Big Brother is watching you.
拙 bog エントリ『新しい中傷手法』で書いた、まさにそのものズバリのトラブルが、既に裁判沙汰になっているのは、皆さんご存知のことと思う。
ちなみに、今日の時点で、google は「日本の法律で規制されることではない」「社内のプライバシーポリシーに照らして削除に該当する事案ではない」として決定に従わない方針を表明している。グーグルのインターネット検索サイトに自分の氏名を入力すると、「サジェスト」という機能によって犯罪を連想させる単語が表示されるのは名誉
毀 損 などに当たるとして、日本人男性が米国のグーグル社に表示の停止を求めて仮処分を申し立て、東京地裁(作田寛之裁判官)が19日付の決定で停止を命じたことがわかった。男性側の代理人によると、同機能の停止を命じる司法判断は初めて。同社は停止を拒否しており、現時点でも表示される状態が続いているという。
代理人の富田寛之弁護士によると、グーグルの検索サイトのキーワード欄に男性の氏名を入力すると、犯罪をイメージさせる単語が検索候補として表示され、選択すると男性を中傷するサイトが多数並ぶという。
男性はこれらの犯罪に関係した覚えがないのに、サイトの書き込みを理由に就職の内定が取り消されたこともあるといい、昨年10月、同地裁に仮処分を申し立てた。
審尋で同社側は「意図的に表示したわけではなく、検索候補として単語を並べただけで名誉毀損には当たらない」と主張したが、地裁は、男性の氏名を入力した場合の犯罪関連の単語の表示に限り、停止を命じた。
(2012年3月26日 読売新聞)
ここ最近の google の振舞いに、正直言って僕は非常に強い違和感を持っている。google のトップは、google 創業のきっかけになった「情報の価値付け」技術である PageRank を開発したラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、そして lex の開発者として著名なエリック・シュミットの三人による、いわゆるトロイカ体制なわけだけど、このような google の貪欲、かつ傲慢な戦略は、エリック・シュミットが会長に就任した去年初め頃から顕著になってきたような気がする。無論、その何年も前から、現状の布石は敷かれていたのだろうけれど、それにしても、去年以降、あっれー google ってもっと cool な社風じゃなかったけ? と首を捻ることが多過ぎる。
『新しい中傷手法』を御一読いただければお分かりと思うけれど、上の事件の恐怖というのは、僕にとっては決して他人事ではない。僕の場合は、むしろ積極的に google の bot に情報を渡すようにして、僕を中傷するようなキーワードに対しては、自分が書いた『新しい中傷手法』へと誘導するような戦略で、先日の件に対抗しているわけだけど、僕個人に対して何らかの調査などが行われた場合を想定すると、あのような中傷があったというだけでも、僕には大きな損失なのである。たとえ書かれていることが無根拠なことであったとしても、だ。
ジョージ・オーウェルの『1984年』には、 Big Brother を賛美させんがために毎日午前11時から放送される "Two Minutes Hate" というプログラムの話が出てくる。このプログラムで、人々はスクリーンに投影される Emmanuel Goldstein に向かって怒号を浴びせ、その後に登場する Big Brother に賛美の歓声を向けるのである。Big Brother のために蹂躙される個人の存在など、彼等は気にもとめない。蹂躙される方に回りかけた僕には、これは骨身に染みた現実なのだ。