リンク等の確認

TeX Live 2012 の正式リリースに向け、tlpretest が着実に日々更新されている。実は OS X と Windows で更新ができなくなって、一からインストールし直し……という事態にも遭遇したのだけど、以前から書いているように texml-local をうまく使っているので、そう手間にもならずに済んでいる。

とは言うものの、『TeX Live を使おう──Linux ユーザと Mac OS X ユーザのために──』の内容に関しては、TeX Live 2012 に向けた revise が必要なので、合間をみてはちょこちょこ書き換えをしている。有り難いことに、その書き換えを TeX Wiki に反映してくれる方がおられる(いや、本当、お手数をおかけします……本当は僕が自分ですべきなのかもしれないんですが)ので、その方達の手間にならないように、変えるべきときはあまり小分けにせずに換えるように注意しているのだけど、内容の確認等で、ついつい五月雨式になってしまうことがないわけでもない。

今日は、以前気付いていたのに対処し忘れていた問題を思い出して、その対処をしていたところである。どういうことかというと、拙稿「日本語フォントのセットアップ」で参照していたサイトが移転したらしいのだ。

"Y.Oz Vox" というサイトがある。このサイトでは、自作のフォントが数多く公開されている。JIS 第3水準、第4水準までを網羅している本格的なものなのだが、これらの中に "MoboGothic / MogaGothic / MogaMincho" フォントというのがある。これらは M+ と IPA の合成フォントなのだけど、いずれも標準とボールド、2種類のウエイトを持っている。特に MogaMincho に関しては非常に貴重な存在である……IPA ベースもしくはそれに匹敵する品位のフリーの明朝体で、JIS 第4水準までカバーしていて、なおかつボールドを収録しているフォントは、僕はこれ以外には知らない。つまり、TeX / LaTeX で明朝の太字を埋め込む際、太字を使用したい場合には、この MogaMincho はほぼ唯一の選択肢、ということになるのだ。

勿論、たとえば IPA ex 明朝を fontforge で太くして使うことは不可能ではない。けれど、多くの人で共有できること、インストールすれば使えること、等を考えた場合、やはりこの MogaMincho の存在は貴重なものだと思う。拙稿「日本語フォントのセットアップ」でも、OTF パッケージを用いて5種類の字体(実際にはこれに加えて ebseries が使えるのだが)を版組みするのにも、太明朝体(モリサワの「太ミン A101」に相当)の代替フォントとして、この MogaMincho Bold を使用している。

さて、この MogaMincho フォントも公開されている "Y.Oz Vox"、僕は今迄ずっと http://yozvox.web.infoseek.co.jp/ が primary site だと思っていたのだが、アクセスすると「サービス終了のお知らせ」……えー? となっていたのだった。そもそも infoseek が楽天の持ち物になっていたというのも知らなかったのだが……で、焦ってググると、実は http://yozvox.web.fc2.com/ に移転しているのだった。僕は fc2 というと掲示板の印象が強くて、てっきり掲示板だけこちらに移動したのかと思い込んでいたのだったが……迂闊なことであった。

このことに気付いて、もう結構経つのだけど、今日まで拙稿「日本語フォントのセットアップ」のリンク先を変更していなかったのだった。これはいけない。ということで、早速変更しておいたのだけど、ひょっとしたらこの何週間か(いや、もっとか?)の間、フリーの日本語フォントのセットアップで「書いてあるのに落とせねーじゃん」という方が何人かおられたかもしれない。その方々には申し訳ないことをしてしまったけれど、とりあえずリンク先では MogaMincho だけでなく、ペン字や毛筆体などの、十分使用に耐える品位・グリフ数、しかも IVS(Ideographic Variation Selector…… Unicode で異体字を切り替える機構)にも対応したフォントが配布されているので、どうか御活用頂きたい。そして、こういう場にちゃんと書いておかなかったので改めて書いておくけれど、"Y.Oz Vox" およびサイト運営者には深く感謝の意を表するものである。

What's for?

今日、ついに Linux-3.4 が正式リリースになった……のだが、今回のリリースでは patch-3.4.bz2 のみが供給されている。github から無理矢理 snapshot archive を取得することができないわけではないのだけど、patch の方が traffic も少ないし……と、ダウンロードして、はた、と気付いたのだった。

これは何に当てる patch なんだ?

今、僕の手元では Linux-3.4-rc7 と Linux-3.3.6 の二種類の kernel を使っている。実は、過去に patch 絡みのトラブルでイタいめをみたことがあって、それ以来、kernel は tar されたソースのアーカイブを取得するようにしている。だから、手元にはこの二種類の kernel のソースツリーがあるわけなのだが、どちらにこの patch を当てようとしても、不整合がある旨のメッセージが出るのだ。

うーん。linux-3.3.7-rc1 ってあったっけっか……と ftp site を見てみると、ああ、ありますね。で、これで試してみたが、やはり不整合を注意される。うーん……と数分悩んで、はたと気付いた。kernel.org を見ると、3.3.x は stable、3.4 は mainline とちゃんと書いてあるのだ。ということは……じゃあ、この patch は 3.4 の直前の stable や rc にではなくて、直前の mainline に当てろ、ということなのか?

ということで、半信半疑で linux-3.3.tar.xz を取得して展開し、patch を当ててみると……エラーも warning も出ずに終了。なるほどー。そういうことだったのか。

ということで、現在 3.4 を build 中である。

踏んではいけないお百度

今日は日曜日。まあカトリックなので日曜の朝は教会に行くわけだが、今日はその後も予定が入っていた。某修道院のシスターに頼まれ事をしていたからだ。

このシスターは外国人なのだけど、日本語の読み書きは相当使える(外国人のシスターや司祭に知人がいると、己の外国語への不勉強を恥じることが多いなあ)。このシスターから、

「何か変な日本語変換が入ってしまって……」

ということで、昼過ぎに修道院を訪れる。シスターが持ってきたノートパソコンを立ち上げると……あー、これかー。うーむ。

このシスターは日本語と母国語を切り替えて使用するようにしている。だから、青の白抜き文字で "JP" と書かれたアイコンがメニューバーにあるのだけど、その右側には、Microsoft IME を入れていればそのアイコンが、google 日本語入力を入れていればそのアイコンが表示されているはずである。しかしそこには見慣れぬアイコンがある。これは……と、その時点で何となく読めたのだが、右クリックしてみると、果たせるかな、"Baido IME" の文字が。あーやっぱりかー、と呟きつつ、コントロールパネルを開き始めたのだった。

ここをお読みの方のどれ位が、Baido(百度)という会社をご存知なのか分からないから一応書いておくけれど、Baido は中国検索サイトの最大手である。こちらは皆さんご存知かと思うけれど、今から2年前の夏、google は中国からの撤退を表明して、世間で大きな話題になったことがある。これ以来、Baido はおそらく中国におけるポータルサイト市場で一人勝ちの状態である。一説では、中国の検索サイト市場の 80 % 以上を握っている、と言われている。

そんな Baido が日本市場を着々と狙っているのは、おそらく IT 関連の方々はよくご存知だろう。Baido の日本法人は 2006 年に設立されている……ちなみに、本社があるのは「あの」六本木ヒルズである。一時は、日本のケータイ関連を中心とした市場に、

  • モバイル検索「Baiduモバイル」
  • コミュニケーションプラットフォーム「てぃえば」
  • ソーシャルライブラリー「Baiduライブラリ」
……といったサービスを展開し、それなりに食い込んでいたのだが、これらのサービスからは、去年の夏に全て撤退している。

まあ簡単に言うと、悪い意味の中国式ビジネス、というか、とにかく商売がアラいのだ。「Baiduライブラリ」では、多量の違法アップロードによる著作権問題で物議を醸した。その他でも、どうもいい評判を聞かない。たとえば、『愛と苦悩の日記』という blog に、こんな話が掲載されている。むー。もうコントロールする感満載、という話である。

この Baido が現在提供している日本向けサービスで、おそらく一番力を入れているであろうものが、「Baido IME」と "simeji" である。前者は Windows 端末、後者は android 端末向けの日本語変換システムなのだけど、いずれもクラウド型の「賢い」日本語変換……早い話が google 日本語変換と同じような……を謳っている。

僕は使っていないのであまり知らなかったのだけど、simeji は android 端末での日本語変換システムとしてはかなり人気のあるアプリらしい。ここをお読みの方でお使いの方もあるだろう。あるいは、Baido IME を使っていますよ、という方もおられるかもしれない。しかし、上でリンクした blog のような話を読んで、尚それらを使いたい、と、あなたは思われるだろうか。

しかも、baido IME は、この2年程、

などをはじめとしたいくつかのソフトに抱き合わせるかたちで配布されているらしい。特に問題だと思うのが RealPlayer とソースネクスト社の無料キャンペーンだが、これらのために、入れる必要のない baido IME を「うっかり」インストールしてしまう、という「事故」が頻発しているらしい。実は今回のこのシスターの場合も、ヴァチカンのストリーム映像を観るために RealPlayer をインストールした際に、うっかり baido IME を一緒にインストールしてしまったのが原因だった。baido 自身も、いくつかの提携ソフトウェアのインストールに伴い、自動的にインストールされる場合があることを自社サイトで認めている!

しかも、baido IME は一度入るとかなり「しつこい」らしい。boot する度に default にするかどうかいちいち聞いてくる(コンピュータに慣れていない人がこれでうっかり default にすることを狙っているとしか思えない程、確実にこれが出てくるらしいのだが)。アンインストールしようとしても、ご意見頂戴、みたいなパネルがポコポコ出てくる。で、そこに何か(変換精度が低いからだ、とか、勝手にインストールされたからだ、とか)書いてやろうと思っても、そのパネル上では日本語変換がきかないのである。これは、官僚的というのを超えて、どす黒い悪意と傲慢さを感じてしまう。

なんだかなあ……と思っているうちに、どうやらシスターの PC からの baido IME の「駆除」は終了した。シスターに取り得るオプションをいくつか提示して、その要求に従って今度は google 日本語変換をインストールしたのだが……いやあ、google だって分かりませんよ。企業の利益、そしてアメリカの国益のためだったら、何をどう採取されるかなんて、分かりませんからね。相手はあのエシュロンを持っている、あの NSA のある、あの国なんですからね。まあ、このシスターの場合は、傲慢故に愚かである baido IME のように、彼女の業務を妨害しないのであるならば、実害はないわけだけど。

TeX Live 2012 with tlptexlive

tlpretest には、従来の tlptexlive の内容があらかた収録されている。しかし、pxdvi と pmetapost に関しては未だマージされていないので、これを多用される方は、そのままでは不自由な状態になってしまっているかもしれない。

実は、TeX Live 2012 の tlmgr は新しい機能として、複数のリポジトリを登録することができる。これは、あるリポジトリから特定のファイルを取得したい場合などにも対応できるようになっていて、TeX Live 2012 ではこの機能を利用して tlptexlive を導入することができる。詳細は:

http://tutimura.ath.cx/ptexlive/?tlptexlive%A5%EA%A5%DD%A5%B8%A5%C8%A5%EA
に書かれているのだけど、一応ここでも簡単に手順を紹介しておく。

TeX Live 2012 の導入と最新の内容への更新が終わったところで、まずは tlptexlive のリポジトリを登録する。

$ sudo tlmgr repository add http://www.tug.org/~preining/tlptexlive/ tlptexlive
先にも書いた通り、tlptexlive から取得したいのは pxdvi と pmetapost だけである。これを実現するために、$TEXMFLOCAL/tlpkg/(通常は /usr/local/texlive/texmf-local/tlpkg/)というディレクトリを作成し、この中に pinning.txt というテキストファイルを作成する。このファイルに、どのリポジトリからどのファイルを取得するかを記述するわけだ。

今回は、tlptexlive リポジトリから pxdvi と pmetapost だけを取得するので、このファイルには以下のように記述する。

tlptexlive:pxdvi*,pmetapost*
pinning.txt の作成・記述が終わったら、
$ sudo tlmgr install pxdvi pmetapost
で、pxdvi と pmetapost が導入される。導入後は、単純に、
$ sudo tlmgr update --all
などと入力するだけで、登録された全てのリポジトリでの更新がチェックされ、必要な場合にはアップデートが行われる。

この tlmgr の新機能を含めた、TeX Live 2012 で新しくなったことの一覧は:

http://www.tug.org/texlive/pretest.html
の下の方 "Notable changes" に記されているので、興味のある方は御一読されることをお薦めする。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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