TeX Live 2012

いよいよ今日から、TeX Live 2012 の tlpretest が本格的に開始された。以下に、興味のある方のために、導入する方法を書いておく。

最初に強調しておかなければいけないのだけど、あくまで現時点で tlpretest はその名の通りテスト版である。大規模なパッケージの更新が頻繁に行われることもあるし、場合によっては再インストールする必要があるかもしれない。そういうものだということを、まず念頭に置いていただきたい。

現在、tlpretest 版の TeX Live を導入するためには、いくつかの方法があるのだけど、一番確実なのは、配布パッケージを rsync で取得することである。パッケージは全部で 2 GB を超えるので、相応の空き容量のある方、ということになるけれど、TUG における tlpretest の説明にあるように、任意のディレクトリで、

rsync -a --delete --exclude="mactex*" rsync://somemirror/some/path/ /your/local/dir
を実行すれば、パッケージ一切がダウンロードされる。更新する場合も同様のコマンドで更新される(--delete オプションを付けているのはそういう向きのためである)。

問題は "rsync://somemirror/some/path/" のところに何を入れるのか、という話である。これに関しては先に拙 blog 『金盾、矛盾』にも書いてあるけれど、mirror が複数設定されているので、これらの中から選ぶ、ということになる。僕が試したところでは、

rsync://ftp.ctex.org/mirrors/texlive/tlpretest/
が一番ネットワーク的に近く、かつ速かったのだが、人によっては、
rsync://ftp.math.utah.edu/texlive/tlpretest/
の方が近いかもしれない。ちなみに元になっているのは、
rsync://ftp.tug.org/texlive/tlpretest/
だけど、TUG のサーバで一から落とそうなどとは努々考えないように。もし最新のパッケージを確実に取得したくても、まずは mirror で手元に基盤を確保してから、差分を TUG で取得すればいいだけの話なのだから、mirror を是非とも活用していただきたい。

DVD の中身みたいなのはいらないよ、という方は、各々の OS に合ったインストーラを、mirror から取得されればよろしい。先の例に従って中国のサーバを使うならば、

を取得・展開し、中のスクリプトを実行すればインストールが行われる。

インストールが終わったら、最新の状況に対応できるように、インストールファイルの取得先を設定しておく。たとえば、

$ sudo tlmgr option repository http://ftp.ctex.org/mirrors/texlive/tlpretest/
のように、tlpretest の配布ディレクトリを指定すればよろしい。アップデートをかける場合は、tlmgr を含む infra パッケージの更新もこの時期には頻繁に行われる可能性があるので、
$ sudo tlmgr update --all --self
のように、--self オプションを併記しておいた方がよろしい(不要のときは無視されるだけなので)。アップデートに部分的に失敗した後には、
$ sudo tlmgr update --reinstall-forcibly-removed --all --self
のように --reinstall-forcibly-removed オプションを指定する。

TeX Live 2012 には、tlptexlive で配布されていた成果物がマージされる予定で、現時点では Preining 氏が書いているように pxdvi と pmetapost 以外は既に収録されている。一枚岩で日本語環境が使える状況が、もうすぐ完全に整うということなのだろうか……今後の展開が楽しみである。

金盾、矛盾

いよいよ TeX Live 2012 に向けた tlpretest がリリースされた。早速、手元にダウンロードしたいところだったのだが、 mirror にアーカイブが定着するまでは我慢、我慢……と、世界に5箇所ある mirror site にアーカイブが定着したようなので、rsync でダウンロードを開始した。

それにしても、この tlpretest の mirror site は奇妙である。5箇所というのが、中国の ctex.org、チェコの CSTUG、スロヴェニアの Jožef Stefan Institute、そしてアメリカの Harvey Mudd Collegeユタ大学理学部数学科なのだけど、TUG のページによると、日本には mirror しているところはないようだ。

こうなってくると、何処が一番近いのか、という話になってくる。もちろん、これは物理的な距離ではなく、ネットワーク的な近さの問題である。traceroute でホップ数を数えたり、小さなファイルの取得に要する時間を比較したりした結果、一番近いのは……なんと、中国の ctex.org であった。

正直言って、僕はアメリカの方が絶対に速い、と思っていた。というのも、中国はネットの検閲が大規模に行われているからだ。この検閲システムは「金盾」の名でよく知られている。しかし、実際の転送速度を計測してみると、tux.org と比較しても、中国からの転送は「劇的」と言っていい程に速い。本当に意外だった。

本当は、中国のように国民の多い国こそ、ネットワークの帯域確保には懸命になるべきなのだと思う。なにせ、十数億もの人々がケータイを中心としてネットワークを使っているのだから……その意味からは、金盾のようなシステムはナンセンスとしか言い様がないのだけど、今の状況は、まさに一党独裁国家の現実だと言わざるを得まい。中国人は、自分達が割を食っている現実に、もっと怒るべきなのだ。そういうことを彼らが考えるようにならなければ、きっとあの国の政治状況は変わらないままだろう。

まあ、そんなわけで、ctex.org からのダウンロードは、おそらく夜までには終わる。今後の更新は、ひょっとしたら tux.org を使うこともあるかもしれないけれど、今回の件は、僕に中国のネットワークを少しだけ見直させたのだった。

【後記】その後、ftp や http での転送速度も色々計測してみたのだけど、ユタ大学の方が速いことも結構あったりして、どちらを人に薦めるべきか、はちょっと微妙。難しいですね。

2ちゃんねらーではないんだが

最近何かと問題視されている2ちゃんねるだけど、この先果たしてどうなるのだろうか。

僕の場合も、まんざら全く関係がないというわけでもない。というのも、2ちゃんねるの UNIX 板には \chapter{\TeX} % 第八章(現時点)というスレッドがあって、ここは TeX / LaTeX の情報がそこそこ流れているからだ。

ただし、僕はここにはもう大分長い間書き込んでいない。というのも、僕の使っているプロバイダにどうやら不心得者がいるらしく、何か月もの間、ずーっとアクセス規制の対象にされていたためだ。このスレッドには時々、おーそれぁ気がつかんかった、みたいな質問や答が流れることがあるのだけど、それに対して何も書き込めない、というのは、これはこれで困った話である。

で、さっき、ダメモトで書き込みテスト(UNIX 板には書き込みテスト用のスレッドがある)をしてみたら、今日はアクセス規制が解除されているようだ……まあ、特に書く事は何もないので、おー解除されてるよ、で終わってしまったのだが。

しかしなあ。2ちゃんねる、これからどうなるんだろう。違法薬物関連であれだけ叩かれているし。違法薬物関連の情報で削除されていないものって、本当に、そんなに実害があるものなのだろうか? そりゃ、書かれた直後は実害ありまくりだろうけれど、少し時間が経ったら、書いた方も、その書いたことを端緒に検挙されたくないだろうから、接触方法とか書かれていても、すぐ obsolete になってしまうんじゃないか? ……まあでも、ああ野放図というのは、確かに問題だとは思うんだけど。

tlnet's about to be frozen.

ここ何日か、tlmgr を動かしても TeX Live のパッケージがアップデートされることがほとんどなくなった。いよいよ、この時期が来たのである。

TUG の TeX Live のページを見ると、TeX Live 2012 への工程表が掲載されている。コメントアウトされている箇所も含めて引用すると、

Plan for TeX Live 2012:

  • 2apr: sources committed, builds begin.
  • 15apr: sources stable except for major bugs.
  • 10may: tlnet frozen, tlpretest starts, CTAN updates only on request.
  • 1jun: complete freeze for final build, no more updates, final doc tweaks, always more testing.
  • 15jun: make final images for the TeX Collection DVD.
  • 1jul: public release made (also of MacTeX).
  • August?: delivery of DVDs to members.

……ということで、tlnet が frozen になるのが来月10日の予定、ということを考えると、もうほとんどそれに近い状態なのではないか、という感じなのである。

僕は TeX Live の開発や配布に関して何も関わっていない (?) し、実際の運営状況もよく知らないのだが、こうなってくると気になるのが tlptexlive の行方である。既に subversion 等で公開されているソースツリーにはマージされているようなので、おそらく tlptexlive の成果は TeX Live 2012 に入ることになるのだろうと思うけれど、つい昨日に公開された uptex 1.10 はどうなるのか、とか、分からないことは多い。とりあえず、手元の環境をいつでも TeX Live 2012 に差し替えられるようにして、待つことしか術はないのだけど。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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