのだが、しかしやはり根本的に納得できない。なぜって、今住んでいる集合住宅の大家は電気屋なのだ。おそらくは連日の猛暑で、屋根か何処かの金属部が膨張したのか、樹脂の部分が劣化したのか、いずれにしても、アンテナの施工がちゃんとしていたら、こんなことが起こるはずがないのだ。日曜の未明に突風が吹いていたわけでもないというのに。

僕はアマチュア無線をやっていたから、無線のアンテナ施工は当然だけど自分でやっていた。アマチュアは助け合いで成立しているので、前の職場の上司が別荘に建てたタワーの上で、命綱をつけて施工したりしたこともある。それに比べたら、テレビアンテナの施工なんてかわいいもので、ちゃんとステーを張っていさえすればそんな変なことは起こらないはずなのだ。しかし、高いところから世間の屋根のアンテナを見てみると、ステーを張る上での定石(ステーを別のステーで引っ張っても意味がない、とか、ステーはできるだけ2箇所でとるべきだとか)を守っているアンテナは、見つけることが難しい程に少ない。

集合住宅だと自分で施工できないから、こんなことになるわけだ。あー嫌だ嫌だ。今やテレビもライフラインのひとつなのにさ。

で、昨日2時間ほどごそごそやっていた業者は、うちのポストに「今日中の復旧が不可能と判断したので後日対処します」という紙を放り込んで行っただけ。今朝もテレビは映らないままだった。

【後記】アンテナはその後復旧したのだが、外から見ると、飴のようにぐんにゃり曲がったマストをそのまま使っている……よくあんな仕事しててプロだとか言えるよなあ。

東の窓に蓋が要る

今、時刻は午前6時。さっき目が覚めてこれを書いている。

僕の暮らしている部屋には、東に大きな窓がある。北枕などあまり気にする方ではないのだけど、何となく、頭を向けるのは南か東を選ぶ癖があって、部屋の配置の都合から、今は東、つまりこの窓の方に頭を向けて寝ているわけだ。標記の件というのは、要するにこの窓のことである。

朝になると、この窓に向けて思いっきり太陽の光が差し込む。困ったことに、この窓は道路に程近いところにあって、太陽とこの窓の間に遮るものは何もない。だから、たとえ厚めのカーテンを提げていても、陽光は容赦なくそれを貫き、僕は眩しくて目が覚めるわけだ。

医者に聞いてみたところ、この目覚め方は非常に健康的なのだという。目覚めに強い陽光を浴びることは、睡眠障害や鬱の治療にも使われていて、ライフサイクルを整え、有効な眠りと確実な目覚めを得るのに大きく貢献するらしい。いやそれは大いに結構だと思うのだけど、せめてもう30分位遅くすることはできないのだろうか。朝の時間は金、とドイツ人は言うけれど、夏至が近づいてくる今日この頃、目覚める時刻が早くて少々困っている。

そんな理由で、今僕はあまり夜更かしができない。平均5〜6時間の睡眠で、朝も早くからごそごそやっているのもなんだか妙な話ではあるが、早起き、しかも陽光の眩しさで早起きしているというのは健康的なものらしい。寝過ごしたいのに早起きせざるを得ないというのも健康的と言えるものなのだろうか。

実はこんな感じの

皆さんは、アカイカというイカをご存知だろうか。かなり大型のイカで、大きいのに大味ではないために、食品産業では重宝されるイカらしい。これは余談だが、以前、日本のとある漁村にダイオウイカが打ち上げられて、その村で「このイカを皆で食べよう!」ということで、巨大イカリングを作ったりして盛り上がったクライマックスに、村民皆で「せーの!」で口に放り込んで、数秒後に皆吐き出した、ということがあった。そのときの村民の話によると、食べた感じは「スポンジに海水を染み込ませて齧っているような感じ」だったそうで、なるほどたしかにそんなだったら食べられなかったろう。こんな風に、ダイオウイカは食えたものではない、という話だが、アカイカの方は、ちょっとモチモチした感じの食感で、冷凍するとまた食感が変わって美味しいのだ、という。

このアカイカを通販で販売されている I.C.ティアラム株式会社のネット通販店舗「山陰とれたて本舗」のページで公開されている画像をリンクしておこうと思う。こんな感じだ:

誤解なきよう更に書き加えておくけれど、このアカイカは美味しい。美味しいのではあるが、回転寿司屋の厨房の奥のまな板の上に、このイカがでで〜ん、と鎮座ましましている様を想像すると、正直言ってちょっと腰が引ける、かもしれない(いや、でも、安くて美味しい良品なんですよ、本当に)。

……という話を某所でしていたときのことだ。

「なるほどねえ。そういう、加工現場の見えない食べ物って、都市伝説になりそうですよね」
「でしょう?なんかねえ。いや、アカイカはいいんだけど、僕も知らない未知の生物がいたりしたら、ちょっと厭だなあ、と思って」
「たとえば、どんなのです?」
「うーん……」

こういうときは、S は頭の回転が速い。

「手羽先屋で、千手観音みたいに全身に手羽先が生えてる鶏を飼育している(手羽先屋の名誉のために書き添えておくけれど、そういう話は今のところないと思います)、とか?」
「あーそうそう。そういうの」
「それって、都市伝説としては結構聞く話だけどね」

僕の頭の中には、おおむねこんな感じの鳥が浮かんでいた。さしづめ、「生産者利益の追求のため、遺伝子操作で作られた異形の鶏」とでも言うところか。

「Thomas さん、そういうのってできないの?」

僕は iPS 細胞の話とかをして、そういう話はあながち完全にホラ話とも言えないご時世なんだよ、とか説明した。で……

「まあ、既存の生物のモディファイ、ってことなら、不可能ではないでしょうね。コストが割に合わないとは思うけど」
「……何だか気持ち悪い話ですねえ」

むしろ、僕に言わせれば、何から何まで未知の生物の方が気持ち悪い。そういう話をすると、

「たとえばどんなのです?」
「そうだなあ……たとえば、回転寿司のネタがね、そのネタからは想像もつかないような生物の一部だったとしたら、どうします?ホタテの貝柱、なんて、寿司ネタでは人気がありますけど、あれが実は筒状の生物のスライスだったらどうか、とか」
「筒状って?」

で、僕が彼らに説明したのがこんな感じのものだった。

「やめて下さいよ!僕、回転寿司で、ホタテ食えなくなっちゃうじゃないですか!」

と、あのとき皆に言われたけれど、こんな生物、実在したら、皆さんどうします?

無勉強?

mixi の Linux のコミュニティに「初心者のくだらない質問スレッド」というのがある。これの質問に時々答えようとするときがあるのだけど、やりとりをしているうちに嫌気がさしてしまうことが多い。世の中、自分の言う/書くこととか、他人の言う/書くことをろくに読まずに、ただ「教えろ」「教えろ」と言う/書く人が、どうしてこうもはびこっているのだろうか?

あまりにひどいので、あーここは「くだらない初心者の質問スレッド」なんだ、と理解して放置することにするのだけど、でも時々質問を読んで仏心を出してしまう。で……とある質問(この質問がそもそもおかしいので、率直に答えることが不可能なのだけど)に対して何事か書いたところが、

勉強で申し訳ありません」

勉強じゃなくて勉強じゃないの、日本語位ちゃんと書いてよ……ってな話になったわけだけど、世間で「勉強」という表記がそんなに一般的なものになっているのだろうか?

ここで、試しに google でこの二つの単語で検索をかけてみる。すると、今日の夜の時点で:

  • 勉強 の検索結果 約 12,700,000 件
  • 勉強 の検索結果 約 8,730,000 件
……え?ほら勉強は社会的に正しいとみなされている?数の論理で正誤を云々するんなら、Linux なんて使うのヤメテシマエ!って話だが、念の為にgoo 辞書でひいた「勉強」にリンクを張っておく。勿論だけど、勉強なんて項目は国語辞典には存在しない。

それにしても、悪貨が良貨を駆逐する、とは、トーマス・グレシャムもよく言ったものだ。日本の未来がいかに暗澹としていることよ。

【後記】さっきふと思ったのだけど、努めて好意的に見ると、「勉強」は「勉強」と「教養」を混同しているのか、という推論が成立する。まあそれでも、「勉強」という言葉を平気で人前で使う輩が無教養かつ勉強だということに、いささかの変わりもないけれどね。あと、「勉強」の方が検索結果の数が大きいのは、ひょっとすると google の仕様かもしれない……「勉強」という語が辞書にないから、「勉強」を検索した結果が入ってくる、ということが考えられる。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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