誤消去

昔、吉田戦車(最近リアルタイムの漫画を読まないのだけど、今どうしているのだろう)氏の漫画に「取り返しのつかないことをする」というネタがあったのを読んだことがある。パソコンの筐体を開けて中に納豆を……みたいな、他愛のないことなのだけど、この「取り返しのつかないこと」というのは、コンピュータを使っている人間にとっては決して縁遠い話ではない。

UNIX 系のシステムで、特に管理者アカウントではカレントディレクトリに path を通すな、という話がある。不用意なファイルネーム指定で、消すとシステムに重大な障害を来すことになるファイルを消してしまう事態を防止するためだけど、これを守っていても、root になった状態で "rm -rf ./*" とするつもりで "rm -rf /*" などともしもやってしまうと、UNIX 系のシステムは考えたくもない事態になってしまう。まあ、僕もさすがにこんなことをしたことはないけれど、でもファイルの誤消去というのをやらかしてしまうことがないというわけでもない。

まあ、こんなことを書いている段階で皆さん御想像がつくのではないかと思うのだが、今日、まさにそれをやってしまったわけだ。僕が書きものに使っている TeX Live の関連サイトに目を通していたら The TEX Live Guide / TEX Live 2011 なんてタイトルのドキュメントを発見したものだから、あれ TeX Live 2011 って出たの?じゃあ今 subversion で落としている TeX Live 2010 の developer source なんかいらないじゃん、と早とちりをして、ざっくりソースツリーを消してしまったのだった。当然(?)まだ 2011 は出ておらず、やっべーあ゛ーどうしよう、という話になってしまった。なにせこのソースツリーは巨大で、今使っている光の環境でも落とすのに結構な時間がかかるのである。

というわけで、今、まさに落としているところである。明日位までかかるかもしれない。学生の頃は X や gcc の build に一晩かける位何とも思わなかったのだけど、やはり、時間というものは年々貴重なものになっていることを、今まさに実感しているところである。

また発熱――まだ続く

数日間、抗生剤を服用したのだけど、状況は全く改善しない。それどころか、喉の奥に痰が下りてきて、去痰のために咳をすることばかりが多くなり、喉の炎症がハンパではない状態になってきた。嚥下の際の痛みだけではなく、昨夜など、喉の狭窄から息が苦しくなった位である。仕事の後、家でぜぇぜぇ言いながら、これはもう耳鼻咽喉科に受診するしかない、と腹を括った。

で、今日の朝九時。近所の耳鼻咽喉科に保険証を持って訪れた。現在の服薬状況等を書いて下さい、と問診票を渡されたのにごちゃごちゃ書き、呼ばれて行ってみると、ドクター(この耳鼻咽喉科はアレルギー外来に力を注いでいて、僕のような本来の耳鼻咽喉科の患者には?マークが浮かぶことが多いのだが)が、

「咳とかは?」

で、先のような状況を説明し、これは膿が喉の奥に下りてきているのではないか、という話をしたところ、

「はい、力抜いて、そこのモニター見てて下さいね」

と、いきなり鼻にファイバースコープを突っ込まれた。まあどうせこういう展開になるんだろう、と思っていたけれど、鼻にファイバースコープを突っ込まれながらモニターを見るのは、これは結構難しい。

「はい、これ喉の奥ですね。鼻腔の奥から膿が下りて喉のここにありますね。これ声帯です。ちょっと裏声で『あー』って言ってみて下さい」

あー。と言うと「はい結構です。なんか非常に上手いですね」まあそりゃファルセットで歌うことがありますからね。ということで、喉の吸入2種類、鼻への吸入、副鼻腔のレントゲン撮影、それにクラビット錠 500 mg(巨大な錠剤である……やはりニューキノロン系をがっつり使う必要があるらしい)等の処方……等々で、所要費用約5000円也。はぁ。

案の定

月曜にひいた風邪がまだ治り切っておらず、微熱で苦しんでいる。喉の炎症がひどくて、微熱はおそらくこれのせいだと思うのだが、抗生物質で治らないのが恐ろしい。心身共に疲労が蓄積されているのか、ストレスが多いためか。いずれにしても、これを書いている今も、微熱で頭が重く、時々咳込む。

さて。菅直人と民主党執行部はやはり予想通りの論理を展開しているらしい。目処がつくまで、というのが、鳩山=菅会談で確認された内容を示す文書:

  • 民主党を壊さない。
  • 自民党政権に逆戻りさせない。
  • 東日本大震災の復興ならびに被災者の救済に責任を持つ。
    1. 復興基本法案の成立
    2. 2011年度第2次補正予算案の早期編成のめどを付ける
の内容が充されたとき「ではない」と、岡田幹事長が記者の前で言ったとき、あー案の定こうきたか、まるで小学生の諍いと一緒だな、と思わされた。鳩山氏は「それは執行部がウソをついているんだ」と言ったそうだけど、鳩山さん、言質を取らないと岡田や菅はそういう風にとるんですよ。卑劣漢というのはそういうものなんです。

ちなみに、菅は「原子炉が冷温停止の状態に至るまで」が「目処」だと発言した。しかしだな……東電の工程表によると、それは今年の暮れから来年の1月にかけて、であって、当然だけどこの工程表の予定は延びるだろうから、おそらく今年度一杯、菅は首相の座に居座ることになる。この3か月の間のような停滞が、下手をするとあと9か月は続くのである。

しかし、これで本当に、菅は9月に「呼ばれたから」とアメリカに日米首脳会談に行くつもりなのだろうか? おそらく、アメリカのような国に冷たくあしらわれたとしても尚、あの男は蛙の面に小便、という態でいるのかもしれない。やはり、あの男は辞めさせなければならなかったのだ。

現時点の報道の一例を以下に示しておく:

鳩山氏「ペテン師」、枝野氏「専権事項」 退陣時期で混乱
2011/6/3 11:30 (2011/6/3 13:29更新)

退陣する意向を表明した菅直人首相が来年1月ごろまでの続投に意欲を示したことを受け、民主党内で3日、対立が続いた。鳩山由紀夫前首相は「ペテン師だ」と批判し、早期退陣を要求。執行部刷新のための党両院議員総会の開催を求めた。枝野幸男官房長官は「(退陣時期は)まさに首相の専権事項だ」と突っぱねた。

鳩山氏は都内で記者団に「政治家同士だから約束したことを守るのは当たり前だ。できないならペテン師だ」と非難。「人間としての基本にもとる行為をするなら党の規則の中で首相に辞めてもらう」と述べた。党執行部が内閣不信任決議案に賛成した松木謙公、横粂勝仁両氏を除籍(除名)処分したことには「冗談ではない」と批判した。

鳩山氏は2日の首相との会談で(1)東日本大震災の復興基本法案の成立(2)2011年度第2次補正予算の編成にメドを付ける――の2点を終えた段階で首相が退陣することで合意したとの認識だ。

鳩山氏は3日、自らを支えるグループの議員約25人と協議し、両院議員総会を執行部に要求する方針で一致した。党代表でもある首相の代表解任決議案の提出を検討中だ。両院議員総会は党大会に次ぐ党の議決機関で、両院議員総会長は党所属国会議員の3分の1以上の要請があった場合、速やかに招集しなければならない。

首相は同日の閣議で「今国会は事実上の通年国会になる」と表明するとともに、第2次補正予算の編成準備を指示した。退陣時期を巡って鳩山氏と食い違いがあることには「鳩山氏と自分の会話は紙に書いてある通りで、それ以外は一切話はしていない」と説明した。

この後の参院予算委員会で首相は震災復興や原発事故の収束に向けて「これまで以上に全力を挙げて取り組む。与野党を超えて協力をお願いする」と述べ、続投へ改めて意欲を示した。民主党の舟山康江氏への答弁。

閣議後の記者会見では閣僚から退陣時期を巡る発言が相次いだ。松本龍防災担当相は「6〜7月ではないか」と述べ、早期退陣の見通しを示した。与謝野馨経済財政担当相は「一定のメドがついたら辞任するとはどこにも書いていない」と強調。海江田万里経済産業相は「(首相が触れた)原発の冷温停止の目標は最短で事故発生から6カ月、最長では9カ月だ」と来年1月までの政権継続の可能性に言及した。

自民党の谷垣禎一総裁は総務会で「死に体政権に協力はできない」と明言し、復興基本法案以外の協力には否定的な考えを示した。小池百合子総務会長は記者会見で「詐欺という印象だ」と断じた。民主党内では「不信任政局」の調停役となった鳩山氏について「混乱を拡大させた鳩山さんも責任を取ってほしい」などと批判が広がっている。

(日本経済新聞 6月3日付)

混迷

つい今しがた、衆院で内閣不信任決議案が否決された。民主党の造反議員はわずかに2名。菅の「一定の目処がついた時点で退陣」発言に、党のほぼ全ての議員が乗っかった状態である。松木謙公議員と、離党宣言していた横粂勝仁議員が白票(賛成票)を投じ、小沢一郎議員は欠席・棄権しただけで、小沢派を含めた他の全民主党議員が緑票(反対票)を投じたということになる。

鳩山由紀夫氏が民主党代議士会の会場で辛うじて釘を刺したので、8月に補正予算が成立したときか、9月の日米首脳会談かを「目処」とする……のだろう、という、暗黙の了解がなされているわけだが、果たして菅直人はこれを守るだろうか。僕には、菅直人という人はいとも容易く自らの言を翻す人だと認識しているので、結局菅直人は素直に辞めてくれないのではないか、と危惧している。

では、すんなり辞めてくれればそれでいいのか。対外的にはすこぶるよろしくない。だって、国際的な場で、太陽電池の普及がどうとか言っちゃったわけだし、これを最後に辞めることが分かっている首相と会談することに、アメリカが意味を見出すだろうか? こんな無責任な話はないのだ。結局、菅直人はどちらに転んでも無責任極まりない存在だ、ということは、いささかも変わってはいないのだ。

不信任案というのは、ある意味で野党の仏心だった、とも言えなくはない。だって、無理矢理辞めさせられたんだ、ということならば、菅直人的には言い訳のしようがあるからだ。しかし、不信任案が否決された今、菅直人は得意技の「責任転嫁」の先を失ってしまったのだ。さぁ、一体どうするんだろう。

まあ、可能性として一番ありそうなのが、恥知らずの必殺技「馬鹿になる」だろうか。自分は馬鹿だから分からない……と言ってしまえば、全ての追及に知らんぷりすることができるというわけだ。いやはや、これから日本はそういう首相に翻弄されることになるのだ。もうこの国の未来は暗い。日本は既に沈みつつあるのだろう。

Profile

T.T.Ueda
Tamotsu Thomas UEDA

茨城県水戸市生まれ。

横山大観がかつて学んだ小学校から、旧水戸城址にある中学、高校と進学。この頃から音楽を趣味とするようになる。大学は、学部→修士→博士の各課程に在籍し、某省傘下の研究所に就職、その2ヵ月後に学位を授与される(こういう経緯ですが最終学歴は博士課程「修了」です)。職場の隣の小学校で起こった惨劇は未だに心に深く傷を残している。

その後某自動車関連会社の研究法人で国の研究プロジェクトに参画、プロジェクト終了後は数年の彷徨を経て、某所で教育関連業務に従事。

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