TeX Live は、tlmgr というオンライン・アップデータを使って簡単にアップデートができるようになっている……のだが、このアップデートが、しばらく使っているとうまくいかなくなることがある。
その原因になっているのは、多くの場合は tlmgr それ自身である。tlmgr がパッケージの更新をし切れない場合が生じることがあって、その場合にはそのパッケージは強制的に除去され、次回以降のアップデート時に、
skipping forcibly removed package ********
というメッセージが表示されるようになる。これを無視してそのまま使い続けていると、どうも何かおかしいなあ……という話になってくるわけだ。
これに対処するためには、当然だけど、除去されたパッケージを再度インストールしてやればよろしい。しかし、そもそもパッケージの更新が失敗した原因は tlmgr にあるのだから、まず
$ sudo tlmgr update --self
として tlmgr を更新する。それから、
$ sudo tlmgr update --reinstall-forcibly-removed --all
とすることで、除去されたパッケージが再インストールされる。
tlmgr による更新を前提とした TeX Live の使用を敬遠されている方は、おそらくこういうことを体験されていると思う。インストールツリーになるだけ手を加えずに、いつでもクリーンインストールできるようにしておくのも手なのだけど、とりあえず、更新がうまくいかないんだ、という方は、これをチェックされるといいかもしれない。
僕は普段から GNU Emacs 上で SKK というインプットメソッドを使用している。これに慣れると、どれ程辞書が賢いものであろうとも、他のインプットメソッドを使う気にはなれないので、普段使用している Linux の X 上でも、SKK ベースのインプットメソッドを使っている。
UNIX 系のシステム上で使用されるインプットメソッドのフレームワークにはいくつか種類があるけれど、おそらく世間では SCIM とか uim とか IIIMF とかがメジャーなのだろうと思う。その上で使用されるインプットメソッドとしては、Anthy とか Canna とか、最近だと Google 日本語入力 / Mozc とかを使うのだろう。「……だろう」と書くのは、僕自身がこういうインプットメソッドを使わないからである。
先に挙げたようなインプットメソッドフレームワークでは、その多くで SKK 準拠のインプットメソッドが提供されている。しかし、インプットメソッドフレームワーク特有のキーバインドが、SKK 固有のキーバインドとぶつかることが少なからずある。まあ細かい設定をすれば回避できないこともないのだろうけれど、そこまで僕には SCIM や uim にこだわる気がない。そもそも、X 上では昔から skkinput (2, 3) という軽量なインプットエンジンが提供されていたので、僕はずっとこれを使ってきた。先に挙げたようなシステムも勿論一度は試しているのだけど、skkinput 以上にシンプル、かつ十分なものに出会わなかったのだ。
しかし、時間の経過というのは残酷なものである。Debian GNU/Linux において、sid ではもう skkinput はパッケージリストから外されている。手元にあるソースからビルドして使い続けてきたのだけど、今後のことを考えると、未来のありそうな環境に移行しておいた方が、明らかに安全だと思われる状況である。
さて、ではどうするか……という話である。色々検討した結果僕が選んだのは IBus である。以前は、このフレームワーク上で動作する SKK ベースのインプットメソッドがない時期もあったのだけど、幸いなことに、Daiki Ueno 氏の ibus-skk がかなりいい感じで、しかも他のフレームワークで問題になるキーバインドの抵触が、IBus + ibus-skk の場合は(少なくとも今のところは)全く気にならない。ここまで確認したところで、思い切って、長年慣れ親しんだ skkinput を廃止することに決めた。
かくして、今のこの blog のエントリも IBus + ibus-skk で書いているのだが、至極快適である。コンピュータを使っていると、こういうことは不定期に必ずあることなのだけど、自分のものを書く上でかなり重要な部分だし、久方ぶりの更新でもあるので、ちょっと blog にメモしておきたかったのだ。
この間 Steve Jobs が亡くなったばかりのところに、今度は Dennis Ritchie が亡くなったそうだ。これも時代の移り変わりだ、と言ってしまえばそれまでなのだけど、結構ショックである。
僕は正直言って C 言語はあまり得意ではないのだけど、それでも必要に応じて C の世話になることは多かった。大学生の頃、こんな言語分かんねぇよ! と言う僕に、やっぱり K&R 位持っておくべきだよ……と、情報系の知人に言われたことを思い出す。まあ、K&R は初学者に必ずしもお薦めの本ではない(一通り C に触れた初学者には K&R よりむしろ Oualline の『C実践プログラミング』 の方が must item なのだそうな)と言われるけれど、でもやはり、C 言語の originator の手になる本となると、やはり存在の重みが違う。
Ritchie 氏は、長い闘病生活をおくっていたらしい。そういう面でも Steve Jobs のこととダブってしまう。日本でも、3人に2人ががんになり、2人に1人ががんで亡くなる、と言われるようになってもう何年も経つわけで、こういう話は決して他人事ではない。若い頃に何かしら世話になった(というと僕がさも彼らに近いかのように思われそうだがそういう意味ではない)人々が世を去ると、自分の番が近付いていることをひしひしと感じるのである。
時々、自分の書いているものに関して検索をかけることがある。apache の referer log などに表れてこない問題を未然に防ぐためなのだけど、今年の夏頃に、以前書いた e-ptex 等に関する記述を参考に TeX / LaTeX のモディファイを行われている blog を散見したのだった。こういう方々が悪い、というわけでは勿論ないのだけど、これはこれで少し困った事態である。
技術に関して書いたものは、いずれ obsolete(日本語では「陳腐化」とでも言えばいいのだろうか)になってしまう。これは、陳腐化するまでに数年を要することもあれば、数週間でそうなってしまうこともある。
最近ここに書くことの多い TeX / LaTeX に関しては、困ったことに、2010年始め頃に書いたものでも既にそうなっているものがある。ここを読まれている方で、もし日本語で TeX / LaTeX を使用されたい方は、どうか、
http://www.fugenji.org/~thomas/texlive-guide/
を御参照いただきたい。
あと、最近はどうも LuaTeX-ja に興味を持たれている方らしきアクセスがあるのだけど、LuaTeX-ja を使うベースとしての LuaTeX 環境を整備する上でも、TeX Live 2011 のインストール(と IPA フォントのインストール)は役に立つので、まずは TeX Live の環境を整えていただくか、W32TeX 等の使用を検討されるかすることをお薦めする。